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みんな大好き!懐かしの「ソフトめん」 今どうなってる?

子どもの頃、学校の給食で「ソフトめん」を食べたことがありますか?袋に入った白いうどんのようなスパゲッティのような、あの麺です。地域によっては知らないという人もいると思いますが、東日本を中心に給食用として広く提供されてきました。しかし、東京の学校などでは最近、給食に出る機会が減り、提供されなくなる地域も出てきているといいます。こうした中、この「ソフトめん」の給食のイメージを変えて、新たな需要を掘り起こそうという取り組みが始まっています。(大津放送局リポーター 三角朋子)

懐かしい給食の味「ソフトめん」

滋賀県彦根市にある中学校の給食の時間。一人前ずつ袋に入った「ソフトめん」が出されていました。子どもたちは袋をあけてソースをかけて食べます。この日は、人気のカレー味でした。

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滋賀県の学校給食で出される「ソフトめん」は、パンに使う強力粉に、県産小麦20%を配合した指定の粉を使い、温かいまま届けるのがルールです。このため、生産は地元の製麺所が担ってきました。

東近江市で製麺所を営む冨江彦仁さんは、父親の代から給食用の「ソフトめん」を提供してきました。納入先は、県内の小中学校70校。給食当日の朝は、多いときでおよそ7000食もの「ソフトめん」を作ります。冨江さんは「当日、温かいまま届けるのは大変ですが、地域の子どもたちの笑顔を見るために作っています」と話していました。

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冨江彦仁さん

これが「ソフトめん」

この「ソフトめん」、正式名称は「ソフトスパゲッティ式めん」と言います。パン給食ばかりだった昭和40年ごろ、給食に出す主食の種類を増やしていこうと、パンの材料を利用して東京で考案されたそうです。

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パンの材料は、スパゲッティに使われる強力粉と同じで、うどんではなくスパゲッティに近い麺になったということです。その後、この麺は給食用の食材として各県に広がっていきました。

平成29年度、「ソフトめん」の給食を扱うのは、主に中部地方から東のエリアを中心に18道県にのぼります。ちなみに関西地方では都道府県単位で取り扱っているのは滋賀県だけ。

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専門家の脇田祐輔さんによりますと「うどんやラーメンの文化が根強い西日本は、広がりにくかったのではないか」ということです。私も九州出身なので、実は今回の取材で始めて知りました。

しかし、「ソフトめん」を給食で提供する数が最近少なくなっているということです。発祥の地・東京では、年に1回ほどしか給食に出なくなり、2年前に給食用食材としての指定から外れ、提供されなくなりました。

また滋賀県でも、昨年度約63万食と、この10年で最も多かった平成19年度に比べて25%減少しています。ごはんのほか、中華麺やうどんなど、給食の主食として提供できるものが増えているほか、「温かいまま届ける」など、給食用として提供するためのルールを守って特別に麺をつくる余裕のある製麺所が減ってきたことなどが背景にあるそうです。

冨江さんの製麺所などで組織する滋賀県製麺組合では、少子高齢化で子どもの人口が減る中、給食需要がさらに減少することを懸念しています。

イメージ変える新ソフトめんとは

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製麺所を取材しました

学校給食以外にも「ソフトめん」を味わってもらうことができないか。組合では去年、子どものころに味わった懐かしい「ソフトめん」を家庭などで広く味わってもらおうという取り組みに乗り出しました。そこで、開発されたのが「近江ソフトめん」です。

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使用する小麦の配合を1年かけて研究し、滋賀県産の小麦をできるだけ多く使うことにこだわりました。県産小麦の割合は、給食用の20%に対し、「近江ソフトめん」は50%。パンの材料である強力粉よりも柔らかい性質を持つ中力粉であるため、給食用よりも柔らかな食感を実現しました。

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これが近江ソフトめんです

また、乾麺と違って水分が含まれているため、電子レンジで温めるだけで簡単に調理ができるのも、家庭向けにもってこいの特徴です。

麺は滋賀県内のスーパーや直売所で、土曜日限定で販売を開始。さらにレストランの協力で、新たな食べ方も提案しています。給食のイメージを払拭(ふっしょく)し、家庭の食材として定着させていこうという作戦です。

ソフトめんの新メニュー

バイキング形式で「ソフトめん」のメニューを提供しているレストランを取材してみると、「ソフトめん」を使ったスパゲッティサラダや、麺を細かく切ってお好み焼風にした料理などが並んでいました。

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実際に食べてみると、うどんとスパゲッティの間のような少し太めで柔らかい麺が、ソースやほかの食材ともよくからんで、とてもおいしく感じられました。

お客さんに話をきいてみると、「小学校の時に食べていたので、懐かしい」とか、「柔らかくて小さな子どもでも食べやすいから、家庭でも使いたい」などと話していました。

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「ソフトめん」の料理を考案した調理師の女性は、「ソフトめんは、茹でて戻す必要がなく、さっと湯通しすればすぐに使うことができる」と、調理の“時短効果”もあると話していました。

販売を始めて約5か月。スーパーなどでは午前中に完売する店も出始めているそうです。冨江さんは「多くの人に食べてもらい、いずれは地域ブランドにしていきたい」と、手応えを感じている様子でした。

今後製麺組合では、これまであまり知られてこなかった関西一円にも販売し、新たな需要の開拓を進める考えです。懐かしい給食の味が、新たな特産品になるかもしれません。

三角 朋子
大津放送局リポーター
三角 朋子
長崎局キャスターをへて
ことしから滋賀県内の話題を取材