熱血!マンガ学

(熱血!マンガ学)DRAGON BALL 悟空の「成長物語」一大産業に 【大阪】

2008年05月13日


 七つそろうと「神龍(シェンロン)」が現れ、どんな願い事でもかなえてくれるドラゴンボール。序盤は、それを追い求める少女・ブルマと、しっぽの生えた不思議な少年・孫悟空による冒険物語で、いわば鳥山明版「西遊記」だった。だが、徐々に悟空とライバルとの戦闘要素が強くなり、結果的に日本屈指のバトルマンガとして、国内外で大人気を博すことになる。
 天下一武道会でのピッコロ大魔王との戦い、戦闘民族サイヤ人としての覚醒(かくせい)、ラスボス(最後の強敵)・魔人ブウとの対決……。11年の連載で、神や宇宙の存在にまでスケールを広げながら、悟空は成長していった。
 いかにも少年好みの本作は、少女や青年にも圧倒的に支持された。かつてデザイン会社に勤務していた鳥山のカッコよく美しい描線とキャラクター造形が、物語にオシャレさと説得力を付加したのだ。あまりに高い人気と経済効果のため、作者の意向通りに連載終了できなかった事実や、終了直後にジャンプの売り上げが落ちてマンガ雑誌の停滞を印象付けたことも語り草となった。
 昨年逝去した河合隼雄は、かつて若者の「共通の書」だったマルクスが、80年代にはマンガに取って代わられたと述べた。だが、インターネットや携帯の普及で、近年ではマンガでさえその座を危うくしつつある。主人公の成長を描き教養小説的な面を持つ本作は、その最後の砦(とりで)となるかもしれない。
 (京都国際マンガミュージアム研究統括室長 吉村和真)

 ●DRAGON BALL
 週刊少年ジャンプ84年〜95年連載。アニメやゲームなどの関連商品は一大産業に。40カ国以上で翻訳。完全版全34巻も出版された。

 

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