――シグマ・セブンに入られて、最初のお仕事は何でしたか?
一番最初のお仕事はアニメではなく、外国人の方が日本語を学ぶための教材でしたね。日本語で、「私は○○○が大好きです」というような文章を、ゆっくりと正しいアクセントで読むという。だから、感情を込めてお芝居するというのではなく、とにかく丁寧に、淡々と日本語を読みました。とても緊張しました。
――ではアニメのデビュー作は?
さきほどの『クプ~!! まめゴマ!』です。今から5年くらい前ですかね。僕が今、28歳なので……23歳の時? 事務所に入って間もない頃だったと思います。
――田丸さん、28歳よりかなり若く見えますよね?
そうなんですよ……困ったことに、今でも学生に間違えられちゃいます(苦笑)。つい先月も、友人の舞台を観に行ったら、駅前でアンケートを採ってる人に「学生さんですか?」と呼び止められちゃって。台本とかが重いからリュック背負ってるし、身体が貧弱なのもいけないのかな。社会人の貫禄が全然でないんですよね(笑)。
――いえいえ、そんな(苦笑)。では話をデビュー作に戻しましょう。『クプ~!! まめゴマ!』は子供向けの作品だったんですよね?
はい、サンエックスさんのキャラクター「まめゴマ」絵本のアニメ化でした。僕は、佐々木さんという、動物病院兼ペットショップの店員で。手のひらサイズのまめゴマを遊びに連れてくる子供達に、優しく優しく接するお兄さんでした。まったりまったりした、かわいいアニメでしたね。
――初アニメ現場はいかがでしたか?
それが……自分がアニメの声優になったんだという実感がなさ過ぎて、「僕はなぜ、ここにいるのだろう?」みたいな気持ちで。普通なら、ものすごく緊張するところなんですけど、それすら感じられないほどふわふわしてました(苦笑)。
――共演者はどういった方々でしたか。
藤村 歩さん(※注9)、水沢 史絵さん(※注10)、小林 ゆうさん(※注11)……子供役やペット役も女性が演じていたので、ほとんどが女性声優さんでした。15分番組で放映期間は1年だったんですが、途中、男性は僕ひとりという回もありましたね。とにかく初のアニメ現場でしたから、学ぶことばかりで。ペットと子供が一緒に話すシーンなどは、どうしてもマイク前でおたおたしてしまうんですけど、先輩が「こっちだよ」と指示してくださったり、みなさんには本当に親切にしていただきました。音響監督の藤田 亜希子さんも、新人の僕にいろいろ演らせてくださって、モブシーンで動物役も振ってくださり、リアルな牛の鳴き声を頑張ったこともあります。今、当時の芝居は、恐ろしくて観られないですけど(笑)。
――1年間、同じ作品を演じ続けたことで田丸さんも成長なさったでしょうね。
はい、本当に。終わった時、スタッフさんに「第1話はただの素人だったけど、声優になったね」と言っていただけて、とても嬉しかったです。