Music Factory Tokyo

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  • 5/28(土)開催Music Creators Workshop~CM音楽編~ 『15秒で充分!?の秘訣 ~残るCMソングの作り方~』篠原誠×貝塚翔太朗
     「CM音楽」にスポットを当てた音楽ワークショップ『Music Creators Workshop -CM音楽編- 15秒で充分!?の秘訣~残るCMソングの作り方~』が5月28日に開催された。

     この日の講義は、ナビゲーターを多田慎也が務め、2015年度CM好感度ランキング第1位に輝いたauのCM「三太郎シリーズ」や家庭教師のトライCM「アルプスの少女ハイジシリーズ」など、話題作を多く手掛けるCMプランナー・篠原誠氏、そして、武田鉄矢プロデュースアイドル「赤マルダッシュ☆」など数々のアーティストを世に送り出している音楽プロデューサー・貝塚翔太朗氏(日本コロムビア)をゲストに迎えて実施された。

     講義の冒頭では、ボーカルトラックのない「インストゥルメンタル」、CM独自の歌詞を付けて歌われる「コマーシャルソング」、アーティストが書き下ろした「アーティストソング」と、CM音楽には3つの種別があることを紹介。続けて篠原は「CM音楽はどのように作られるのか?」というテーマについて、「まずはクライアントさんに『こういうものを作ってください』というオリエンテーションをしていただく。直接依頼されるかコンペかの2種類があるのは音楽と同じ」と説明し、「ここで企画を出して採用されたところでようやくスタート。今度は実際の映像や音楽は演出家に発注するんです」とCMの制作過程について明かした。

     また、篠原はここでCM音楽について「CMプランナーが鼻歌で作る場合があったり、本格的に楽曲制作のできるプランナーもいる」と説明した。「今はテレビCMだけでなく、Webムービーやイベントをベースにしたプランニングも多いことも含め、パターンが増えている」と、クライアントによって提示の仕方やプランの組み方も多種多様であることも明かしている。続けて篠原は「発信者が納得することはどうでもよくて、より多くの受け手がそのメッセージを理解できるかどうか」とし、「そのために優しいものであったほうがいいけど、インパクトが残ることも重要なので、難しいかもしれないけど伝わりやすく残るものを作らなければいけない」と、CM音楽の作り手が目指すべき方向性についてアドバイスした。

     ワークショップ中盤では、「CMオリジナル楽曲の作り方・インスト編」として、インストゥルメンタルで作られるCM音楽は「サウンドデザイン系」と「BGM系」に分かれることをレクチャー。「サウンドデザイン系」の代表として『ライザップ』のCMが、「BGM系」の代表として『伊右衛門』(サントリー)のCMがピックアップされ、それぞれを分析した。まずは「サウンドデザイン系」について、篠原が「曲単体で楽しむものではなく、企画に寄り添ったもの。『ライザップ』の場合はビフォーアフターが映えるようにするというテーマありき」と語ると、貝塚は「『ライザップ』はEDM寄りの音ですが、テレビのスピーカーでは帯域の低い音が聴こえないので、作家さんは苦労したと思う」と解説。「BGM系」については篠原が「商品の世界観を早い段階で感じさせるための音楽。『伊右衛門』だと和風で上質なお茶であるということをBGMがあらわしている」と、CMに込められた企業の意図を解き明かし、多田は「サウンドデザインはキメがきっちり合っている縦の音楽、BGMはトラックひとつひとつが揃っている横の音楽」と補足した。



    ここでセリフの多さとCM音楽の兼ね合いを表現するためのものとして、篠原はKDDIの三太郎シリーズから「夏のトビラー竜宮城編ー」を紹介。篠原が「テンポや音によってセリフが面白く聴こえなかったりするから、人が話すCMはセリフに強い音を当てない」と語ると、多田は「動きの入っていくところからドラムが始まったりするのがいい。ライブでMCに合わせてフィルを入れてもらっているみたい」と、自身の体験になぞらえて音楽とセリフの関係性を説明した。

     また、「CMオリジナル楽曲の作り方・CMソング編」では、篠原が『ポリンキー』(湖池屋)、『キューピー和えるパスタソース たらこ』(キューピー)、『消臭力』(エステー)を代表例として紹介。「普通はCMの中だけで完結するけど、『キューピー和えるパスタソース たらこ』のCMソングに関しては、CDリリースや『紅白歌合戦』への出場などもあり、広告界もきっと驚いていた。子供が真似しだすとブレイクするんですよね」と、キャッチーなCMソングのポイントとして“子供にも伝わるもの”が挙げられることを語った。これに対し、多田は「良いCMソングとはどういうものなんでしょうね?」と質問すると、篠原は「1回聞いて残るかどうか」と回答した。

     ここで講師陣から受講生へ「CMソングで一番最適とされているBPMは“何”と同じテンポでしょう?」と問題が出され、受講生同士は交流しながら机ごとに回答。正解は「心拍数」であり、貝塚は「世代と性別でバイタルが異なるので、ターゲットにしている年齢層を意識するんです。だいたい60~90のどこかに設定しておくと、倍テンポ(120~180)の層にも機能します」とテクニックを明かした。

     少し休憩をはさんだ後半では「CMオリジナル楽曲の作り方・アーティストソング編」として、篠原が企画し、貝塚が制作、赤マルダッシュ☆と武田鉄矢が出演した『赤いきつねと緑のたぬき』(マルちゃん)のCMを紹介。篠原は同CMについて「CMソングは、15秒のうち最初と最後の0.5秒は無音にしなければいけない。マルちゃんの場合はそれに加えて頭とお尻にサウンドロゴがあるから、音楽は実質10秒くらいしか使えないんです」と難しさを説明すると、貝塚は「“日本のだしは文化です。”というコピーのイメージや、『サビの歌い出しは「日本」』という制約があったし、自分としては『世界』というフレーズも入れたかったので苦労した」と語りつつ、赤マルダッシュ☆の曲としても成立させなければならなかったことについて「ライブでの盛り上がりやコールを入れる部分なども考えなければいけなかった」とコメントした。



     講義が終わると、事前に受講生から募集した課題の添削を実施。今回は篠原と貝塚が手掛けた『赤いきつねと緑のたぬき』に別の音をはめるというもので、3人の感性に響いた受講生の楽曲を実際にスピーカーで流しつつ、講評が行われた。

     続いてのコーナー「篠原誠を徹底解剖!This is 篠原誠」では、3人が篠原のプロフィールを見ながらトークを展開。篠原は仕事を始めたきっかけや「クリエイティブディレクター」という役職について説明しつつ、「アイディアを思いつくコツ」について「意外と“降りて”はこないし、頭で考えて作る。それでも浮かばなかったら体を動かしたりして、とにかく数を出す」とアドバイス。そのための準備として「辞書を毎日1ページずつ読んだり(笑)、良いって言われることは全部やる」と、常日頃行なっている鍛錬の上に仕事の成果があることを明かした。その後行われた「キャッチコピー制作体験」では、「山梨のリンゴ」を題材にその場でキャッチコピーを考えるという試みを実施。篠原は「コピーには『How to say(どう言うか)』と『What to Say(何を言ったか)』があって、後者をしっかり打ち出すことが大事」と助言しつつ、受講生からのコピーを論評した。



     最後の質疑応答では、「作業をしていて行き詰まった時はどのようにしていますか?」という質問に対して、貝塚が「音楽を仕事にするうち、趣味として聴かなくなったんですけど、車の中でなら音楽に向き合えることに気づいて、行き詰ったら首都高速に行くようになった」とコメント。ほかにも、篠原が『家庭教師のトライ』や『三太郎』(KDDI)のCMにまつわる裏話を明かすなどした。

     ワークショップの最後に、3人は受講生へのメッセージを送る。篠原が「『あいつは何でうまくいくのか』とつい比較しちゃうけど、みんな人生いろいろで、16才で金メダルをとる人もいれば50才でブレイクする人もいる」と人生を長い目で捉えることを勧めると、貝塚は「最初は映画やゲームのサウンドトラックが作りたかったけど、篠原さんとの出会いもあって、フィルムスコアリング的なところも手掛けるようになれた。そうなれたのは、音楽以外にも著作権やビジネスの勉強をしたから」とコメント。多田は「篠原さんは自分のことを『天才じゃない』と言っていた」と明かし、続けて「たいていの人は自分を天才であると思い込みたいだろうけど、実際に成功するのは、掘るだけ掘ってみるような泥臭いことができる人。僕も天才であることを諦めたからここまでこれた」と自身のキャリアと重ね合わせながら、イベントを締めくくった。

     これまでの切り口とは違った展開で、受講生とともに、音楽の外側にあるものについて考えをめぐらせた今回のワークショップ。次回は2016年6月25日に「作詞編」の第二弾として、再びzoppを迎えて開催される。

    2016.06.06

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