在日韓国・朝鮮人を標的とする民族差別や人種的偏見に満ちた言葉の暴力に「もはや沈黙は許されない」と、在日3世の辛淑玉さん(人材育成コンサルタント)が呼びかけ人となり、このほど、「ヘイトスピーチとレイシズムを乗り越える国際ネットワーク」(略称「のりこえねっと」)を立ち上げた。共同代表は辛さんを含め21人。9月25日、東京都内で開いた「キックオフ記者会見」の席上、辛さんは「売られたケンカを買う」と宣言した。 沈黙は許されない日本の各界 著名人21人が結束 「のりこえねっと」が目指しているのは「在日特権を許さない会」(在特会)に代表される「行動する右翼」に対する包囲網づくり。辛さんは、「敵はでかいので、広範囲に抵抗していきたい。一つでも二つでもできることから行動に移すことが、未来に向けての在日の責任。いつかやろうと待っていたらなにもできない」と自らを鼓舞している。 まず、ニコニコチャンネルを使って独自に制作した番組をネットで配信する「のりこえねっとTV」を近く開局する。また、インターネット上の差別表現に対しては一つずつに内容証明を送り、悪質であれば告訴していくことも検討中。 「いままでは表現の自由との関連でなにもできなかった。今後は体を張って『それは違うんだ』と言い続けていく」と辛さん。 ただし、いまは闘う基盤を作るのが最優先だという。全国各地で小規模な学習会を組織しながら賛同人を広げ、文字どおりの全国ネットを形成していくことにしている。各共同代表もその知名度を活かしてBSやCSテレビに出演し、全国に広がるヘイトスピーチの実態を知らせていく。 反響は早く、予想以上に広がりつつある。賛同人は「のりこえねっと」の発足から2日で300人に達した。また、辛共同代表のフェイスブックは発表後、友達リクエストが1600人を超えた。在日からのアクセスも多い。青年会中央本部もいち早く賛同団体に加わっている。 島根からは「のりこえねっと島根」を名乗らせてくれとの要請が届いている。いずれは全国の自治体にも規制を呼びかけていくが、地元の賛同人が主体となっていくものと期待されている。 「のりこえねっと」では1口1000円のカンパ・寄付を募っている。ゆうちょ銀行が口座番号00120‐6‐600701 のりこえねっと。三菱東京UFJ銀行銀座支店は普通0205996 のりこえねっと。 問い合わせはinfo@norikoenet.org/FAX03・3818・9312。 ■□ 「日の丸が泣いている」共同代表記者会見 記者会見では各共同代表がそれぞれの所信を述べた。松本サリン事件で被害者ながら被疑者の扱いを受けた河野義行さんは、「おまえが死ね」「出て行け」といわれた過去を思い起こし、「私と同じ辛い体験をしている人たちをいつまで放置しておくのか。少しでも助けになれれば」と、就任の動機を述べた。 新右翼団体「一水会」の顧問を務める鈴木邦夫さんは、「排外主義のデモに日の丸を掲げるのは許せないし、ああいうのが右翼だというのは心外だ。日の丸が泣いている。権力や法律に頼らず、我々自ら行動しよう」と呼びかけた。 ジェンダー研究のパイオニアで女性学を専門とする上野千鶴子さん(東京大学名誉教授)は、「女性差別と民族差別はセットになっていて、重なり合う。絶対に許せない」と強調。「韓流好き」というコラムニストの北原みのりさんは、「無視すればいいと思っていたが、もう耐えられない」と胸のうちを述べた。 このほか、「ヘイトスピーチを苦々しく思っていた」という村山富市元首相も共同代表に名乗りを上げた。 (2013.10.9 民団新聞) |