10日で1964年東京五輪開会式から50年。時の首相、池田勇人はがんを患い進退にもかかわる状況にあったが、ホスト国の首相がアジア初の世界的祭典に暗い影を落としてはならないと、病をおして開会式に出席したと伝えられている。ほどなく退陣を決意し、閉会式後に表明。11月に佐藤栄作首相が誕生し、池田氏は翌年、世を去った。
開会式で発せられる五輪開会宣言は国家元首が行うのが通例とされ、日本の場合は後の72年札幌、98年長野も含めて、昭和天皇と今上天皇が行っている。内閣総理大臣に特別の役割があるわけではないが、世界のトップアスリートやVIPが集う開会式にホスト国の最高権力者として臨める栄誉は何ものにも代えがたい“勲章”だろう。
6年後の7月24日、誰がその立場にいるのか。某紙では、安倍晋三首相(60)と主要閣僚たちが「2020年まで安倍政権を保ち続けると誓ったという」と報じている。ここで壁になりそうなのが、自民党総裁の任期。内閣総理大臣は少なくとも4年に1度は行われる総選挙の結果いかんで交代が起こりうるが、「任期」が定められているわけではない。一方、自民党の党則は第80条で「役員の任期は、総裁については三年とし」た上で、「総裁は、引き続き二期を超えて在任することができない」と規定している。
安倍氏は2012年9月の総裁選で6年ぶりに当選し、来年に再選を果たしても、任期は18年9月まで。20年五輪を首相として迎えるには、大前提として、自民党政権を維持しなければならない。その上で、党則改正で任期を長期化するか、18年9月後に“ワンクッション”をうまくおいて、五輪前に再登場という2つの選択肢が考えられる。いずれにせよ現状では、自らプレゼンテーションに乗り込んで勝ち取った五輪の開催時に首相でいる可能性は高いとは言えないだろう。64年五輪招致に成功した当時の首相だった祖父・岸信介元首相と同じ道をたどるかもしれない。
池田氏を引き継いだ佐藤氏は8年近い長期政権を謳歌したが、退陣は札幌五輪から半年もたたない72年7月のことだった。日本選手団の活躍に沸いた長野五輪を首相として迎えた橋本龍太郎氏も“消費税増税不況”の影響で参院選に敗れ、佐藤氏と同じく五輪閉幕から約5か月後に総辞職した。
五輪開催時に在任した首相は3人とも、その年を越していない。20年の総理も同じ運命となるのか…。