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元トップコンサルタント三谷宏治氏×若手コンサルタント3人が明かす SEからコンサルタントになるための絶対条件
SEからコンサルタントになるための絶対条件
より顧客に近い立場でITにかかわりたい──そういう思いからITコンサルタントへの転身を考えているSEも多いはず。ではどうすればSEからITコンサルタントに転身できるのか。本特集ではITエンジニア適職フェアの会場で語られた秘訣を紹介する。
(総研スタッフ/関洋子) 作成日:08.06.17
Part1 「ITコンサルタントの価値」って何だ
「コンサルタントの語源をたどると、共に考え意思決定を助けるもの、となる。つまりコンサルタントは、企業の意思決定によい影響を及ぼせるかどうかで価値が決まるのです」。こう語るのは、現在K.I.T.(金沢工業大学)虎ノ門ビジネススクール教授である三谷宏治氏。三谷氏は1987〜96年まではボストンコンサルティンググループ、96年から2006年までアクセンチュアで通算19年間、経営コンサルタントとして活躍。03〜06年まではアクセンチュア・戦略グループの統括エグゼクティブ・パートナーを務めた人物。いわゆる「トップコンサルタント」である。 会場の様子
三谷宏治氏
三谷宏治氏
金沢工業大学(K.I.T.)
虎ノ門ビジネススクール
教授
1987年東京大学理学部物理学科を卒業。92年にはINSEADでMBAを修了。ボストンコンサルティンググループを経て、96年アクセンチュアに転職。2003年に戦略グループの統括エグゼクティブ・パートナーに就任。06年8月にアクセンチュアを退職、教育の道へ。著書に『CRM 顧客はそこにいる』『トップコンサルタントがPTA会長をやってみた――発想力の共育法』などがある。
 それではITコンサルタントの価値とは何か。三谷氏はプロジェクトのフェーズによって、ITコンサルタントに求められるものは変わるという。「ITの最大の意思決定のポイントは『要件』にある。例えば企画フェーズにおけるITコンサルタントの価値は、“やるべきコト”と“できるコト”のトレードオフを考えながら、ITで実現すべき『要件』への適切な助言できるかどうかなのです」と三谷氏。

 構築フェーズにおいてはどうか。三谷氏は、「ITコンサルタントの価値が問われる、4つの勝負どころがある」と言う。それは
1. アーキテクチャの決定
2. 開発体制の構築
3. 進捗管理体制の構築
4. 「要件」実現と予算・納期とのトレードオフ提示

「ITのプロジェクトでは多くの制限とステークホルダー(利害関係者)がある。そんな中で、まずは1〜3の枠組みや体制を構築すること。これができるかどうかで、大方の勝負は決まります。最後に、要件と予算、納期とのトレードオフを経営に対してきちんと提示できるか。これらでITコンサルタントの価値が決まるのです」(三谷氏)
 SEという立場では、上記のような価値を求められることはそれほどない。つまりSEとしての仕事にただ従事しているだけでは、ITコンサルタントへの転身は難しいといわざるを得ない。ではどうすれば、このような価値を顧客にもたらすITコンサルタントに転身できるのか。そのポイントを探るべく、三谷氏を司会に、SEから転身した3人の若手ITコンサルタントによるパネルディスカッションが行われた。次のPartではその模様をダイジェストで紹介する。
Part2.パネルディスカッション「SEからコンサルタントになるための絶対条件」
 パネルディスカッションに参加したのは、ベリングポイントの鎌田幹生氏、フューチャーアーキテクトの末永敦氏、アバナードの山根隆弘氏。3人ともSEからキャリアチェンジし、今活躍中の現役コンサルタントである。
テーマ1「SE→ITコンサルタント」キャリアチェンジのきっかけ
三谷氏 まずは皆さんのキャリアチェンジのきっかけについて教えてください。
鎌田幹生氏(31歳)
鎌田幹生氏(31歳)
ベリングポイント株式会社
マネージャー
Technology Solutionチームに所属。入社以来CRM領域を中心に、クライアントの業務改革の基本構想の立案から業務策定およびシステム設計・導入までの一貫したプロジェクトを経験。最近は、Bearing Point Chinaのメンバーと日中合同プロジェクトを組み、日系企業の中国進出をサポートするというGlobal企業ならではのプロジェクトを経験。
末永 敦氏(35歳)
末永 敦氏(35歳)
フューチャーアーキテクト株式会社
金融統括本部
マネジャー
金融系やIT関係の顧客に対して、業務改革などのコンサルテーションからシステムインテグレーションまでを手掛けている。ITコンサルタントとしてのモットーは、経営戦略を1行のプログラムソースにまで落とし込むこと。
山根隆宏氏(37歳)
山根隆宏氏(37歳)
アバナード株式会社
カスタム開発ソリューション
プリンシパル・ソリューション・デベロッパー
入社以来、多くの開発サイトのマネジメント兼ソリューションアーキテクトに従事。またプロジェクトの合間にマイクロソフト開催の技術セミナーでの講演や、出版業務などにも携わっている。最近のターゲットは、ダイレクトビジネスの創出のために顧客の信用をつかんでいくことに注力している。
鎌田氏 前職はSIerのSEです。業務アプリケーションやシステム基盤系の設計を経験した後、システムの提案営業やそのための調査活動などに携わることになりました。しかし自分の提案が顧客の耳に届かなかったり、顧客の指摘する意図が理解できなかったりすることに悩むようになりました。仕事で知り合ったコンサルタントの方々と話をするうち、情報収集範囲や検討の視点、またコミュニケーションの手法などを改める必要があると気づきました。専門集団であるコンサルティング会社に身を置くことで自分の成長スピードを上げよう、と考えたのです。
末永氏 私は地方の中堅SIerでプログラマとして、主に流通業向けの汎用機およびオープンシステム系のシステム開発に携わっていました。2000年にJavaのSIに特化した子会社に異動し、大規模なプロジェクトに参加。苦労して完成させたシステムの多くが、顧客の満足を得られない現実に直面し、悩みました。いろいろと考えた結果、その理由がビジネス側の人間とエンジニア側の人間の相互無理解による意思疎通不足にあることに気づきました。「自分がビジネスをわかるようになって、価値を生むシステムを作りたい」と思い、転身を決意しました。
山根氏 私の前職は地元の大手電機メーカー系列のSI会社のSE。大手総合電機メーカー系列でしたので、比較的大きなプロジェクトにも携われましたし、新しいことにもチャレンジできました。例えば会社として初めてのマイクロソフトのPCサーバを使ったシステム開発に携わり、成功させることができたことなど、前職での9年間は、非常に短く感じるほど本当に有意義でした。得てきた知識をより広くの顧客に提供していきたいという思いが強くなったころ、コンサルタント業界を知りました。そこで自分の実力を試してみたいと思い、自分の知識が生かせるアバナードを選びました。
三谷氏 転身後の仕事内容とそのやりがい、面白さについて教えてください。
鎌田氏 転身してからは、SE時代とは違うやりがいを感じています。例えば、私が最近携わった日中合同のプロジェクトでは、業務アウトソーシングやオフショア開発など、SI以外の解決策も含め、総合的な観点から検討して、顧客の利益を追求しました。このように顧客により近い立場で、顧客の感じている課題を生で感じ、SIから一歩引いた立場から顧客のビジネスにとってのシステム構築の本来の意味・価値を考えることができるのは、ITコンサルタントならではの醍醐味でしょう。もちろんコンサルタントの立場で接するプロジェクトの関係者はSE時代とは比べものにならないくらい広範囲にわたります。そのコミュニケーションに必要な情報収集やスキルの幅も広くなるので、常に努力も必要です。
末永氏 SE時代よりも、刺激的で非常に楽しい毎日を過ごしています。例えば新規に事業を起こす場合、ITコンサルタントはその取り組みの検討段階から関与できることができます。このようなことはSEではなかなか経験できません。一方で、それを動く仕組みとして完成しなければいけない重責があります。SE時代にはプロジェクトマネジャーも経験しましたが、それとも比べものにならないぐらい大変な仕事なのです。でもその仕事をやり遂げて顧客の成功が得られ、顧客からも「よかったよ」と言われると、それまでの苦労はすべて吹き飛びます。その充足感が、次の案件に取り組むエネルギー源となります。
山根氏 アバナードの最大の特徴はやはり高度で先進的な技術での実装能力(デリバリー能力)です。従って、ITコンサルタントとはいえSEで培ったノウハウを十分に生かすことができるため、キャリアチェンジの抵抗感は感じませんでした。ただし、コンサルティングも含めた対応を行う際には、やはり技術力だけでなく、物事を整理するために論理的な思考も必要となります。ただ、考えてみればプログラム開発は論理の塊。つまり論理的に考えることは、プログラム設計で求められるものと同じと思っています。SEでは得られないITコンサルタントならではの面白さとは、顧客の要望を的確にとらえて、業務効率面やリリース後の運用も踏まえたシステムアーキテクチャを描いていくところだと思います。
ディスカッションの様子
テーマ2 SE→ITコンサルタントになるための条件とは?
三谷氏 SEからITコンサルタントになるためには、何が必要だと思われますか。
鎌田氏 ロジカルシンキングや財務知識など、求められるスキルはいろいろあると思います。ただ、私がいちばん大事だと思うのは好奇心です。SE新人時代、私は上司から「自分が開発している機能がシステム全体のどの部分に当たるのかについて常に意識せよ」とよく言われました。上司が言いたかったのは、開発しているシステムの全体像・アーキテクチャやほかの機能との関係を意識し、全体最適を考えよ、という意味だと思います。これがきっかけで、自分の担当部分と他システム、他業務との関係、果ては他企業の同じようなシステムにも興味が及ぶようになりました。私がコンサルタントへ転身できたのは、外の情報をより収集したいという「強い好奇心」があったからだと思います。
末永氏 どんなつまらない仕事も、中身を自分なりに咀しゃくして理解してから仕事に取り組んできたことです。私の場合、先輩から「とりあえずこうすればいい」と言われても、何も考えずに先輩からの言葉に従うという楽なやり方で仕事をすることを避けてきました。そうすることで、「こうすればいい」と言われたことの本質をひもといていく力が養われたと思います。このような方法を採っていたので、ほかの同僚よりも仕事が終わるのが遅くなったりして厳しい言葉を浴びることや、能力を疑われたりしたこともありましたが、そこで培った力が今の仕事の原動力になっていると感じています。また もうひとつは情報処理資格取得や書籍など、基礎固めの勉強にはお金を惜しまなかったこと。これらから得た知識も今の私を支えてくれています。
山根氏 先の二人にほぼ尽きると思います。ただ、追加するとすれば、専門性をもつことだと思います。コンサルティングサービスを併せて提供する場合、どうしてもサービス単価が上がるため、その分顧客は高い品質のサービスを期待します。そのため私たちは、仕事の効率を上げるため、各メンバーの役割を明確にして、作業に集中させることが重要です。コンサルタントとしての今の私の役割は、技術的な深い知識を生かす専門家ではなく、各領域の技術の専門家たちが得意な作業に集中できるよう、管理者として働きやすい環境づくりのエキスパートとなることです。チーム自体が専門家の集まりとなるため、チームによっては、自身もさまざまな知識を得ていかなければなりません。厳しいですが、常に自分を成長させることにつながるので、楽しい仕事です。
ディスカッションの様子
三谷氏 ITコンサルタントへのキャリアチェンジを考えるうえで、すべきことをするために皆さんが捨てたものはありますか。
鎌田氏 具体的には思い出せません。ただ、スケジュールは管理し、必要と思う知識を習得したり、勉強したりする時間は確保していました。ですので、自由になる時間でしょうか……。
末永氏 目先の評価ですね(笑)。先にも話したように、私は納期にギリギリ間に合うところまで粘って、何事も本質を理解してから仕事に取り組んでいました。仕事が遅いといわれることもありましたが、それにもめげませんでした。
山根氏 先にも述べたとおり、私も技術的な得意技は他の人に譲り、今は業務効率を上げるようなチーム管理に取り組んでいます。ある意味、得意技を捨てたともいえますが、経験は十分残っています。むしろ新たな専門性を磨くことで得るものが増えていくことになるので、ステージが上がってきていると感じています。
Part3 三谷氏が提言! SEからITコンサルタントになるための心得
  最後にITコンサルタントへの転身を考えているSEに、三谷氏からのメッセージを紹介する。
三谷氏が提言! 1.何にでも“なぜだろう”の心をもつこと
例えばなぜ1年は365日なのか、なぜ1年は12カ月なのか、なぜ1時間は60分なのか──。書いてあること、言われていることをうのみにするのではなく、普段の生活の中で、“なぜ“の心をもち、自分で考える姿勢を身につけることである。

2.企業事業のメカニズム、特にエコノミクス
(経済合理性)を学び、追究していくこと


3.多くの人や事例と接して、
 多様で本質的な論点や視点をもつこと


4.1〜3の心得を常に実行し続けること

コンサルティング企業は担当する顧客の規模、提供するソリューションの形(総合型、業種特化型)によって、大きく4つに分かれるという。どのタイプの企業や職場で勝負したいのかじっくり考え、自分に合うITコンサルティング会社や職場を見分けることが必要なようだ。
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関洋子(総研スタッフ)からのメッセージ 関洋子(総研スタッフ)からのメッセージ
ITエンジニア適職フェアが開催された5月31日(土)の東京・秋葉原は雨。しかも14.4℃と四月上旬並みの肌寒さでした。そんな中、上記で紹介したセミナー「SEからコンサルタントになるための絶対条件」は、ほぼ満員。熱気で気温も上昇(?)気味。三谷氏の話にうなずきながらメモをとる人の姿も多く見受けられました。本特集が、SEからコンサルタントに転身を考えている方へのよい応援歌になれば幸いです。

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