【元番記者が語る北の湖理事長】(18)解析不能だった朝潮には大きく負け越し

2015年12月10日11時0分  スポーツ報知

 輪島と激しい賜杯を争った横綱・北の湖。横綱に昇進後、最大の壁でもあったライバルをついに追い越す時が来た。1978年。初場所から秋場所まで5場所連続制覇を果たしたのだ。

 初場所を全勝で10回目の優勝を決めると春場所で大関・若三杉(後の2代目横綱・若乃花)との優勝決定戦を制し、自身初の連覇を達成。14勝1敗で夏場所も制し3連覇すると、名実共に輪島超えを印象づけたのが名古屋だ。14日目、全勝同士で宿敵と対戦。水入りをはさんだ3分16秒6にも及ぶ大相撲を制し主役交代を印象づけた。千秋楽も白星で自身、4度目の全勝で4連覇を飾った。

 5連覇となった秋場所では当時、自己最多の24連勝も記録。「憎らしいほど強い」と評されたのもちょうどこの頃。この年は、9月にとみ子夫人と結婚。年間勝利も82勝と63年の大鵬の81勝を抜き新記録を樹立し公私ともに最も充実した1年となった。

 優勝24回。21歳2か月と史上最年少での横綱昇進。年間最多勝通算7回。幕内通算804勝。横綱としての白星670勝。横綱在位63場所。連続勝ち越し50場所。連続2けた白星37場所など数々の記録を残した北の湖だが、中にはこんな記録もある。同一対戦での連勝記録だ。

 74年九州から82年夏にかけて対戦した元関脇・金城(後に栃光に改名)と29回対戦して土付かずの29勝無敗を記録。これは、同一対戦での無敗記録として今も破られていない。

 金城は、同じ出羽一門の春日野部屋。北の湖とは同じ昭和28年生まれで大錦(現・山科親方)、麒麟児(現・北陣親方)、2代目横綱・若乃花と並んで「花のニッパチ組」と称された。それにしても同じ相手に一度も負けないというのは、まさに伝説。北の湖理事長にこの無敗記録を聞くと「オレは右四つ大好きだから」と即答。右を差され、不利な体勢になってもまったく意に介さなかったという。

 金城は、典型的な右四つの力士。対する北の湖は左四つでけんか四つになる。取りにくさがあったかと思いきや「右四つで来ることが分かっているから、やりやすかった」と相手の取り口を分析しやすかったことを上げた。

 一方で苦手な力士もいた。大関・朝潮(現・高砂親方)だ。対戦成績は、7勝13敗と大きく負け越している。これについても聞いたことがある。「朝潮は、左四つで来るか、かましてくるか、分からなかった」。コンピューターのように相手の取り口を記憶し分析した大横綱。それだけに解析不能な何をしてくるか分からない相手は、苦手だったようだ。

さよなら北の湖さん
  • 楽天SocialNewsに投稿!
相撲
今日のスポーツ報知(東京版)
V9時代の報知新聞を復刻