北の果て。小さく平和な村に“タタリ神”に姿を変えたイノシシが現れた。村の青年・アシタカ(松田洋治)は、村の者たちを守るためやむなくタタリ神を殺し、その呪いを身に受けることに。タタリ神とは、怒りと憎しみに精神を喰い荒らされた獣たちの最期の姿。村の巫女・ヒイさま(森光子)から呪いを絶つための方法が西にあると告げられたアシタカは、相棒のヤックルと共に旅に出ることに。
謎の男・ジコ坊(小林薫)からタタリ神の身体から出てきた鉄の玉を作っている“タタラ場”の存在を教えられたアシタカは、さらに西へ向かう。その途中、巨大な犬神・モロの君(美輪明宏)に襲われた甲六(西村雅彦)を助けた彼が目にしたのは、モロの君と行動を共にする美しい少女・サン(石田ゆり子)。彼は、荒々しくも気高いサンの姿に心を掴まれる。
すべての生命をつかさどるとされるシシ神の森を通り抜け、アシタカは甲六の故郷・タタラ場へ。そこは、エボシ御前(田中裕子)という女性が率いる鉄の精錬所。侍社会から虐げられた者たちが生きて行くために、彼らは森を切って鉄を打ち、独立した社会を築いていた。そんな彼らからシシ神の森を守るため、モロの君とサンは日々戦い続けていたのだ。
アシタカがタタラ場を訪れた夜。エボシ御前にモロの君を傷つけられ、怒りに燃えたサンがタタラ場を襲撃。2人の間で激しい戦いが繰り広げられる中、アシタカは石火矢の傷を負いながらも、サンを救出。シシ神の森に彼女を還すことに。
その途中、目覚めたサンは傷ついたアシタカに止めを刺そうとする。しかし、彼が放った「生きろ、そなたは美しい」という一言に心を動かされ、シシ神に彼の命を預けることに。翌朝、巨大なディダラボッチから立派な角と人面を持つ鹿の姿に戻ったシシ神は、アシタカの傷を癒し、彼の命を長らえる決断をする。シシ神の思いを受けたサンは隠れ家にアシタカを匿い、彼の体力を回復させるために全力を尽くすのだった。
そんな中、鎮西(九州)からやってきた、乙事主(森繁久彌)という猪神が率いるイノシシの大群がシシ神の森に現れた。圧倒的な力で山を切り崩し、森と獣たちを傷つける人間たちに最期の戦いを挑もうというのだ。知恵者である乙事主までが勝ち目のない戦いに身を投じようとする現実に、心を痛めるサン。一方、サンのお陰ですっかり傷も癒えたアシタカは、モロの君に人間と自然が共存できる方法はないのかと問いかける。森を傷つける人間に深い憎しみを抱くモロの君とアシタカの思いは平行線で、結局彼はシシ神の森を去ることに。同じ頃、ジコ坊率いる唐傘連やジバシリたちは、エボシ御前と手を組んで、不老不死の力を持つというシシ神の頭を手に入れるための準備を進めていた。
遂に、乙事主たちがタタラ場に向けて襲撃を開始。それが罠だとわかっていながらも自らを犠牲にする彼らをなんとか救おうと、乙事主と行動をともにするサン。彼女の危機を察知しタタラ場に戻ったアシタカが見たのは、侍たちに攻め込まれ壊滅寸前のタタラ場を守っている女たちの姿だった。彼女たちのため、アシタカはエボシ御前を探して戦いの前線へ向かう…。
エボシ御前とジコ坊の策略により、イノシシたちは全滅。しかし人間も大きな痛手を負っていた。辛うじて命を取り留めた乙事主は、サンとともにシシ神の元へ向かうが…。憎しみに喰われタタリ神へと姿を変える乙事主。彼の暴走がシシ神を、そしてサンを、究極の危機に陥れる!
人間と森の神々が争わずに生きていく術は本当にないのか? サンの命を、そしてシシ神とすべての生命を救うために、アシタカが森を駆け抜ける!