ニコ動やラノベにハマっている子に向けて学校をつくりたい

——　ネットの高校をつくる、という話はどこからスタートしたものなのでしょうか。

川上量生（以下、川上）　もともとは、ドワンゴの役員の志倉千代丸さんが、通信制高校をつくりたいとぼくに言ったところからですね。思ってもみなかった提案だったので、最初はびっくりしました。でも、考えれば考えるほど、いい話だと思ったんです。
　というのも、いま少子化で学生の数は減っているのに、通信制高校の生徒は増えているんですよ。それは、従来の高校教育の中で脱落している学生が増えているということですよね。

角川歴彦（以下、角川）　偶然ぼくも、文部科学省から不登校についての民間委員になってほしいと言われたんですよ。その会議で聞いたのは、いま不登校の子は、小学・中学・高校あわせて約17万人もいるということ。ぼくの知っている作家さんのお子さんが不登校、という話もよく聞くし、これはすごく身近な問題なんだよね。

川上　そうして、不登校の子たちが家で何をしてるかというと、おそらくニコニコ動画を見たりしてるんです（笑）。ヘビーユーザーも、たくさんいるんじゃないかと思います。また、KADOKAWAから出てるラノベやそれを原作にしたアニメも、たくさん観てるでしょう。だから、ぼくらがそういった子たちに対して学校をつくるのは、ピッタリだと思ったんですよ。

角川　たしかにそうだね。

川上　その上で、現状の通信制高校にできていないことを解決したい、と考えました。それは、勉強するだけじゃなくて、学校生活で友だちをつくったり、コミュニケーションしたりするという機能。ぼくらならネット上に同級生がいるようなコミュニティをつくれるはずです。テクノロジーの面からも、挑戦してみたいと思ったんです。

角川　それはニコニコの機能からも、できそうな感じがするね。

川上　学習指導要領上必要なカリキュラムとは別に、課外授業をやる予定なのですが、そこはもうぼくらが全力で、ニコニコ生放送のスーパー進化版みたいなインターフェイスをつくります。授業を流すだけでなく、双方向性を持たせるんです。

角川　双方向性があるから、モチベーションも上がるし、生徒同士のコミュニティもできると。あとは、実際に会うスク―リング※も大事にして欲しいな、と思います。人付き合いがうまくいかなくて不登校になった子も多いと思うけれど、この高校のスクーリングだけは楽しみ、と思ってもらえたらいいよね。
※ 学校やスクーリング会場に登校して、先生から直接指導を受けること。通信制高校を卒業するためにはスクーリングへの参加が必須となる。

川上　スクーリングももちろんありますし、ニコニコ自体がリアルイベント大好きな、めずらしいネットサービスですからね（笑）。当然、この新しい高校の文化祭は、春に幕張メッセでやることになると思います。

角川　幕張メッセということは……

川上　そう、ニコニコ超会議が、彼らにとっての文化祭です。この高校の生徒はきっと、会場で焼きそばとか売っていいんだと思います。そんなの、楽しいに決まってますよね。

——　ちなみに、本校はどこに置くのでしょうか。