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発言小町を基に、少子化ジャーナリスト・白河桃子さんが社会現象などを分析します。

「ましゃロス症候群」の皆様と考える イケメンが「男を上げる結婚」

  • 福山雅治さん(2013年撮影)
    福山雅治さん(2013年撮影)

 28日に飛び込んできた福山雅治さん結婚の話題、ニュース速報として午後のワイドショーに流れ、NHKでは夜7時のニュースでトップに取り上げられていました。首相とプーチンの会談よりも先に!

 それを見て思いました。やはり福山さんは「国民的独身」だったのですね。

 「国民的独身」の結婚ともなると、経済に与える影響も大きいようです。福山さんの所属事務所「アミューズ」は株価の下落が懸念され、また、ニュースが流れた後からは女性の労働生産性も低迷していたようです。政府があれだけ女性活躍推進の旗を振っているのに、これは由々(ゆゆ)しき事態……。

静かな落ち込みと、残念な「祝辞」

 さて、ファンの皆様、心中いかばかりかとお察しいたします。いつものごとくツイッターには嘆きの声、祝福の声が飛び交っていました。お笑いタレントの千原ジュニアさんも同じ日に結婚報告をしていたために、「福山結婚? 誰と?」と焦って検索すると、「千原ジュニア結婚」というのが出てきてしまい、「福山のお相手はジュニア?」などと、ツイッター界は混乱状態でした。

 そして友人が「福山雅治 結婚」ではなく、「『ましゃ 結婚』で検索したほうがいいよ」というので、やってみました。そう、ファンは福山雅治なんて呼びませんよね。親しみをこめて、愛を込めて「ましゃ」と呼んでいるのです。「ましゃ」で検索したほうが、より悲痛なツイートが並んでおりました。

 しかし、みんな大人の女性です。お相手の女性を糾弾したり、ののしったりすることもなく、静かに落ち込んでいます。

 ああ、それなのに、菅官房長官がフジテレビの番組で「この結婚を機にママさんたちが『一緒に子どもを産みたい』という形で国家に貢献してくれればいいなと思う。たくさん産んでください」などと発言して、さらに日本を混乱に陥れてしまいました。親戚のおじさんが披露宴で、おいっ子あたりに言うなら許されますが、政治家が日本を代表するイケメン男性の結婚に際して、テレビで言う「祝辞」としてはふさわしくない。言ってはいけないレベルでしょうね。

誰もが何となく感じてしまう「喪失感」の訳は…

 福山さんのお相手は、13歳年下の女優、吹石一恵さん(33歳)です。イケメンがさらに“男を上げる”結婚というのがあるようで、それは、30代、またはバツイチ子持ちの女性と結婚するパターン。逆に、注目される男性が20代女性と結婚すると、女性たちに軽蔑されることが多いようです。

 33歳というこの絶妙な年齢。さすが福山さん。これがもし20代のモデルさんやアイドルだったら、かなりイメージが違ったことでしょう。

 発言小町に早速立ったトピ「福山雅治さん、ご結婚おめでとうございます!」でも、「立ち直れない~~~~~(涙)」「いやだ~!! 一生、独身でいて!」などのレスに交じって、「更に魅力的になった」という声もありました。

 吹石さんは女優さんですが、派手な印象はなく、実直なイメージ。しかしスタイルは抜群。ワイドショーなどでは、芸能界のご意見番と言われる皆さんや、うるさ型の小姑(こじゅうと)のようなコメンテーターからも、厳しい意見はあまり聞かれませんでした。

 しかし彼女が送った結婚報告のファクスに「私、福山雅治さんと結婚いたしました」というのを見たとき、ファンでもないのに、私もついショックを受けてしまいました。

 その理由を考えてみて気づきました。そうです、あの福山雅治と「結婚しました」と書いて、それが真実である女性が、今のところ、この世にただ一人いるわけです。

 そしてある人はツイッターで「そもそも福山さんって想像上の存在じゃなくて現実に存在したんですね…」とつぶやいていました。ファンでない人が、男性たちですら、「なんとなくショック」と呆然(ぼうぜん)としたこの結婚騒動の理由。それは「福山雅治は現実の存在なのだ」という実感と、同時に、「人のものになってしまったのだ」という喪失感ではないでしょうか?

 ユニコーンとか、人魚とか、「現実にはいない」と思っていた存在と遭遇すると、人は驚きます。そして同時に「ああ、夢のような生きものは、そのままそっとしておきたかったのに」と、ちょっとした落胆を覚える。福山雅治さんとはそんな存在なのかもしれませんね。

 とにかく、ご結婚おめでとうございます。福山さん、ジュニアさん、末永くお幸せに。

2015年09月30日 Copyright © The Yomiuri Shimbun
プロフィル
白河桃子 (しらかわ・とうこ
 少子化ジャーナリスト・作家。相模女子大客員教授。政府「新たな少子化社会政策大綱策定のための検討会」委員。東京生まれ、慶応義塾大学卒。婚活ブームを起こした「婚活時代」(山田昌弘共著)は19万部のヒットとなり、流行語大賞に2年連続ノミネート。著書に「妊活バイブル」(講談社新書)「女子と就活」(中公新書ラクレ)「産むと働くの教科書」(講談社)など。「仕事、出産、結婚、女子のためのライフプラン講座」を大学等で行っている。最新刊は「専業主婦になりたい女たち」(ポプラ新書)。公式ブログ:http://ameblo.jp/touko-shirakawa ツイッター:@shirakawatouko
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