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 通信教育大手ベネッセホールディングス(HD)の顧客情報が流出した問題の波紋が広がっている。流出情報の拡散を防ぐ手立ては見つからず、情報を使ったライバル社とは対立が続く。安倍政権も個人情報を取り扱う規制を強化する検討を始めたが、危うさもはらんでいる。

 「セキュリティーも倫理観も不十分だったから、事故が起きた。教育産業への信頼を毀損(きそん)し、申し訳ない」。ベネッセHDの原田泳幸(えいこう)会長兼社長は11日の朝日新聞のインタビューに、こう語った。

 主力の通信講座「進研ゼミ」と「こどもちゃれんじ」の会員数は今春時点で365万人。今回、流出した760万件の個人情報は、これらを含む26のサービスの顧客や以前に顧客だった人たちだ。

 通信教育の国内シェア9割を握る同社にとって、顧客情報は何よりも大切な「経営資源」(原田氏)。小中高生のいる家庭にダイレクトメール(DM)を送れば、効率的に会員を増やせるからだ。

 このため、合法的に子どもや保護者の個人情報の取得を進めてきた。各地の観光施設や行楽地で、クイズやスタンプラリーを開催。子どもが好むペンなどの簡単なプレゼントも用意し、参加した親子連れから名前や住所などを聞き出した。

 こうした積み重ねで蓄積した顧客名簿が入るデータベースの警備は厳重だ。不正アクセスを防ぐため、社内システムは原則24時間で監視。全社員や委託先の従業員に個人情報の取り扱いを教育してきた。定期的な外部監査も受け、個人情報を適切に管理する企業として「プライバシーマーク」も取得していた。

 それでも今回は情報の流出を防げなかった。原田氏は「システムのセキュリティーは、鍵をかけても(悪意のある)人間が連動すれば、開けられる」と指摘したうえで、再発防止のためのシステムなどの検証は「1カ月ぐらいでできると想像している」と話した。

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