エジプト:内閣改造で内相交代 治安改善へ警察引き締め

毎日新聞 2015年03月06日 20時21分

 【カイロ秋山信一】エジプト大統領府は5日、イブラヒム内相の退任を含む内閣改造を行ったと明らかにした。今月中下旬に二つの大規模な国際会議を控えた時期に治安を担う内相を交代させるのは極めて異例で、懸案の治安改善に向けて警察当局の引き締めを図る狙いがあるとみられる。軍と並ぶ権力機構である警察のトップ更迭は、軍出身のシシ大統領の権力基盤が固まったことも象徴している。

 大統領府によると、イブラヒム氏の後任には内務官僚出身のアブドルガファル氏が任命され、イブラヒム氏は治安問題の首相顧問となった。内相以外に観光相や教育相など7閣僚も交代。いずれもシシ大統領の意向を反映した人事とみられる。

 エジプトでは今月13〜15日に経済再生に向けた国際会議、28〜29日にアラブ連盟首脳会議が開かれる。政府は経済会議で海外からの投資を呼び込むため、治安の改善をアピールしたい考えだが、2月下旬以降に首都カイロ中心部で爆発事件が相次ぐなど治安状況は厳しいままだ。

 さらに2013年のクーデター以降続くデモ隊の弾圧、今年2月にカイロのスタジアムで起きたサッカーファンとの衝突など、警察当局の強硬な対応には市民からも疑問の声が上がっていた。シシ氏は治安の改善を期待されて大統領選で圧勝した経緯があり、治安対策を巡る世論の不満に配慮してイブラヒム氏を更迭した可能性もある。

 イブラヒム氏は13年1月に当時のモルシ大統領から内相に任命された。同7月のクーデターでは、軍トップのシシ氏に協力し、モルシ政権の支持母体・イスラム組織ムスリム同胞団の弾圧を主導してきた。だがクーデター後から同胞団に同情的なイスラム過激派によるテロが増加。13年9月にはイブラヒム氏の車列を狙った暗殺未遂事件も起きた。デモ隊への強硬な対応で犠牲者が増えていることから、リベラル派などから罷免を求める声が上がっていた。

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