今日も明日も、毎日仕事に追われっぱなし──。そんな働き女子のすぐ横で、やっぱり一生懸命に働いている犬たちがいます。この連載は、人のために働いてるワンコたちを紹介することで、活動への理解を深めるきっかけになればと願いつつ、その働く姿に働く元気をもらおう! と始めました。第1回目は「シロアリ探知犬」をご紹介します。その活動レポートをどうぞ!
東京・新宿の街をビーグルの集団が闊歩し、オフィスビルに入っていく──。そんな噂を聞きつけて正体を探るべく、犬たちが姿を消して行くというビルの会社にお邪魔しました。会社名は「アサンテ」。害虫の防除などを手がける会社なんだそうです。
いました!!噂通りに“ユニフォーム”を身につけて、キリッとした表情のビーグル犬たちです。
ではビーグル犬たちは一体この会社で何をしているのでしょうか…?
住宅などに住み着き、木材を食べてぼろぼろにしてしまうシロアリ。被害を防ぐには早期発見が大切ですが、床下や壁の中などの木材に進入するため、見つけるのが難しいケースも少なくありません。そこで、抜群の嗅覚を使ってシロアリの発見に大活躍しているのが、ビーグル犬を訓練したアサンテのシロアリ探知犬なのです。
探知犬の仕事は、シロアリが発する臭いを嗅ぎ取って「シロアリがいるよ!」とハンドラー(探知犬のトレーニングやシロアリ探知の現場で犬を扱う人)に知らせること。ハンドラーに連れられて家の中や外周を嗅ぎ回り、シロアリの臭いを嗅ぎつけると、頭を上下に振って教えてくれます。
「シロアリ探知犬は、欧米ではメジャーな存在です。アメリカでは70年代にシロアリ探知犬が生まれ、現在では数百頭のシロアリ探知犬が活躍しています」(アサンテのハンドラー・丸山省吾さん)。
アメリカには、たくさんの探知犬をそろえて家屋などの調査を専門に扱う会社もあるほど認知度が高いのだそう。
アサンテが日本初のシロアリ探知犬を導入したのは、2006年7月のこと。
「当時、日本国内ではアメリカから入ってきたアメリカカンザイシロアリの被害が増えていました。もともと日本にいるイエシロアリやヤマトシロアリは床下に住み着くことが多いのですが、アメリカカンザイシロアリはあらゆる場所に進入するので発見が難しいんです。そこで、アメリカカンザイシロアリの探知のためにフロリダ育ちのシロアリ探知犬『ノア』を迎えることになりました」(丸山さん)。
アメリカカンザイシロアリとイエシロアリ、ヤマトシロアリが発する臭いは成分が似ているため、シロアリ探知犬はどの種類でも探知可能。ノアは早速、日本での活動をスタートさせました。
探知犬を使ったシロアリ探知には、メリットがたくさんあります。シロアリが建物の内部に住み着いてしまって目視では確認できない場合でも、壁などを壊すことなく発見できます。探知にかかる時間が短くすむうえ、探知の精度も高く、発見率は9割以上にもなるそうです。
そして、探知犬には実はもう一つ大切なミッションがあります。それは、シロアリ対策の必要性を世の中に広く知らせること。
「築20年を超えている家は、約半数にシロアリの被害があります。日本では戸建て住宅を築30年くらいで壊してしまいますが、シロアリの被害で家屋が長く持たないことも理由のひとつ。早期にシロアリを発見して対策をほどこせば、家を長持ちさせることができます。住宅の品質を維持し、資源を大切にする社会にしていくためには、シロアリ対策が重要なんです」(丸山さん)。