【動画】沖ノ鳥島の事故現場=西村正志撮影

 海の権益をめぐる国の巨大事業で、5人が死亡、2人が行方不明となった。30日午前7時半ごろ、日本最南端の沖ノ鳥島(東京都小笠原村)の港湾整備事業で、設置作業中の桟橋がひっくり返り、作業員16人が投げ出された。助かった9人中、4人も軽傷。海底資源と、独占的に漁業や資源開発ができる排他的経済水域(EEZ)の維持をめざし、中国も意識した「国策工事」での事故だった。

 工事を発注したのは国土交通省関東地方整備局。五洋建設、新日鉄住金エンジニアリング、東亜建設工業の3社の共同企業体(JV)が受注し、下請け会社も加わって作業していた。工期は昨年8月21日から今年9月30日までで、この日は午前5時半から工事を開始。午前7時ごろから、中央桟橋を海に浮かせて台船から引き出していた。中央桟橋は20日、台船に積まれて北九州市の港を出発。28日に沖ノ鳥島に到着した。

 第3管区海上保安本部(横浜市)は海難対策本部を設置し、巡視船や航空機2機を現地に派遣。行方不明者は見つからず、午後6時過ぎに捜索を打ち切った。31日午前に再開する。今後、業務上過失致死傷の疑いもあるとみて調べる。

 中央桟橋は長さ30メートル、幅20メートル、高さ5メートルの鋼製で、重さ約500トン。長さ約40メートル、重さ約170トンの脚が上に4本突き出ている。これを海底に向けて押し込む形で、固定する予定だった。30日午前5時時点の現地の天候は晴れで、波の高さは0・8メートル。東南東の風が吹いていた。事故原因について整備局の担当者は会見で、「何らかの原因で(桟橋が)偏った荷重になった可能性がある」と述べるにとどまった。