シールドの向こう側…

お面のシールド、そしてヘルメットのシールド越しに見える内、外の風景...


テーマ:

第4話 (後楽園)


 初めて後楽園に参加したのは、科学戦隊ダイナマンの第1期シリーズ。

これがJACに入って初めてのレギュラーの仕事だった。


 後輩の14期生より、2年間の養成所期間があったが、自分達13期生は養成所ではなく、研修生として1年間の練習のみの期間があった。 

月曜から土曜日、途中から日曜も加わり、曜日毎に違う科目の練習を行っていた。

 

 1年後に初仕事として行ったのが、大戦隊ゴーグルファイブの最終話、最後の撮影日(だったと思う)で、大泉撮影所セットでの吊りの補助だった。 

 今では機材や技術の進歩でいろいろなワイヤーワークが可能になったけど、当時はピアノ線を使い上下、左右に前後、吊って動く程度のものでしかなく、たまに切れたりして痛い思いもした。

自分もパワーレンジャーやライダーなどでこのワイヤーを使ったシーンは数多くやってきたけど、実を言うと自分はあまりクルクル回るワイヤーのアクションシーンは好きじゃない。 たいして出来もしない。 見た目の派手さよりも、地に足をつけ、堂々としたヒーローたるアクションをやっている方が気持ちが乗ってくる。 自分はやはり剣友会大盛況の時代に見て育ってきた人間だからかな。 かっこいいと思うところが今の人とはちょっと違うかも…  回ってりゃいいってもんじゃない! と今でも思っている。  

しかし、残念ながら今からアクションをやっていこうと思っている人は別。 オールマイティー! 何か一つ抜けているより、ある程度のレベルでなんでもこなせる人。 そういう人の方がやりたい仕事にありつけると思う。 そういう時代だと思う。 ある程度、のレベルも上がってきているので、その中で目立っていくのは大変だろうけど、チャンスはある筈。 その時に準備が出来ているかどうか? 好きならとことんいかなきゃ、がんばろう! って、他人事だから言うのはラクだ。


 ダイナマンショーでの最初の仕事は、前にも書いたけどコースターレッド。

本番よりもショーの前後の方が大変だった。

 第二期?だったか…、夏のシリーズはゲンゴロウシンカ。 だったんだけど、とんでもない事が起こったシリーズでもあった。 

当時、後楽園のレッドはずっとJACの岡本さん(ビッグ1、バイオハンターシルバ、ブーバ、オヨブーなど沢山のキャラクターを演じてきた人) が演じてこられたが、他の仕事の都合で後楽園を1日抜けなければならない状況になり、その代役が自分に回ってきた。 これはチャンス! だと思ったが、そうとうの覚悟が必要だった。 

当時まだ21歳。 JACのメンバーになって1年目、後楽園に参加して数ヶ月しか経っていない。 よって失敗して当たり前、これも勉強だから。 とは到底思えず、自分の存在?を賭けた勝負。 だと思っていた。 

当然、自分にはまだ早い、反対だ。 との声があちらこちらで出てたらしいが、とりあえずやらしてようということになったようだ。 事務所としてはたとえダメでも経験を積ますという方向で考えてくれていたみたい。 自分としては何が何でもと気負っていた。たいして技術もないのに。 

当日朝のリハーサル、先輩達からも「大丈夫か?」と声をかけられた。 これは励ましではなく、こいつ大丈夫か? の方。 屈辱… だが、ほんとにそう見えたんだと思う。 かなり負けず嫌いだから、見てろよー!って思ってはいたけど、間違いなくプレッシャーと格闘していた。 

1回目12時の回、プレッシャーの中、訳がわからないまま終了。 

2回目15時の回、夏の暑さとしんどさで気が飛んで行きそうになるのを唇を噛んでこらえ、何とか最後まで立っていられた。 それで終了...。 

の回は同業者の知り合いも見に来ていた... お疲れさん、って顔が笑ってた。 

早すぎたな。 後楽園ではそうなってた。 

恥ずかしかったし、悔しくてほんとうに情けなかった... 


くそっ! いまに見てろよ。


たった一つの収穫…  

それは今の自分のレベルがわかった事。 

今の自分より上に行けばいい。 

この日、自分自身が道標になった。


 夏のシリーズは40日近くのロングランだ。 

8月31日。 2回目のショーが終わり、会場がだんだん夕暮れに包まれていく。

会場では皆んなで打ち上げの準備をしている。

まもなく賑やかな飲み会が始まった。

 

 自分は大概、退場時間ぎりぎりまでここにいる。

いろいろと思い出だしながら復習もするし、もしあれが自分だったらこうすればいいんだ。 と予習もする。


 退場時間が近づく。 静まり返ったここは、昼間とは大違い。

広い客席にひとり座ってステージを見ていると、なんだか寂しくて涙がでそうになる。

毎年、夏の最後はそんな感じで幕を閉じる。 

「お疲れさん。お先ー!」 と帰り支度を終え、楽屋から出てきた先輩達の声。

「お疲れ様でした。」 と自分。 

また来週、ここで… 


 

 「あ~ 楽しかった。」 青春してたなぁ~、 いろんな意味で…… 


  

 さて、次は秋のシリーズ。 役はザリガニシンカだ。 

シリーズ後半はより強くなった設定らしくちょっとカッコいいかも、この怪獣。 

夏のゲンゴロウとはえらい違い! 


 自分達は最終的なリハーサルでは本番どうりに衣装を着て演じる。

キャラクターの人はお面を被らないで衣装だけの人もいるが、怪獣役は感覚を掴むため全てを着けて行うのが通例だ。

よって、その前に当然衣装合わせをする。

足がでか過ぎ、手袋が小さくて入らない。 等、いろいろと出てくる。 毎回。

一番厄介なのは、見えない! これだと思う。(同業者はわかるよね。)

後楽園では、狭い階段での上り下りがあったり、立ち回りもちょっと複雑だったりで、せめて前だけでも見えないと(足元はほとんど見えた事がない。)大変な事になる。 迷惑をかけることにもなるので、それぞれが自分なりに工夫を施す事になる。 


 続きはまた次回に。









 




いいね!した人
PR

[PR]気になるキーワード