■力道山
江本 「さてそこで、トレーニングの話を聞きたいんですけど、よく先輩は走れ走れ、投げ込め投げ込めと」
金田 「これからの野球界は絶対に、足を作って野球しない限り、いい選手は出てこないよ」
江本 「最近、冷暖房のきいたウエート室で、試合前も後も、コレ(筋トレ)ばっかりやっているヤツがいます」
金田 「ふんっ」
江本 「鼻で笑われましたね」
金田 「面白い話したろか。ワシと力道山(プロレスラー)、よくゴルフしたんだよ。あのゴツい体に対して、ワシはスリムな体。力道山は丸太ん棒のような腕でクラブ握っておったけど、ワシの方が100ヤード、先に行くんだから」
江本 「なるほど」
金田 「長嶋(茂雄)、王(貞治)、金田、ウエートトレーニング、絶対やらん。バランスでやる。ボーリングをするのさえ、警戒していたんだから。バランスが違うから」
■投げ込み
江本 「キャンプでの投げ込みはどうでしたか」
金田 「あのね。全力疾走して、足ができない限り、絶対、ボールは先行して投げちゃダメ。徹底して、投げる前に走り込んで、下半身を作ってしまえば、肩なんかいつでも、できるよ。下半身は、上半身の10倍、強くせにゃ、あかんの。それが根本。またコーチが、バカなのかしらないけど、はい40球にきました、と…」
江本 「画一的に球数を制限するチームがあります。あれ、バカです」
金田 「バカだろ。気分よく投げ始めたら、止めちゃいかんの。その、なんだ、女性との恋愛で、途中で止められたら、つらいだろ」
江本 「例の行為中ですね。あれは、つらい」
金田 「野球選手も投げたいときは、調子いいヤツは、個人に任せて、投げ切らせればいいんだよ」
江本 「肩には寿命があるから投げちゃいかんとか、アホなこと言う。先輩は年間最高で投げたのが…」
金田 「400イニング」
江本 「化け物ですね。俺が6年連続で200イニング投げたと、近所でいばっているけど、これからはもう、恥ずかしくて言えなくなりますよ」
金田 「ケアだよ。スタートとケアをしっかりしとけば。130、140球投げ終わったら、パッとそこでリズムを止めて、マッサージ。ブラぶらん、ブラぶらんと腕を振ることが、健康にいい。それをアイスでカチカチに冷やすなんて」
江本 「信じ込んでいるんですよ、アイシングが科学的だと」
金田 「ワシの記録を抜いてから、好きなこと言え。自分だけの尺度で言うのなら、人前で大きな声でやらずに、内緒でやれ。子どもがマネしてしまうよ。合う人と合わない人がいるんだから」