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池内博之と中越典子、翻訳戯曲で描く断ち切れない未練

「カレの事情とカノジョの都合」

左から池内博之、中越典子

 2010年にイギリスのエディンバラ・フェスティバル・フリンジで最優秀賞を受賞した作品が、「マイ・ロマンティック・ヒストリー〜カレの事情とカノジョの都合〜」と題し、日本人キャストによって翻訳上演される。

 1980年生まれの若い作者D.C.ジャクソンによるこの戯曲を、演出の栗山民也は「劇構造が面白いし、言葉の力が強く、グイグイと引き込まれる。シェイクスピアの国ならではの現代演劇」と絶賛する。一方で、演じる俳優の目にはどう映るのか、主演の池内博之と中越典子に()いた。

 池内と中越が演じるトムとエイミィは、会社の同僚で、ある日、飲み会の後につい一夜を共にしてしまう。それ以来、何となく付き合うことになるものの、それぞれ過去の恋人への未練が断ち切れない。

 物語は、エイミィの妊娠発覚でさらに混迷を増すふたりの関係を軸に、両者の本心へと迫っていく。「空回りする歯車みたいに曖昧な関係を築いてしまうんですね。スコットランドでも同世代の人は同じ感覚なんだな、と。戯曲を読んで、"ある、ある"と思いました」(池内)、「どこにでもいそうな女の子が、青春時代の熱い恋を忘れられずにいる。誰もが共感できる話なので、()ると"自分にとって本当に大切な人は誰なんだろう"と考えさせられるはずです」(中越)。

 現代人にとってリアルなテーマを描きながら、演劇表現はリアリスティックな手法にとどまらない。トムとエイミィ以外の19役を加藤忍、土屋裕一、春風ひとみの3人が演じ分けるほか、随所にモノローグを挿入したり、同じ場面をトム目線、エイミィ目線の2パターンで描いたりと、様々な趣向が凝らされる。「日常的な会話の中に、人間の多面性が描かれているし、演劇的な面白さを感じますね」(中越)、「エンディングが絶妙なんです。"え、そこで終わるの?"っていう。観てしばらくは、このふたりのことが気になって仕方なくなるかもしれません」(池内)。

 「屈折した役の多かった自分にとって、等身大の人を演じるのは難しいことですけど、ただのダメ男ではないトムの純粋さを大切に演じたいですね」と池内が語れば、「強い個性のないエイミィをいかに魅力的に演じられるか。トムが振り向くような女性になれば」と中越も意欲を口にする。栗山が「匂いを失った俳優には太刀打ちできない作品。池内さんと中越さんには、ヨーロッパの自由な香りというか、野性が感じられる」と製作発表で語っていたとおり、ふたりが果たす役割はきわめて大きい。普通と見えて新しい、(たくら)みに満ちた舞台が期待される。

公演は、東京・シアタークリエで8月16日(金)から26日(月)まで。チケット発売中。

 @ぴあ

2013年7月23日  読売新聞)

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