ポケットモンスターの劇場版（「ピカチュウ・ザ・ムービー」シリーズ）は毎年夏の公開で、毎回３００万人以上を動員する。芸能人や有名人がゲスト声優として参加するのも特徴で、今年は彼女が抜擢された。
「正直、恐れ多くて、私がやっていいのか、ポケモンファンに対する冒涜（ぼうとく）になってしまうのではと不安になりました」
１３日公開の『劇場版ポケットモンスター ベストウイッシュ／神速（しんそく）のゲノセクト ミュウツー覚醒』で、伝説のポケモン、ミュウツーを演じた。日ごろの役柄からは想像できないが、実は彼女、ポケモンファンだという。
「ポケモンはかわいいし、癒やされますよね。大人になって、日々の生活の中で、心が固まってくることもありますが、ポケモンの映画を見ると心が洗われるんです。（主人公の）サトシの純粋な人間性は、カッコイイですよね」
とはいえ、アフレコは思いのほか大変だった。
「初めは手探り状態で、２、３個のセリフに１時間ほどかかりました。ミュウツーはテレパシーで会話をするのですが、実際にテレパシーで会話をしたことはないので、『テレパシーの声ってどうしたらいいの？』と悩みました」
大女優らしからぬユニークなアフレコ現場だったようだ。
「役者は体も動かさないと気持ちが入らないので、動きながらセリフを言いました。なりふり構わずやっていたので、監督に笑われました」
クールな人、という印象が強いが、実際は熱くてまっすぐで、親しみやすい。
女優デビューしてから２４年。２５歳のときにテレビ時代劇「暴れん坊将軍ＩＩＩ」に初出演した。
「当時、きっかけを作ってくださった松平（健）さんに、生意気ながらに、人として何かお返ししたいと思ったんです。そこで、周りの方々に相談したら、『松平さんにとっては、あなたが女優として大成することが一番喜んでもらえることなんじゃないの』と言われ、それを目指すことを選択しました。その選択が間違いではなかったと思えるよう、現在進行形で頑張っているところです」
ベテラン女優でありながら、「自分はまだまだ」だと思っている。
「ベテランと言われてしまうのが怖いですね。年齢を重ねると、自分の生き方、考え方が固まってしまいがちなので、柔軟に対応していきたいです」
５０歳を目前にして、変わってきたことがある。
「失敗を怖がらなくなりました。無難な道に進んでも成長できないですしね。そんなふうに変われたのは、自分をかわいがれるようになったからだと思います。若いころは自分に厳し過ぎたんです。今は自分を許してあげることと、“まだ頑張れるでしょ？”という思いの折り合いがつけられるようになりました。自分のことを許せるようになると、人のことも許せるようになるんですよ」
毎年、若くてきれいな女優が次々に誕生する芸能界。“ベテラン女優”にとっては、どうすれば年齢を重ねながら輝き続けるか、は大きなテーマだろう。
「顔って、その人の生きざまが必ず出る。それが美につながるのだと思っています。きれいごとを言うと、心がきれいな人でいたいですね。役者としての役得は、いろいろな人間を疑似体験しながら、人としての行動や考え方を改めて考え直せること。だからこそ、人間的にも成長しなくてはいけないし、その成長を芝居でも生かせるようになりたいですね」
今後も「限界を決めずに、いろいろと挑戦をしていきたい」と意欲満々。
「でも、役者だけが気持ち良く演じても、見る人に伝わらなければ意味がない。プレッシャーを感じながら、この仕事を続けていきたいですね」
（ペン・加藤弓子 カメラ・鈴木健児）
■たかしま・れいこ １９６４年７月２５日生まれ、４８歳。横浜市出身。ＯＬやカーレーサーなど経て、８８年、「とらばーゆ」のＣＭに出演。同年、「暴れん坊将軍ＩＩＩ」で女優デビュー。その後、映画「陽炎」や「極道の妻たち」シリーズなど出演多数。２００１年、映画「長崎ぶらぶら節」で第２４回日本アカデミー賞優秀助演女優賞受賞。近年の出演作は映画「ＨＯＭＥ 愛しの座敷わらし」「マダガスカル３」（声優）、ドラマ「ハンチョウ〜警視庁安積班〜シリーズ６」、舞台「女たちの忠臣蔵」（座長）など。公式サイトはｈｔｔｐ：／／ｔａｋａｓｈｉｍａ−ｒｅｉｋｏ．ｊｐ／。
