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乾燥地とは

皆さん,乾燥地とは何ですか? と問われたら,何を想像しますか? 文字通りに,乾燥した大地ということでしょう。でも,どの程度,乾燥した状態をいうのでしょうか? そこで,まず初めに,乾燥地の特徴を紹介します。

 

乾燥地とは何かという場合,頭に浮かぶことは,降水量が少ない,ということでしょう。そこで,世界の年平均降水量を示しました。赤い色の方が降水量が少ないことを意味しています。また,乾燥地は,日射量が多いので,蒸発量が多いことも予想できます。この図は,世界の年平均蒸発散位の分布を示したものです。ここで,蒸発散位とは,「気温,湿度,日射,風の気象因子に依存し,与えられた気象条件下で得られる最大の蒸発散量」です。蒸発散量とは地面からの蒸発量と植物からの蒸散量の合計したものです。この降水量分布の分布と蒸発散位の分布が,右下に示した世界の乾燥地の分布と関係がありそうですね。これらの関係を調べる前に,世界の乾燥地の分布を,見てみましょう。
 


 

この図は,世界の乾燥地の分布を示したものです。 砂漠は乾燥地の中でも極めて乾燥した地域で,亜熱帯砂漠は大気の大循環によって南緯,北緯の25度付近を中心に形成されます。その中に,サハラ砂漠があります。雨陰砂漠といって,山脈に囲まれた地域で乾燥した地域があります。例えば, タクラマカン砂漠です。冷涼海岸砂漠は,海岸付近で冷たい海流に起因する砂漠で。その中に アタカマ砂漠があります。乾燥地はこれらの砂漠の回りに分布しています。ここでは、乾燥地と湿潤地の気象の特徴を探るために,乾燥地のイランと,湿潤地の日本を比較してみます。

この図は,降水量または蒸発散位の月別の変化を示しています。湿潤地の鳥取は降水量が蒸発散位よりも多い月がありますが,イランは冬を除いて,蒸発散位が降水量よりもはるかに多いということです。このように,「乾燥地とは,降水量よりも蒸発散位が大きい地域」であると言えます。 さて,乾燥地の程度は,どのようにして判断するのでしょうか?

今,降水量をP,蒸発散位をPETとしますと,PとPETの比を「乾燥指数」と定義します。UNEPでは,この乾燥指数の範囲で,極乾燥地,乾燥地,半乾燥地,乾性半湿潤地に区分しています。そして,年降水量は,冬雨季の地域と夏雨季の地域で異なり,例えば,乾燥地は,冬雨季の地域で,年降水量が 200mm未満,夏雨季の地域で,年降水量が 300mm未満,です。現在では,この乾燥地の分類が使用されています。さて,乾燥地とは「降水量が少ない」というだけでしょうか?


いま,年降水量が300mm未満の地点について,降水量と平年降水量の変動率の関係を示してみました。ここで,変動率とは,雨量の標準偏差を平均値で除したものです。この図から明らかなように,雨量が少ないところほど,変動率が大きく,指数関数的に変化する傾向が認められます。また,降水量の時間的変化も大きく,雨季には極めて大きな降雨強度が生じるという特徴をもっています。例えば,表に示すように,サハラで, 1934年には,年平均降水量が30mmであるのに,3日で370mmを記録しています。1950年 9月には,年平均降水量が27mmであるのに,3時間で44mmを記録しています。このように,乾燥地においては,雨期に全く雨を見ない年があるかと思えば,逆に,集中的な豪雨が観測されます。


この図は,世界の年降水量の変動率を示したものです。ハッチで示した濃淡が変動率の大きさを示したものですが,変動率が30%以上の地域が,乾燥地の分布と良く一致しています。つまり,乾燥地における降水量の特徴として,降水量が少ないだけでなく,降雨の年変動が大きいことが挙げられます。


さて,乾燥地の区分が,国連環境計画で定義されました。例えば,アフリカのサハラ砂漠は,この分類に従えば,極乾燥地に属します。それでは,乾燥地,半乾燥地,乾性半湿潤地の面積が,それぞれ,世界の全陸地面積のどのぐらいを占めているのでしょうか?


この図は,乾燥地の面積割合を示したものです。円グラフの中の数値が全世界の陸地面積に対する割合で,乾燥地は,乾性半湿潤,半乾燥,乾燥,極乾燥をあわせると47.2%になることが分かります。 さて,先ほど,例えば,サハラ砂漠は極乾燥地に属していることを説明しました。これからお話しする砂漠化という場合,すでに砂漠になっている極乾燥地は除外します。ここで,砂漠化を受けやすい乾燥地と示したものは,極乾燥地を差し引くので,全陸地面積の39.7%になります。つまり,世界の陸地面積の約4割が砂漠化を受けやすい乾燥地であることを示しています。


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