カルビー元社長 松尾雅彦さん(1941年〜)


<14> 美しい村 愛郷心持ち景観に誇り

2010年4月27日

「美しい村」連合の審査で長野県中川村を訪れた松尾さん(左から2人目)。今は30を超す町村が参加する(2008年) ※松尾雅彦

 松尾さんは今、NPO法人「日本で最も美しい村」連合(北海道美瑛町)の副会長という肩書を持つ。
 1998年、仏ワールドカップサッカーに合わせて当時の川淵三郎チェアマンたちと一緒に視察に訪れました。カルビーはJリーグの協賛企業だからね。そこで「フランスで最も美しい村」協会を知ったんです。
 設立は82年。80年代は仏政府は小さいコミューン(村)を統廃合しようとした。その時、ある村長が国に頼らない自立した村づくりをしようと提唱し、志に賛同する村長が結集したのが始まりだそうです。
 フランスの「美しい村」は、過疎を逆手にとって、効率的な運営をしているコミューンばかり。彼らの作る農作物は都市の大型スーパーで販売せず、提携している特別なお客さんに売っている。平野部の大規模農業と同じ土俵には立たないんですね。移住者も増えているといいます。
 石工や木工などの職人がかつてのように腕を振るって廃屋を修理し、星付きのレストランやホテルに再生し、世界中から人が集まる。移住者も増えていると聞きました。
 帰国後、美瑛町の町長に「カルビーが応援するから日本でもやってみないか」と持ち掛けた。
 「国を当てにしては駄目ですよ」と。日本は平成の大合併の渦中にあった。2005年、7町村が参加してNPO法人「日本で最も美しい村」連合が発足し、私は副会長をおおせつかりました。
 フランスでは都市の人をお客さまとして村に迎えることで農村と都市を調和している。料理もその土地で手塩にかけたワインやチーズ、バターを使って料理のレベルも高い。ビジネスとして成り立っています。
 日本はまだまだ田舎料理の素朴さだけで勝負をしようとしているように感じます。シェフの力を借り、高いレベルのおもてなしを実現できればもっと人は集まる。
 村おこしやまちづくりは既にあふれているから、私たちは企業の視点から「ブランド価値の向上」と「プロモーション活動」を提案したいのです。小さな町や村は財政問題を抱えて苦境に立つけれど、ピンチは地域が力を結集する原動力になる。
 愛郷心あふれる人々が美しい景観の中で誇りを持って生きる古くて新しい村を全国に増やしたいですね。