韓国世論「旭日旗とナチス党旗を同一視」の大いなる誤解

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  韓国では、旧日本軍が軍旗として用い、現在は自衛隊が用いている「旭日旗」を、「ナチス党旗と同じ性格の旗」として非難する世論が沸騰することがある。韓国人にとって近代の日韓関係が「屈辱の歴史」であり、“過去の問題”に敏感になることは理解できるとしても、「事実とは異なる根拠」にもとづく対日反発がひとり歩きする場合も、しばしばある。日本人としては、受け入れかねることも多い。両国関係を難しくする一因だ。

思想のシンボルである「ナチス党旗」

  まず、ナチスが党旗として採用したハーケンクロイツ、いわゆるカギ十字(逆カギ十字)を考えてみよう。発端は、ドイツの考古学者ハインリッヒ・シュリーマンがトロイの遺跡で「カギ十字」のデザインを発見したことだった。シュリーマンは「ハーケンクロイツ」をインド・ヨーロッパ語族に共通する宗教シンボルと考えた。

  さらにハーケンクロイツは「インド・ヨーロッパ語族の全民族は、共通の祖先アーリア人から発生した。ドイツが最も純粋にアーリア人の血を受け継ぐ民族」という、「アーリア人=ドイツ民族優越説」のシンボルになっていった。

  その後、ヒトラー率いるナチス(国家社会主義ドイツ労働者党)は、党旗に「赤地の中央部分に白い円があり、白い円の中にハーケンクロイツを配す」デザインを採用。ヒトラーは「赤は社会理念」、「白は国家主義理念」、「ハーケンクロイツは、アーリア人種の勝利のために戦う使命」を表わすと説明した。

  つまり、ハーケンクロイツ旗はナチス党旗になった当初から「アーリア民族の優位性」、「アーリア人勝利のために戦う、侵略主義的発想」と結びついていた、ナチス特有の思想のシンボルだった。

  ヒトラーが政権を掌握した後の1935年、ナチス党旗は正式にドイツ国旗になった。

特定思想には無縁だった日章旗と旭日旗

  一方、旭日旗は日章旗(日の丸)が土台になったデザインだ。「日の丸」そのものは平安時代末期から使われ、縁起物として江戸時代には普及していた。日章旗の起源は、世界的にも珍しくはない「太陽信仰」であり、民衆も愛好したデザインだった。人々は要するに「めでたい」と感じたから「日の丸」を好んだわけであり、「思想的背景」がとくにあったわけではない。

  日章旗は1859年、徳川幕府によって日本の国旗として採用された。明治政府も国旗として用いることにした。国旗というものはたいていの場合、国としての理念や歴史をデザイン化したものだ。革命や独立など、苦難に満ち、犠牲者の血で彩られた歴史を反映している場合も珍しくない。

  日章旗の場合、素朴な太陽信仰を起源に持ち、多くの日本人が「そのデザインが好きだった」ということで、最終的に国旗にもなった。誤解を恐れず言えば、“きわめてのん気”にできあがった国旗であり、その思想的背景は「争いごと」と無縁だった。

  旭日旗は、中央に配した「日の丸」が16条の光線を放つ意匠だ。1870年の太政官布告第355号で、「陸軍御国旗」として正式に定められた。1889年には海軍用として、陸軍の軍旗の「日の丸」部分の位置をやや旗竿に寄せるデザインの「軍艦旗」が制定された。

  旭日の意匠は軍旗として採用されるはるか以前から、「めでたさ」を強調するために、民間で祝い事などに用いられていた。

  第二次世界大戦敗戦で陸海軍が共に解体されたため、軍旗として旭日旗が用いられることは途絶えた。しかし1954年に発足した陸上自衛隊は旧陸軍軍旗を元にした八条旭日旗の「自衛隊旗(連隊旗)」を、同年発足の海上自衛隊は旧海軍軍艦旗と同じ意匠の「自衛艦旗」を採用した。

事実を無視した日本批判は自らに「害毒」

  日本は1910年から45年まで日韓併合の形式で、韓国を植民地支配した。手続き上の問題はともかく、韓国人にとって「屈辱の歴史」であることは当然であり、「日本の過去」についてとりわけ敏感になることも、理由がないとは言えない。

  ただし、日本を批判するならば、一定の割合の日本人を「その通りだ」あるいは最低限「韓国の言い分にも一理ある」と思わせる論法を用いないと、意味がないだけでなくて逆効果になるのではないか。

  韓国側の主張に対してたいていの日本人が「あきらかにおかしい」、「異常な反応だ」と感じたのでは、次の機会に韓国側が根拠ある主張をしても、日本人は人間の特性として「また始まった」とばかりに、きちんと耳を貸さなくなるだろうからだ。

  「ナチス党旗と旭日旗」の問題にしても、歴史を少しだけ調べれば、両者の持つ背景がまるで違うことが分るはずだ。

  もちろん、純粋に論理的に考えれば、「日本が過去において、周辺国を侵略する際に使った国家的なシンボルは、すべて使うべきではない」と主張することもできる。ただその場合、旭日旗や日章旗だけでなく、英国国旗、英国軍旗、フランス国旗、フランス軍旗など、かつての欧州列強が伝統的に用いている旗には、すべて異議を唱えなければならなくなる。

  ちなみに韓国は1960−75年のベトナム戦争において、南側のベトナム共和国を支援するため、米国の延べ55万3000人に次ぐ延べ32万5900人の兵力を送り込んでいる。その後ベトナムを統一したベトナム民主共和国にとってみれば韓国はあきらかに「ベトナム戦争における侵略側」であり、仮にベトナムが韓国軍旗について「わが国侵略のシンボルだった。使用は好ましくない」と主張した場合、韓国人は(旭日旗を排斥するならば)自らの主義主張にもとづき「誠実に対応すべき」という“理屈”になる。(編集担当:如月隼人)

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