駅別名?実は広告です 京都市地下鉄、増収へ23駅導入
全国の公営地下鉄で、ホームにある駅名板の下に最寄り施設の名前を広告として掲げる動きが広がっている。京都市は3年前に導入した。厳しい財政状況の中で少しでも収入増につなげようと、多くの乗客が視線を向ける駅名下の「特等席」を開放した形だが、広告と明示していないため、駅の別名と誤解する人もいる。
地下鉄を運営する全国9自治体のうち、京都市を含む5自治体が導入している。東京都が2000年に始め、横浜市、名古屋市、神戸市、京都市と続いた。仙台市も15年に予定する新線開通に合わせて検討している。JR西日本や阪急電鉄、京阪電気鉄道では導入例はないという。
京都市は10年4月に烏丸線で掲示を始め、翌年に東西線に広げた。現在、烏丸線は九条駅を除く14駅、東西線は17駅中9駅にある。対象は1駅に1カ所で、それぞれ最寄りの大学や会社、病院、商業施設などの名前を表示している。
市交通局によると、駅構内や電車内の広告の収入がリーマンショック以降もなかなか回復しないため導入を決めた。広告代理店が駅に近い施設を対象に依頼している。掲示は1年契約で、11年度は年間約950万円の広告収入を得たという。
駅構内を有効活用する「駅ナカビジネス」の一つともいえ、通勤で利用する下京区の会社員前野久人さん(43)は「運賃の値上げ回避につながるのなら歓迎」と評価する。
ただ、一見して広告とは判別しにくい面もある。左京区の主婦丸山美希さん(55)は「駅の別名ができたと思っていた。観光客の中には戸惑う人もいるのでは」と話す。
東西線の駅構内の駅名板や案内表示をデザインした京都造形芸術大名誉教授の久谷政樹さん(72)=左京区=は「経営改善は重要だが、このままでは公共表示と広告の接近に歯止めが利かなくなり、利用者の混乱を招きかねない。欧州では地下鉄の公共表示と広告を明確に区別しており、一定のルール作りが必要」と指摘する。
【 2013年02月06日 15時00分 】