門司 健吾

1985年生まれ。福岡県出身。
東京の大学を卒業後、
2009年に集英社に入社。
現在は『週刊少年ジャンプ』で、
『バクマン。』と『クロガネ』の
担当を務める。

原稿取り ―― 小畑先生の仕事場へ!!

先生からマンガの原稿を貰って来ないとマンガ雑誌は作れない!! だから、原稿取りはいちばん大事な仕事のひとつだ。週刊誌だと毎週先生の仕事場に取りに行くことになるので、もはや日常と言っても過言ではない。原稿を受け取ったら、その場でページ数の確認や、ベタやトーンなどの仕上げのミス、描き文字の間違いなどがないかをチェックして、問題がなければ編集部に持って帰って入稿作業(印刷会社に原稿を渡すための作業)に移る。

原稿が遅れてしまって締切ギリギリの場合は、仕事場から直接印刷会社に向かうことも。さらに、本当に締切がヤバい場合は、編集者が原稿の最後の仕上げを手伝ったりすることもあるらしいぞ!!

いざ、小畑先生の仕事場へ!! 持っているのは原稿カバンと、先生に渡す『バクマン。』グッズのサンプル。

先生から完成したばかりの原稿を手渡しで受け取る。その場でミスがないかチェックしてから持ち帰るぞ。

グッズ監修 ―― ちゃんと似てるかな?

編集者の仕事はマンガ作りだけではない!! 人気作品になればいろんな商品も発売されるので、そのチェックも編集者がすることになる。作品のことを作者以外でいちばん分かっているのは担当編集者だからだ。

キャラの顔はちゃんと似ているか、色は合っているか、そのキャラの性格と矛盾しているところはないかなど、読者がクオリティの高い商品を手に取れるようにチェックするぞ。人気作品になると商品の数も増えるので、この監修だけで毎週何時間もかかることがある。

この日の監修では『超ヒーロー伝説』のiPhoneカバーをチェック。「自分でも欲しい!」と思えるようなグッズになればOK!

フィギュアのような重要アイテムの場合は、先生のところに試作品を持っていって確認してもらうことも。このエイジも先生がチェックしてるぞ。

アニメのチェック!! ―― 視聴者よりひと足先にアニメを観るぞ

『バクマン。』のアニメはNHK Eテレで毎週土曜午後5時30分から放送中!! その放送のちょっと前に、送られてきたDVDで放送の内容をチェック。もちろん、完成したDVDだけでなく、プロット、シナリオ、絵コンテ、アフレコ台本などを段階ごとにチェックしているぞ。

マンガにはないアニメのオリジナル内容が入ることもあるので、そういう部分は特に注意が必要。『バクマン。』のアニメチームは原作への理解も深いので、基本的には問題ないが、たまに、キャラクターの性格と矛盾するようなシナリオができあがってくる場合もあるので、そういう時はキャラの特徴を説明しつつ直しを提案。

単に「ダメです」と言うだけでなく、ダメな理由と、「こう直したらいいのでは?」という代案を伝えたうえで、もう一度練り直してもらうようにしている。

編集部のTVでアニメの出来をチェック。みんなより早くアニメを観られてお得な気分。でも、これも遊びじゃなく仕事。

入稿と校了 ―― 原稿を「雑誌」にするぞ

先生から原稿を受け取ってきても編集者の仕事は終わりじゃない。原稿を雑誌のページにするための作業が残っている。

まずは、印刷会社に原稿を渡す「入稿」作業。ただ渡すのではなく、セリフの文字のサイズや書体を指定したり、アニメの放送情報などの告知文を入れたりと、やることは少なくない。特に『バクマン。』はセリフが多いので、意外とたいへんだ。

無事に入稿すると、今度は印刷会社から、「実際に印刷するとこんな風になりますよ」 という見本のような紙(校了紙)が出校されるので、ここで誤字脱字がないか、指定どおりにセリフが入っているかなどを最終チェックする。これが「校了」作業だ。見逃したら、間違ったままの状態で『ジャンプ』が発売されてしまうので、まさに緊張する瞬間……。無事にチェックを終えたら、印刷会社に校了紙を戻して、あとは刷りあがるのを待つのみ!!

入稿の時に使う道具がコレだ。透明のシートが「級数表」というもので、これで文字のサイズを決める。フキダシの中に入るセリフが読みやすい大きさになるように、一個一個選んでいくのだ。黄緑の本は「書体見本帳」。セリフの内容に合わせて、いろんな書体を使い分けていくぞ。

入稿した時の指定を見ながら、間違いがないかチェックしていく。ここで見逃すと再チェックをする副編集長から「ザル校了!」と怒られてしまう。読者に正しい形のマンガを届けるための大事な仕事なので、責任は重大!!

打合せへGO! ―― 来週の内容はどうしよう?

週刊連載は時間との戦い。1週分の仕事が終わってもすぐに次の週の仕事がやってくる。まず原作者の大場先生のところへ向かい、翌週のマンガの内容について話し合う。先生のアイディアを聞きつつ、こんな展開はどうか、こういう場面があったらおもしろいかも、といろいろ提案しながら内容を決めていく。

とはいえ、ずっと真剣にマンガの内容の話をしているわけではなく、意外と雑談をしている時間も長かったり!? 時には全然関係ない雑談から、先生がいいアイディアを思いつくこともあるので、大事なのはとにかく先生とコミュニケーションを取ることなのだ!!

ファミレスにて打合せ。大場先生「を」撮るのではなく、大場先生「に」撮ってもらった1枚。「もっと仕事してるふうにしましょうよ」と言われた……。

原作中でもファミレスで打合せするシーンが!! 打合せ場所は作家さんによって様々。ファミレスだったり、仕事場だったり、電話ですることだってあるぞ。

やっちまった!! ―― 初めての大失敗

仕事には失敗はつきもの(少なくとも僕の場合は……)。最初の大きなミスはまだ配属されて間もない頃のこと。深夜に家でゴロゴロしていたら突然編集部から電話が……。作った記事に大きなミスがあったとのことで、慌てて編集部へ。『赤マルジャンプ』という増刊号の予告を作ったのだが、男のキャラを女として紹介してしまったのだ。急遽印刷会社に連絡してイラストと文章を差し替えてもらい事なきを得たが、先輩が気付かなかったら新人作家のマンガでウソの予告を作ってしまうところだった。

そのマンガの担当者への取材をしっかりとしていなかったことが、ミスの原因。「わからないことは知ったかぶらずに聞く」という当たり前のことは、社会人になっても、いや責任ある社会人だからこそ、より大切だと思い知った一件。

あと、「同じミスは繰り返さない」ことも大切なので、以後、取材には気をつけるようにしている。

これが問題の記事。直す前は左の「ヒロイン特集」に男のキャラがいた……。マンガの情報を間違えるのは読者にも作家にも失礼!! 重大なミスだ。

当時の謝罪風景を完全再現(!?)。担当の先輩には怒鳴られる覚悟だったが、丁寧に直し方を教えてもらい、逆に申し訳ない気持ちでいっぱいだった……。失敗は仕方ないけど、そこから学ぶべし!と心がけている。

作中でも編集者がミスする場面がある。こういうシーンに共感してしまうのは、編集者ならでは? もしかすると、ミスの多いダメ編集者ならではなのか?

新人発掘!! ―― 本物の亜城木夢叶を探して

既に連載している作家さんとの仕事はもちろん大事だけど、いちばん重要な仕事は新人作家の発掘!! 『ジャンプ』は常に新人作家を育てて、成長してきた雑誌なので、持ち込みや投稿で届く新人作家の原稿を見て、打合せをしていく。一緒に頑張っている新人作家がおもしろいマンガを描いてきた時の興奮、嬉しさは格別。編集者でないと味わえない、この仕事の醍醐味だ。

彼らが成長するのを手助けして、共に『バクマン。』『ONE PIECE』『NARUTO-ナルト-』のようなヒット作を生み出していくことが編集者の目標。リアル亜城木夢叶、リアル新妻エイジを求めて、今日も編集者は持ち込みを見るのだ!!

増刊『ジャンプNEXT!』掲載を狙う新人作家との打合せ。描いてきたネームのできや如何に……!? 持ち込みを見るブースは、まさに『バクマン。』に出てきたとおり!?

イベントも監修!! ―― いろんな所で仕事するぞ

編集部や作家さんの仕事場以外でも、まだまだたくさん仕事はある。そのひとつがイベントの監修だ。この日は『バクマン。』の声優によるWebラジオの公開収録。事前に構成もチェックしたうえで、当日の収録にも参加してきた。

作品によっては全国各地のイベントを観るために出張を繰り返すこともある!! マンガ・アニメ・グッズ・イベントと形は変わっても同じ「作品」である以上、同じ担当がチェックするのだ。観ている人が最大限楽しめるように、作品の世界観やキャラを壊さないように意見していく。

最大規模のイベントは年末の「ジャンプフェスタ」。その時は、宣伝部や広告代理店などと話し合ってステージの内容などを詰めていく。ちゃんと屋台村の食べ物の味まで監修していたりするのだ。

声優のトークを温かく見守る。話すことを職業にしているだけあって見事なトーク!!

イベント後に、最高役の阿部敦さんと、秋人役の日野聡さんと記念撮影。ありがとうございます! いつもお世話になっております!

編集体験 ―― 4Cカラーを入稿してみよう!!

就職活動中のみんなへメッセージ!

就活って結構理不尽ですよね。僕もよく「たった10分の面接で何がわかるんだぁぁ」とか叫んでました。でも愚痴っても仕方ないので、ポジティブに、自分に自信を持って頑張ってください。

僕の場合はテンションを保つために、何を考えたのか、「自分は凄い奴だ!」と本気で思い込もうとしてました。面接や試験で落ちても「運だから仕方ない」と気にせず、通ったら実力だとうぬぼれる。これで意外とテンション落ちずに就活を乗り切れました。思い返してみるとなかなかイタいですが……。

ただ、たとえ勘違いでも、それくらい本気で「自分は凄いんだ」と思い込むと、不思議なもので面接でも落ち着いて話せました。自分の良い所を自分で言うって、凄く恥ずかしいし、バカみたいじゃないですか。でも、謙遜して何も言わなかったら、相手には伝わりません。意外と、僕くらい傲慢に、根拠のない自信を持って挑んだほうが、恥ずかしがらずに自分をアピールできるんじゃないかな、と就活時の経験からは思います。

こっちが本気で思い込んでると、意外と面接官も「コイツ……何か凄い奴なんじゃ?」と勘違いしてくれますし(笑)。

出版社って、採用人数も少ないし、もの凄い実力の人ばっかり入社するんじゃないか……なんて思っちゃう人も多いでしょうが、意外と自分を信じて受けてみたら入れたりします。僕も就職活動を2年もやって、1年目は1社も内定をもらえないというダメ学生でしたが、気の持ちようを変えて頑張ったら入社できました。

だから、もし「自分なんかどうせ無理……」と思っている人がいたら、逆に「自分を採らないで集英社は誰を採るつもりなの?」くらい大きな気持ちで受けてみて欲しいです。根拠なき自信は学生の特権ですから! 頑張ってください!