足利将軍の遺髪収納か 地蔵菩薩像頭部内に包み紙
大津市歴史博物館は9日、三井寺(園城寺)にある室町時代前期の木造地蔵菩薩(ぼさつ)坐像をエックス線撮影したところ、頭部の中に納入品を包んだとみられる紙が見つかったと発表した。寺の文書に、地蔵菩薩に納入した記録がある室町幕府2代将軍足利義詮か、初代尊氏の遺髪の可能性があるとみている。
三井寺には、足利家御用達と言われた仏師集団「院派」の作とみられる地蔵菩薩像が3体ある。金堂にある1体(高さ42センチ)の首の付け根には、頭部の空洞をふさぐ布があり、納入品があるとみて撮影した結果、約7センチ四方に折りたたんだ紙があることが判明した。
地蔵信仰にあつかったと伝わる尊氏は、当時の三井寺金堂などを再建し、寺との関係も深かった。義詮が亡くなった翌年の1368年の「園城寺文書」には、尊氏が亡くなったときの先例に従って、地蔵菩薩に義詮の髪を入れて寺に納めたとの記述がある。仏像の制作時期が1350~70年ごろとみられることから、義詮か、1358年に亡くなった尊氏の遺髪を納めた像と推測できるとしている。
撮影に協力した東京文化財研究所の津田徹英文化形成室長(日本彫刻史)は「破壊せずに納入品が見つかった意義は大きいが、髪は細い線でも写るはずなので、髪があるかは慎重に判断しなければならない」としている。
同博物館では13~25日まで、地蔵菩薩坐像とエックス線写真を展示する。有料。
【 2012年11月09日 23時25分 】