外国人と手巻寿司 生魚と海藻で脱落…最後は「混ぜご飯」 (3/3ページ)

2012.7.15 09:00

 生魚は好奇心で食べるが、緊張を強いる。だからアボカドでサーモンの生臭さが消えると「いけるね」と思うようになる。和風寿司から洋風寿司になったときだ。しかし、それでも生魚よりツナマヨのほうがもっと気楽だ。ものすごく馴染んでいる味のネタならそれに越したことはない、という安心感がみえる。

 が、海苔が実はまだ抵抗がある。あのパリパリ感は苦手だし、海藻を食べる違和感はなかなか拭えないのだ。あえて言えば、湿気のあるベッタリとした海苔を好む人のほうが多い。したがって手巻き寿司は、外国人にとって「理想の寿司」ではない。よって海苔の脱落があり、皿のうえで寿司飯とツナマヨの「混ぜご飯」を食べることになる。

 寿司の要素として最後まで脱落しないのは寿司飯と醤油だけである。

 どこそこの国で何々が人気という記事などを目にするたびに、ぼくは手巻き寿司パーティを思い起こす。大人は何でも出されれば一応は食べる。「珍しいものなのに、美味しいって言って喜んで食べたよ」というのは、個人的経験としてはアリだが、市場での潜在性にはあまり直結しないのではないか、との疑いをもつのも大事だ。どれだけリラックスして食べたか?という点にぼくは関心を払う。

 ローカリゼーションマップとは? 異文化市場をモノのローカリゼーションレベルから理解するアプローチ。ビジネス企画を前進させるための異文化の分かり方だ。

 安西洋之(あんざい ひろゆき) 上智大学文学部仏文科卒業。日本の自動車メーカーに勤務後、独立。ミラノ在住。ビジネスプランナーとしてデザインから文化論まで全方位で活動。今年は素材ビジネスやローカリゼーションマップのワークショップに注力。著書に『ヨーロッパの目 日本の目 文化のリアリティを読み解く』 共著に『「マルちゃん」はなぜメキシコの国民食になったのか? 世界で売れる商品の異文化対応力』。ローカリゼーションマップのフェイスブックのページ ブログ「さまざまなデザイン」 Twitterは@anzaih