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'12/4/26

原発と活断層 立地の総点検迫られる

 地震列島で原発を再稼働させるためのハードルがまたひとつ、高くなった。

 日本原子力発電敦賀原発(福井県)1、2号機の直下を通る断層だ。この断層が過去、近くの活断層と連動して動いた可能性があることが、原子力安全・保安院の調査で分かった。

 原発を推進してきた国の機関が指摘した点で、異例ではある。福島第1原発の事故以降、地震に伴う原発の未知の危機に不安を募らせる国民感情や地震学者らの警告を軽視できなくなったのだろう。

 原発の耐震性を判断する場合に考慮する活断層は、12万〜13万年前以降の活動があるものと国は規定する。

 敦賀の浦底断層の最新の活動時期は4500年前以降だという。しかも、1、2号機の原子炉建屋の下などに、「破砕帯」と呼ばれる軟弱な断層が約160見つかった。破砕帯は活断層に伴って、新しい時代に動いた可能性が否めないとされる。

 日本原電は2004年に3、4号機増設を申請した際も「浦底断層は活断層ではない」としていた。しかし、今年3月、この断層の地震エネルギーが想定の2倍以上と分かり、加えて基礎データを05年には得ていたことが明るみに出た。隠蔽(いんぺい)体質と言われても仕方がない。

 そもそも国や原子力産業が唱えてきた「安全」とは何か。

 原子炉は燃料ペレットから原子炉建屋までの「五重の壁」を誇ってきたが、それはプラント技術である。文字通り、その根底を覆すような事態をどれだけ想定していたのか。

 日本の原発揺籃(ようらん)期は1960年代後半から70年代前半だ。プレートテクトニクス理論など現代地震学の完成・普及を待たず、そのまま列島の地震活動静穏期に原発の新設・増設ラッシュが続いた。敦賀1号機の運転開始は1970年で40年を超す。従来の理論だけでは通用しない。

 想定する最大の揺れの強さを「基準地震動」と呼ぶ。07年には中越沖地震に伴って柏崎刈羽原発(新潟県)で基準地震動を上回る揺れを記録し、各地で活断層の見直しが相次いだ。

 さらに東日本大震災後、列島各地で地層の均衡が崩れたとして、従来考慮していなかった活断層の連動も想定するよう保安院は電力各社に指示している。

 原発立地に伴う活断層評価はようやく厳しくなってきた。

 保安院は日本原電に速やかな再調査を指示したというが、第三者機関を交えた調査でなければ、今や国民の納得が得られまい。

 敦賀原発には日本原子力研究開発機構の高速増殖炉原型炉もんじゅ、関西電力美浜原発も近接している。「原発銀座」の住民の不安は募るばかりだろう。

 この際、国内全ての原発の立地の総点検が必要ではないか。場合によっては廃炉になる原発が出てくるのもやむを得ない。

 保安院は中国電力島根原発(松江市)でも、新たに日本海側の断層が51・5キロ連動すると想定した。従来は陸地の宍道断層(22キロ)を考慮してきたが、再検討が必要になってきた。

 島根1号機はあと2年で運転開始から40年。新たなリスクが出てくるとすれば、40年を超す運転の判断にはさらに納得できる根拠を示してほしい。




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