俳優で歌手の杉良太郎(67)が26日、福島第1原発事故修復作業員の拠点となっている、福島県双葉郡のサッカー練習施設「Jヴィレッジ」を妻の演歌歌手・伍代夏子(50)とともに訪れ、激励コンサートを開いた。事故以来、芸能人が同所を慰問したのは初めて。2人は160人の作業員らに感謝を示し、デュエットなども披露。涙ぐむ作業員を見て、杉も瞳を潤ませた。
昨年3月の東日本大震災が起きてから5度、被災地を慰問してきた杉が「事故現場の最前線で戦う“決死隊”を直接激励したい」という思いを、ようやくかなえた。
Jヴィレッジはもともと、日本代表の合宿なども行われる“サッカーの聖地”。しかし、福島第1原発から約20キロにあることから事故以来、東京電力が借り上げ、作業員が原発の修復作業の行き帰りに防護服を着替えたり、放射線量を計測する“中継基地”となってきた。
これまで40年以上にわたって国内外の慈善活動を続けてきた杉。事故直後から懇意にしている閣僚らに掛け合い、同施設に赴いての作業員激励を志願。2年越しで国会議員以外では初めての慰問を実現するに至った。
杉と伍代は、普段は作業員が放射線の講習を受ける教壇をステージに「命懸けで仕事してくれる人がいるから、我々は能天気でいられるということを広報しなきゃいけない。お会いしたかった」と感謝。この日のために制作したという最新曲「バラ色のダンス」などを熱唱し、夫婦漫才のようなトークを披露。男性作業員(51)が「ここは娯楽がないから楽しかった」と声を弾ませたように、会場を和ませた。
慰問の前には第1原発5キロ圏内を車で視察。福島随一の桜の名所、夜の森公園では観光客が1人もいない中、満開となったソメイヨシノ2000本を目の当たりにし「(荒廃した街並みとの)ギャップにこたえたね…。桜は強いよね」としんみり。桜吹雪の背中で豪快に見えを切った“遠山の金さん”も、この日ばかりは桜に心を痛めた。
また、2人は一部が原発20キロ圏内にある双葉郡川内村も訪れ、歌謡ショーを開いた。全村民が村外に避難していたが、4月に帰村が始まったばかり。祖母が福島出身の伍代が「お帰りなさい」と声をかけると、500人の地元ファンは、大きな拍手で応えていた。
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