神奈川県内で、平成19年7月にアジサイ葉化病が発生しました。
農業技術センターには、年間150〜200件程度、植物の病気の診断依頼が寄せられます。病気の原因は糸状菌、細菌およびウイルスによるものがほとんどですが、このアジサイ葉化病は大変珍しく、ファイトプラズマという病原体によって発生する病気です。
発病したがく片や花茎の篩管に細胞壁のない、直径150〜600nmの多数の球形や亜鈴型の多形性粒子状の病原体が見られます。
一般にファイトプラズマは、感染植物に花器の葉化・緑化やてんぐ巣症状など特徴的な形態変化を引き起こすことが知られています。写真のようにアジサイの花器が葉化する症状が大きな特徴です。また葉が黄化したり、一部赤色化する症状もみられます。病気が進行すると株全体の衰弱症状がみられます。
独立行政法人農業・食品産業技術研究機構中央農業総合研究センター昆虫等媒介病害研究チームのご協力をいただき、アジサイ葉化病の同定をPCRによる遺伝子診断で行いました。
アジサイ葉化病も他の多くのファイトプラズマ病のように、ヨコバイ類が媒介すると考えられていますが、国内での媒介虫は現在までに明らかになっていません。一度この病気にかかると治ることはありませんので、発病株を処分することが、新たな感染植物を増やさないためにも重要です。また挿し木などで増殖をする場合も、発病が疑わしい株からの増殖はしないようにするなど注意が必要です。
アジサイ葉化病の症状
PCR産物を用いたアジサイ葉化病の同定
1〜8:神奈川県内から採集したアジサイ葉サンプル
M:100bpラダーマーカー
▼7および8がアジサイ葉化病サンプル(矢印がアジサイ葉化病に特有のDNA断片)