サッカーで流れたJAMの歌
25日の夜、友人と食事をすることになり、渋谷に向かった。「最近洋食続きだから焼き鳥が食べたい」という彼女が、ネット検索で探した店に、私が到着したのは、予約時間より少し前。おしゃれな若者向きの焼き鳥屋さんで、煙くもなく、いい感じだ。
「あのー。予約してある○○ですが」と声をかけたところ、出てきた店員さんがにっこり笑いながら「サッカーはご覧になりますか?」と聞くのである。
さ、さっかあ?サッカー?????はああ?焼き鳥食べに来てなんでサッカー???
世のスポーツ事情に全く疎い私の口から出た言葉は「な、なんのためにっ!?」という一言。さらに、きっぱり、そして厳かに続けた。
「見ないです。全く見ません!!」と。
心の叫びが素直に口から出ただけだったのだが、今度は店員さんが困惑した表情。店内にスクリーンをつるしてのパブリックビューイング?が店の目玉企画だったようで、回りを見ると、店員さん全員が青いユニフォームを着ている。どうやら、予約時間より早くきた私を、サービスして「サッカーが見やすい席」に案内しようとしたら、思いもよらない全面拒否にあったということのようだ。
店長と店員による鳩首会議の結果、カウンター席(それでもスクリーンは見えるが)に案内された。そこで店員さんにこっそり尋ねて初めて、アジアカップの日韓戦が行われることを知った私…。
すみません。最初にあやまっておきますが、本当にサッカーに興味がないので、新聞に載っていても、頭に入らないのです。さらに、今回は日テレの中継じゃなかったので、「あと何日」と局であおられることもなかったのです…。
ちなみに、遅れて到着した友人も、「え?きょうなんかあるの?」と言う体たらく…。二人で焼き鳥をむさぼり、午後10時、店を後にするというサッカーへの興味のなさを徹底した行動をとったのだった(どう考えても、帰り道の途中で試合中継が始まる)。
そのまま安らかに寝てしまった私は、本当にサッカーを一瞬も見なかったのだが、今回はちょっとばかり「くやしい」と思わされる出来事が就寝中に発生していた。試合終了後、会場内に流れた音楽が、JAM ProJectの「VICTORY」だった件だ。
当欄で何回も書いているように、JAMは、影山ヒロノブさんをリーダーとするアニソンを世界に発進するユニットであり、「VICTORY」は「スーパーロボット大戦MX」の主題歌。翌朝、色々な方からのメールでそれを知り、ああ、これはナマで聞きたかった、と思った次第である。
さらに、「なぜあそこでアニソンが?」というメールやメッセージも、ファンの方や関係者から、多数いただいたのでちょっと「取材」に動いてみた。
実は、現在カタール大使を務めておられる門司健次郎氏は、これまで外務省の広報文化交流部長を務めておられた方で、3年前、JAMのワールドツアーに同行した後、JAMの皆さんを門司さんに紹介した経緯がある。さらに、門司さんご自身が、アニソンなどのサブカルチャーに理解がある方で、アニソンのライブなどに足を運んでもくださっていた。昨年秋、大使に転出される際には、影山さんや水木一郎さんらと一緒に壮行会に出席したほどだ。だから、これは「大使に違いない」と思ったのだが…。
大使にメールでうかがったところ、楽曲を見つけてきたのは、主宰者であるAFCアジアサッカー連盟の担当者だそうで、「その人のアニメ歴などは不明」とのことであった。でも、経緯が何だったにせよ、遠いイスラムの国、カタールで開かれたアジアカップという場で日本のアニソンが流れたというのは快挙である。「偉い人」たちが理屈をこねたり、サブカルチャーを軽視したりしている間にも、じわじわと、でも確実にアニソンは世界をつないでいる、と実感する出来事であった。
プロフィール | |
---|---|
鈴木美潮 すずき・みしお
読売新聞東京本社文化部記者
1989年入社。横浜支局を経て政治部。官邸、社会党、外務省などを担当後、Yomiuri Weekly編集部に。2002年から政治部で保守新党、自民党などを担当。美空ひばりと特撮ヒーローの熱狂的なマニア。
|
|
- 今年の目標は美文字 (1月13日)
- 泣きそうな笑顔で新年 (1月6日)
- ミタさんの快挙に思うこと (12月22日)
- 日本語のあいさつって難しい (12月16日)
- 内田所長、追悼再放送が決定 (12月12日)
- 謎の『カーン』の正体は? (12月2日)
- オウム裁判終結に思うこと (11月25日)
- ヌーボーはゴーカイピンク? (11月18日)
- 元気が出る昭和史検定 (11月11日)
- 福くんと、シージェッター海斗と年末イベント (11月5日)
ピックアップ
トップ
|