［国際］【中国高速鉄道事故】「調査の全過程を公開」温首相現場会見、当局「人災」認める（2011.7.28 17:23）

　【上海＝河崎真澄】中国の温家宝首相は２８日、浙江省温州市の高速鉄道事故の現場で記者会見し、事故処理や原因究明について「民衆が疑問を呈している」と当局の対応に批判が集まっていることを認め、「調査の全過程を公開し社会の監督を受ける」と言明した。一方、政府の事故調査チームは同日、信号設備に重大な欠陥があったなどとする調査結果を報告した。

　温首相は「装置や管理、メーカーの問題を徹底追及し、背後に腐敗問題があれば決して手をゆるめない」と述べ、断固として責任を追及する姿勢を示した。高速鉄道の建設には鉄道当局と納入業者の間の汚職が絶えず、事故との関連性に注目している点を強調した。

　「ここ数年、中国の高速鉄道事業は大きく発展したが、この事故は安全が第一だということを気付かせてくれた」とも述べ、スピード建設の陰で安全が置き去りにされてきた問題にも焦点を当てる考えを示した。

　温首相は同日、温州入りして負傷者を見舞ったほか遺族らを慰問。事故現場の高架下で花輪を供え、その場で記者会見を行った。

　国営新華社通信によると、政府事故調査チームは２８日、温州市で開いた初会議で、温州南駅の信号設備に設計上の重大な欠陥があり、事故当日の落雷により故障が発生、赤信号を送るべき区間に青信号を発信したのが追突の原因とする現段階の調査状況を報告した。

　路線を管轄する上海鉄道局長は、同駅の担当者が信号の誤発信に気付かなかったと述べた。事故直後、落雷による天災を強調した当局が国民の批判を受けて「人災」を認めた形。事故調査チームは９月中旬にも最終報告を発表する。

　一方、信号設備を納入した北京の国有企業は「心からおわびしたい」とする謝罪声明を発表している。