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INTERVIEW
荒木経惟
2010.4.10 UP
2009年にまさかの前立腺癌宣告と、それにつづく摘出手術。そこから娑婆に生還を果たしてついでに遺作まで出したアラーキー。その『遺作 空2』(新潮社刊)*という大著は、初めて目にする者のド肝を抜く。自宅バルコニーで写した空の写真をカンバスに、ペインティングもすれば文字も描くという破天荒な手法が思う存分に取り入れられている。1940年生まれで五月には70歳を迎える、世界的にも人気が高い写真家・荒木経惟。忍びよる死を予感しながら、完成すなわち死だと再び初心に立ち戻って写真とアートにうちこむ日々の原点に迫ります。(聞き手:瀬戸山玄)

病室でも日記をつけるように撮る

荒木経惟『東京ゼンリツセンガン』(ワイズ出版)*という写真集は見た? オレの場合、写真はすべて日記だから、前立腺癌になって入院すればまず看護婦さんを撮ることから始まる。天から天使たちが降りて来たみたいだって、彼女たちに寝ながら声をかけてシャッターを押す。こちらも気持ちを見て触ってみたりとか。
昔から写真は触り撮りとかするけど、彼女たちもに毎日触れているから、理解力はともかく、感度や見る勘がとってもいいわけ。
すごく表面的な話だけど、写真を撮るというのは瞬間を止めることなの。アタシの言葉でいうと息を止めるというか、仮死状態にすること。それをプリントで見せる時に生き返らせるわけ。だから生と死や彼岸と此岸とか、この道を行ったり来たりして、よろよろしながら日記をつけるように撮っている感じなんだね。

70歳にもなると癌も表に出てきてしまう

このあいだ塀を乗りこえようとしたら、登れなかったね。気分の中に老いという気持ちは何も無いけど、足が痛いし腰も痛い。写真をずっと全身でからだ撮りしてきたから、体力が落ちたと分かる。きっかけはやっぱり癌だね。
癌はみんな持ってるのね。たとえば、癌の手術をする前、両親の死亡理由とかを念のため調べる。それでうちの親爺も実は癌で死んだと初めて知った。しかも同じ前立腺癌で。でも、昔はたとえ分かっても言わない。今は告知が当り前になり、中堅どこの担当医が「すぐ死にはしませんよ」ていうんだから随分なもの言いだね(笑)。
60歳前後で逝った頃なら癌も出てこずにそのまま死ねたけど、今はみんな寿命も伸びたから、70にもなると癌も表に出てきてしまうのね。

モノクロームの死の世界、そこをペインティングで生に変える

最新作『遺作 空2』は限定千部だから早くしないと無くなっちゃうよ。 荒木経惟
これはね、妻の死から空を眺めて感じて、しつこく撮りながら、空が心の鏡だったり、窓だったりするの。モノクロームが基本だから、少したまって一周忌に見せようとしたけど、あまりに寂しすぎた。それで、よし、色を塗ろうと。こちら側の想いなんて大したことない。それより向こう側からばんと来る想いというか、インスピレーションをこちらが受けたわけ。
以前は自分の方の想いが大きかった。たとえるなら前はカメラが男根という感じ。ところがこの頃は、カメラが女陰という感触に近い。それぐらい「攻め」よりも、受け入れる側になってきた。若いうちは攻める側じゃない。でも年を取ると向こう側から来るものを受け止められるようになる。ちょっと挑発しないと来ないけれど。それとオマージュというか、捧げる気持ちも強い。モノクローム写真で空は死の世界じゃない。そこを生に変えるには、やっぱりパッと血を通わせないといけない。だから、カラーを塗りたくる。

男根から女陰になり、さらには棺桶

で、今はもっと進んで棺桶を撮っている。……(と言って取り出した一眼レフカメラの裏蓋の紙片には、「棺桶」と殴り書き)……ライカとかで撮ると、ものすごく品のいい品格というか、く荒木経惟すんだ悟りという雰囲気が出てしまうので、それじゃだめだから一眼レフでガチャンと撮る。するとみんな棺桶の中みたいになっちゃう。
フレームそのものが人生模様を切り取る棺桶の形。写真機が男根から女陰になり、さらには棺桶となってその人間の姿をどんどん撮っていく。
つまり送りびとが死化粧をするみたいに、オレの場合は今、自分の写真は死に化粧をするという気分に近い。写真を極めていくと結局、男根的なものからより女陰的なものになると確信したね。そして最後には写真というよりも、「写神」という神に近づいてあらゆる生を受け止めていくみたいに。

完成すればすなわち死

……(写真集『遺作 空2』を目の前に広げて)……遺作 空2でも絵を描くといったけれど、オレの場合はそれだってより写真的なものなの。つまり白黒写真の上に指で絵の具を押しつけたり腕で広げたりして。日本画の伊藤若冲じゃないけど、一生懸命に描くこと自体が全身を使ったアクションだから指紋だらけのペインティングもあるし、やっぱりどこかで指を使いながら「指想」している感じに近い。だから気持ちとして、ペインティングも写真行為なの。
それでね、毎日のことに毎日つきあうのが大切なの。そういう写真を撮りながら、今夜は残月が良いとか、満月が美しいとか、そこには写生の要素があるわけ。詩情の世界というのか、私情の世界というか。でもそれをアートにしちゃいけない。つまり完成させてはいけない。人生もアートでも、完成すればすなわち死なわけ。

捧げるくらいの気持ちで魅力的に撮る

写真をやるなら、そこに相手がいればそのより良い所を引き出して、オレが表出させて相手を謳うということが大事なの。荒木経惟どんなやつだろうと、美人に撮れるというか、もう捧げるくらいの気持ちで、魅力的に撮ることをしないといけない。単純なはなし、人物写真や顔写真を撮って、相手が喜ばないようなものはまずダメ。やだよ、こんなの欲しくないア、と向こうが思いながら、でも一応貰っておかないという気分では、「もらった、もらった!」と本気で喜んでもらえない。
でも40年前の最初に撮った銀座の顔シリーズ(白黒の街頭スナップ)とかは、オブジェみたいな顔だから喜んでもらえない。そのあと地下鉄の座席に座り、向かいの席に座った女性の顔をノーファインダーで撮るようになった。何かひとりぼっちというか、孤独な表情を撮ることから始まり、到底喜んでもらえそうにないそれを、ずっと続けながら、当時はそういうのがオレも好きだった。どうしても人間というのは何か表現したい気持ちがあるんだね。表現っぽくしたいとか(笑)。

時間をフレーミングして出来る写真集

……(『遺作 空2』を前に広げて)……これなんかはやっぱり日記だから、丁度これは陽子の命日に、写真集『冬の旅』を開いたらオレの書いた文章が中にあったので、それを手書きで写真にまた入れた。そういった日記のような要素がこの写真集には刻まれている。つまり表現というより、その日に出会う出来事とか、思ったこととかを記しただけなの。写真撮るなり文章書くなりして何かやれば、それはごく短い現在かもしれないけど、永遠になるかどうか分からなくても残り、すっと過去になっていく。
だから写真というのは空間をフレーミングしているのではなく、時間をフレーミングしているのだといつも言っているじゃない?え、まだ言ってなかった!(爆笑)
そこに過去を引っ張ってきたり、気持ちが幾重にも重なりあうようにして、一冊の写真集が出来ている。だから色々な想いが前後にまだ映り込んでるんだぞと言いつつ、決して映画にしようとする訳じゃない。

「遺作」から「棺桶」シリーズへ

外国で雑誌のインタビューを受けたとき、オレはいつも井の中の蛙みたいに、四角い井戸の枠の向こうに世の中を観ている。だから別にパリにまで来なくても、世界はちゃんと観えていると答えた。そしたらバカ受けした(笑)。フランスは言葉の国だから、そういうロジックがもの凄く受ける。タイトルもその時々の気分で決めるから、シリーズなんて大げさなものじゃない。この「遺作」にしても何やかんや言いつつ、ペイントだけに限らずコラージュなど写真以外の行為もいろいろ入っているわけ。30代の頃にやっていた切り貼りみたいなものまで。だから今度の「棺桶」は、写真だけでフィルムだけでとどめを刺すぞという気分で始めた。
荒木経惟

次号へ続く 2010.4.23 UP
(2010年2月 東京・新宿Bar Rougeにて 
TEXT:瀬戸山玄/ドキュメンタリスト PHOTO:室谷亜紀

INTERVIEW:荒木経惟 Part 1 / Part 2
Profile:荒木経惟
あらきのぶよし 写真家

1940年、東京都台東区三ノ輪に生まれる。
1963年、千葉大学工学部写真印刷工学科卒業。同年、(株)電通に入社。1964年、「さっちん」で第1回太陽賞受賞。1971年、電通に勤めていた青木陽子と結婚、新婚旅行を撮影した『センチメンタルな旅』を限定1000部で自費出版。1972年よりフリーに。以来、妻・陽子との生活や東京の情景、過激なヌード作品などを次々に発表。写真界のみならず社会をも揺るがす「天才アラーキー」として広く認知されるようになった。欧米では「グラン・マエストロ」(大巨匠)と称され高い評価を受ける。2008年、オーストリア政府より科学・芸術勲章受章。また2002年より日本全国の人たちの肖像写真を撮影する「日本人ノ顔」プロジェクトを続けている。
主な展覧会は「Tokyo Comedy」(セセッション、ウィーン/1997年)、「センチメンタルな写真、人生。」(東京都現代美術館/1999年)、「ARAKI:Self, Life, Death」(バービカン・アート・ギャラリー、ロンドン/2005年)、「東京人生 東京人生、写真人生、Aノ人生」(江戸東京博物館/2006年)ほか。
主な著書に『さっちん』『センチメンタルな旅・冬の旅』『荒木経惟 トーキョー・アルキ』(すべて新潮社)、『愛しのチロ』(平凡社)、『空』『東京ゼンリツセンガン』(すべてワイズ出版)、『広島ノ顔』(荒木経惟「日本人ノ顔」プロジェクト)、"ARAKI"(Taschen)、"ARAKI:Self, Life, Death"(Phaidon)などがある。

荒木経惟オフィシャルサイト
http://www.arakinobuyoshi.com/

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荒木経惟の演出により自身の写真を2台のスライドプロジェクターのオーバーラップにより見せる独自の写真表現。エモーショナルな動きは田宮史郎、安齋の手指による。そこに川上由美子プロデュースにより安田芙充央によるピアノ、akiのボーカルなど音楽が加わる。これまでに15作以上が発表されている。

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