「Singularity −シンギュラリティ(特異点)−」は2200円(ドワンゴ・ミュージックエンタテインメント)(画像クリックで拡大)

 自分はニート――ニコニコ動画でそう告白したことから「ピアニート公爵」と呼ばれるようになった実力派ピアニストが4月6日にCDデビューした。動画投稿サイトなどで活躍する“ネット発”アーティストたちの楽曲は通信カラオケの年間ランキングの上位に顔を出すなど、音楽ビジネスの側面からも注目度が高まっている。ピアニート公爵のアルバムも、アマゾンのベストセラーランキングのクラシックジャンルで1位を獲得。4月6日付けのオリコンデイリーチャートでは、クラシック・ジャズチャートで1位。総合アルバムチャートでも50位に入った。

 ピアニート公爵は、ゲーム音楽をクラシックに編曲して演奏した動画をニコニコ動画に投稿し、その超絶テクニックが話題となり人気となった。ニコニコ動画などネットで活躍するアーティストが増えている今、その一人として現状をどうみているのか。ネットでの音楽活動への思いなどを聞いた。


――アマゾンのクラシックジャンルのランキングでは、発売前の予約段階から1位だったそうですね。

ピアニート公爵:「1カ月ほど前に初めて1位になったときは自分でも笑ってしまいました。ランキングを見たらグラミー賞をとられたあとの内田光子さんと小澤征爾さんが2位と3位にいる。これはすごいことになったなと思いましたね。ただアマゾンは(ニコニコ動画の利用者が商品を購入できる)ニコニコ市場からもリンクしているので、ネットでは特殊な場所なのかなという気もします」

アマゾンの3月28日のクラシックジャンルのランキング(画像クリックで拡大)

――普段はどういう活動をしているのですか。

ピアニート公爵:「大学院を出てから5年になりますが、伴奏をしたり、ピアノを教えたり。本名で楽譜の解説を書いたり、ネットで連載を持っていたこともありました。伴奏が主ですけど、ほとんど稼ぎはなく、みたいな感じですが…」

――ニコニコ動画に演奏動画を投稿したきっかけは?

ピアニート公爵の演奏動画はニコニコ動画での再生回数が150万回を超える。東京芸術大学、同大学院卒(画像クリックで拡大)

ピアニート公爵:「最初にあげたのは2007年末です。ニコ動はその年の春からみていました。最初にあげたのはアイドルマスターというゲームの曲です。そのころ、ゲーム画面を切り張りして動画を作るのが流行っていて、楽しそうだったので自分もやってみたいなと思ったんです。自分にできるのはクラシック音楽です。クラシックアレンジにふさわしい曲があったので、演奏を撮影して動画をあげてみました」

――それがアルバムにも収録されている「アイドルマスター 蒼い鳥」ですね?

ピアニート公爵:「そうです。思った以上の反響でビビったというか。深夜にあげたんですよ。すぐにコメントがついて、みんな楽しんでくれてるんだなと思っていましたが、その翌朝起きたら、一晩で何千再生にもなっていたんです。どっちかというと怖かったですね。こんなつもりじゃなかったというか」

 「元々、うたとピアノとオーケストラがあって、それを1台のピアノで弾いてやろうというアレンジでした。原曲が分からないとでもしならない人も楽しんでくれて。これはすごいという反応があったのは予想外のところまでリーチしちゃったなと思いました」