2011年2月22日
果物の年間消費量トップを走るバナナ。3年前、バナナダイエットのブームで全国的に品薄になったのは記憶に新しいですが、手軽に栄養が補給できると、受験生やスポーツ選手らには手堅い人気です。おいしく食べるための保存法や、バナナの成分について、専門店主や研究者に聞きました。
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前橋市の住宅街に「梅田のバナナ」と看板を掲げた小さな店がある。店内にはバナナがずらり。1年通じて手に入るフィリピン産のほか、春から初夏は台湾産も扱う。梅田厚子さん(70)が、2代目だった亡き夫の後を継ぎ、営業を続ける。
「いつ食べますか?」
梅田さんはまず、客にたずねる。「明日なら」「3日後は」と、要望に合わせ品を選ぶ。「見た目がきれいなバナナがおいしいと思っている人が多い。本来の味を知らず、もったいない」と梅田さん。食べごろは、「付け根まで黄色になり、茶色い斑点がポツポツ全体に出たころ」。熟れて、甘みがのるという。
保存にもコツがある。保存温度は、15〜25度が適している。バナナは呼吸をしているので袋から出し、冬は新聞紙に包んで発泡スチロールの箱に、夏は涼しい場所での保管がいい。バナナに冷蔵庫は厳禁。皮が黒くなり見た目が悪いうえ、一度低温にさらされると熟成が止まり、甘みがのらなくなってしまうからだ。逆に「完熟させてしまえば、冷凍庫に入れても中身が凍らず包丁で切れる」と梅田さん。
置き方にも注意したい。スーパーでの陳列とは逆に、山型のアーチ風に置く。実が床や壁と接する面積が多いと傷みやすいためだ。バナナを取り扱う商社担当者も「店では見た目重視。陳列棚では置きやすさ重視でしょうが、本当は山型に置くのがいい」。つるしておくバナナスタンドがあるとなお良い。
スーパーの店頭で見るバナナは、フィリピン産の「ジャイアント・キャベンディッシュ」が一般的。輸入販売大手のドールは、標高500メートル以上の高地で栽培したものを「スウィーティオ」と呼び、区別している。個装で「高級」をうたうバナナも目立つが、どこが違うのか?
国内で販売されているバナナを、女子栄養大学短大部の春日敦子准教授(食品化学)が分析し、3年前に発表した。
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普通のキャベンディッシュは、100グラムあたりの糖分が13.8グラム。これに対し、高地栽培は19.5グラム、甘いといわれる台湾の品種も17.8グラムと多かった。「土壌や栽培法にも左右されますが、標高が高いと寒暖の差があり甘みが強まる。完熟するとデンプンが分解され、さらに糖が増える」と春日さん。
中程度のバナナは、皮をむくと約100グラムなので、栄養計算が楽。86キロカロリーで、食物繊維も1.1グラムと比較的豊富だ。
「昼に菓子パン1個食べるなら、バナナ4本の方が体にはいい。同じカロリーで脂肪は少ないわよ」。春日さんは、こう学生に言っているそうだ。(熊井洋美)
◆インフォメーション
バナナの輸入は、9割以上がフィリピン産。あとはエクアドル4%、台湾1%弱と続く。日本バナナ輸入組合が運営する「バナナ大学」でレシピ集や用語などの豆知識が得られる。調理用バナナは、フィリピンでは主食。日本のスーパーでも一部扱っているが、味・食感は里芋に似ているという。興味がある人は挑戦を。
ある日父親の異変に気がついた。物忘れ。力のないせき。入院を機に徘徊も始まった。父は認知症のため十分な治療を受けられずに亡くなった。母親もまた、認知症を抱えてがんの宣告を受けた。