大和屋 暁 Akatsuki Yamatoya
今回はターム毎にお話をまとめるように構成しました

『HEROMAN』の制作に4年掛かっているという話ですから、大和屋さんの作業としてはかなり前のことですよね?

かなり前ですね。もう、思い出せないくらい前のことになります。

後半、脚本家の清水さんが参加されていますがほとんどのシナリオを書いてらっしゃいます。大和屋さん自身がほぼまるまる作品のシナリオを担当することはよくあることなのですか?

時間的なタイミングが今回はあったと思います。かなり時間があったこともあり、俺ひとりで書けるとこまで書いちゃおうかなって感じだったんです。

『HEROMAN』は、9話にスクラッグ編の山場がきていたり、他の作品とは違う感じの構成になっていると思うのですが。

そうですね。スタン・リーの書いたプロットが映画一本分くらいしかなかったので、9話目に山場がきているんです。その結果今回はターム毎にファースト・アーク、セカンド・アークという形でまとめることにしました。

他に特色といえるようなことはありますか?

海外の子供たちが観てわかりやすいものになるように心掛けてまとめています。元々アメリカでの放送が前提で作られているので当然ですけど。それからこれは特色ではないのですが、もともとは4クールの予定で制作が進んでいたんです。いろいろやってやろうと考えていたのですが、途中で2クールに変更になってしまいそこから構成が変わりました。広げた風呂敷を閉じないといけなくなってしまったんです。すでに18話ぐらいまで書き終えたところだったので、構成変更後は、当然といえば当然なのですがどう作品を終わらすかを考えて話をまとめていくことにしました。そのため、それ以後の話数のお話はどうしても駆け足っぽい内容に見えてしまうかもしれないですね。

話数が減ってしまったことで、描けなくなったエピソードもあるわけですよね?

たくさんありますよ。ホリーに関しては、もうちょっといじりたかった気持ちがあります。ウィルの話にしても、もっといろいろなエピソードが書けたと思うので、もったいなかったですね。

大和屋さんはシナリオを書くのは早い方ですか?

早いです。締切を落とすのが怖いだけなんですけど。出せと教育を受けてきたのでとりあえず出します。

シナリオを書いていくうちに、新たな発見があったキャラはありますか?

後半になるまで、ずっとひとりでシナリオを書いていたので、基本的にキャラにブレはないと思います。ただ、このキャラはこう動かすと面白いんだろうなというのが、後になってわかってきたところはあります。最初の方は戦いの連続だったじゃないですか。それが一段落して日常の話に移ったとき、多少はじけて、おバカなキャラにしてみたり。

シナリオ打ちは、どんな雰囲気だったのですか?

シナリオ打ちには、クリーチャーデザインの武半さんとキャラクターデザインのコヤマさんも参加されていたので、首脳陣は全員揃っている感じでした。話し合ったことが、その場でだいたい決まっていくので良かったです。ライターではない人たちの意見も出てくるし、アイデアなども出してもらえましたし。打ち合わせが終わった後は、よく無駄話をしてました。本読みの後に別の打ち合わせを入れていて…。早く終わると俺が寂しいので、みんな無駄話に付き合ってくれました(笑)。

スタン・リーからの意見は?

最初の頃はいろいろあったと思います。朝早く、ボンズの会議室でスカイプを使いながら意見交換をしたりして。やり取りは面白かったですけど、朝からの集合は眠かったですね。

シナリオを書くときに気を付けていることは?

面白くすることです。いろんな面白さがありますが、この番組ならどう見せるのが良いかを考えます。『HEROMAN』の場合、毎話数、引きを意識しましたね。来週も観なきゃって思わせるような終わり方をするということでしょうか。

ヒーローマンへ指示を出すジョーイのコマンド(かけ声)は誰が考えたんですか?

打ち合わせの中から、徐々に決まっていった感じです。「どうやって指示を出すんだ?どんなコマンドなんだ?」というところからみんなで詰めていった感じです。スタン・リー側からも案は出ていたんですけど、最終的に、お話の中で使うコマンドや名前、機能はシナリオを書く段階で決まっていきました。なかなか大変でしたよ、ワザとかを決めるのは。

お気に入りのキャラは?

ドクター・ミナミ。あのキャラができるまでには、紆余曲折があったので。

ドクター・ミナミはボンズの南さんがモデルになっているそうですが、出演を決めたのは誰ですか?

スタン・リーがOKしてくれました。一度、ドクター・ミナミが女性になりかけたことがあって、「これはうちのボスだから(性別を)変えちゃダメだ」って必至に押しとどめたことがありました。最初にコヤマさんが描いたキャラは、もっと南さんに似てました。ヒゲを付ける、付けないとか、デザインするときもいろいろありましたよ。

ファンにはどういうところをみて欲しいですか?

特にジョーイとヒーローマンの成長と、その2人の関係ですね。それがこの作品のテーマですから。

すでに脚本の仕事は終わっているわけですが、心残りはありますか?

余裕があれば自分を出したかったんですよ。「ヤマトヤ」というキャラを作って、ドクター・ミナミの作ったMR3に乗るつもりだったんです。それができなかったのが一番の心残りですね。人が乗り込むカッコイイロボを出す予定だったのに……。

Profile 大和屋 暁 「HEROMAN」 シリーズ構成・脚本