広がるペニーオークションに罠 落札できず手数料取られ… 

2010.9.30 14:02

 出品価格が安い代わりに、入札をするたびに手数料がかかるインターネットオークション「ペニーオークション」が広がりをみせている。新品の家電などが市場の9割引きで買えることもあり、利用者は増加。だが、落札できなければ入札手数料だけが取られることになり、利用には冷静な判断力が必要だ。(道丸摩耶)

 いつまでも終了せず

 ペニーオークションのサイトを見ると、新品の商品が破格の値段で出品されていることにまず驚く。

 大手ペニーオークションサイトでは、市場価格約6万8千円の「iPad」が401円、市場価格約8万円の富士通のノートパソコンが575円で落札された、とある。中古品ではなく、いずれも新品だ。

 どうしてこのような価格で落札できるのか。仕組みを理解しようと、実際に入札に参加してみた。

 名前や住所などの登録を済ませ、750円で模擬通貨の「コイン」を購入する。入札手数料は1回75円のため、これで10回の入札が可能だ。

 市場価格は10万円近い地デジ対応薄型テレビが、なんと1千円台。残り5分ほどでオークションが終了するというので、まずは1回、入札してみた。

 しかし、終了間際になると、次々に入札が入る。入札が入ると終了時間が20秒延びるため、一気に終了予定時間が1時間ほど延びた。午前0時を回っても、画面は「終了間近→誰かが入札→終了予定時刻延長」を繰り返す。明け方まで待ったが、オークションが終わる気配はなかった。

 結局、このテレビが落札されたのは2日後。落札価格は1万円を超えていた。私は最初に75円を消費しただけだったが、本気で落札しようとすれば時間もお金もかかってしまう。

 相談も増加傾向

 国民生活センターによると、こうしたペニーオークションに関する相談は今年に入って増えている。「落札していないのに参加費(手数料)がかかるのはおかしい」「なかなか落札できないが、販売方法に問題はないか」といった内容が多いという。

 日本でペニーオークションが広がったのは、ここ1年ほど。次々と新しいサイトがオープンするものの、サイトが有名になれば参加者も増える。“ライバル”が増えて落札が難しくなると、利用者は別の新しいサイトに流れる。利用者が減って閉鎖するサイトもあり、せっかく入札のために買った模擬通貨が無駄になるケースもある。

 また、「お金を払って入札したからには入札手数料を回収しよう」と、意地でも落札しようとするケースも多い。その結果、落札額がはね上がり、多くの参加者が多額の手数料をとられることになる。

 国民生活センターは7月、「安く落札できると入札を重ねても、入札手数料が積み重なり、最終的に落札できたとしても、手数料と落札価格を合計するとさほど安くなかったということになる可能性がある」とホームページで“警告”。利用規約を理解し、熱くなりすぎないよう呼びかけている。

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 ネットで入札のたび50~80円

 ペニーオークションとは、入札のたびに料金が発生する新型のネットオークションの総称。0円など破格の値段で新品の家電などが出品され、入札1件ごとにおよそ1~20円単位で価格が上がっていく。落札するには、手数料として各サイト内のみで使える“模擬通貨”を購入する必要がある。入札1回につき、模擬通貨代として約50~80円がかかる。

 例えば、0円で出品され、入札1回で1円ずつ価格が上がる「iPad」の例を見てみよう。入札には3人が参加し、最終的に500円でAさんが落札したとする。

 入札には1回50円が必要で、Aさんが250回入札したとすると、手数料を含め計1万3千円を支払うことになる。

 ほかのオークションと大きく違うのは、落札できなかったBさん、Cさんも入札手数料を取られる点だ。落札額だけを見れば、「iPad」が500円で落札された格好だが、出品者(オークション運営者)側には3人分の入札額を含めた計2万5500円が入る。

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