武蔵川理事長が辞任へ…賭博問題引責と激しい体力低下、監督庁圧力も

体調不良のため理事長を辞任する武蔵川親方

　日本相撲協会の武蔵川理事長（６２）＝元横綱・三重ノ海＝が一連の賭博問題の責任と健康上の理由から辞任することが４日、分かった。５日に両国国技館で行う臨時理事会後に会見し、辞意を表明する。後任は監督官庁の文部科学省は外部からの登用を要望しているが、協会内部の理事の昇格が濃厚で放駒理事（６２）＝元大関・魁傑＝が最有力。賭博問題がついに協会トップの引責辞任に発展した。

　武蔵川理事長が辞任する。５日の理事会で辞意を表明し、その後の会見で心境を明かす。ただ、正式な辞任は暴力団排除の対策を協会が打ち出す今月下旬にまでずれ込む予定。反社会的勢力との断絶という最重要課題への道筋をつけた後、２３日の理事会、評議員会で、放駒理事が最有力の後任へとバトンを渡す意向だ。

　辞任の動きはこの日、国技館で行われた臨時理事会で急展開した。出席者によると、村山弘義理事長代行（７３）から会合直前の午前中に、監督官庁の文科省が武蔵川理事長の退任を要望していることが報告されたという。これを受け、理事会では武蔵川理事長自身の意思の確認が提案され、会議は中断。出羽海（元関脇・鷲羽山）、放駒、友綱（元関脇・魁輝）の各理事を急きょ、荒川区内の武蔵川部屋へ派遣した。

　３人の理事は理事長に面会し、文科省の意向を伝えた。理事長は７月に過労による高血圧で都内の病院に入院。２９日に退院したが、健康面で不安を抱えていた。友綱理事は「思っていた以上にやつれていた。声に張りもなかった」と印象を語った。監督官庁からの圧力と、体力的な問題からこの席上で辞意を伝えたという。再開された理事会では武蔵川理事長の意向が伝えられたが、協会トップの人事を本人不在では決議できない。自身も自らの口で説明したい意向を示したため、５日に武蔵川理事長が出席し臨時理事会の招集が決定した。

　複数の関係者によると、５日の理事会では辞意表明にとどまるという。正式な辞任は反社会的勢力への対策を協会が決議した後になるものとみられる。暴力団対策は８月下旬にまとまることは確実で、トップとしてけじめを付けた上で辞任する考えだ。

　武蔵川理事長は０８年９月に大麻問題で引責辞任した北の湖前理事長の後継として就任。理事長の辞任は史上初という非常事態での昇格だった。今年２月の理事選後には再任され、不祥事からの再発防止へ意欲を見せていたが、５月に賭博問題が発覚。多数の力士、親方が関与し、自らも名古屋場所を謹慎するという未曽有の危機が発生。１２年１月いっぱいの任期まで１年５か月を残し辞任することになった。これで相撲協会は２代続けて理事長が辞任。トップを代えても、協会そのものが体質改善しない限り、異常事態は続く。

　◆武蔵川　晃偉（むさしがわ・あきひで）本名・石山五郎。元横綱・三重ノ海。１９４８年２月４日、三重・松阪市生まれ。６２歳。６３年名古屋場所で初土俵。７９年名古屋場所後に３１歳で第５７代横綱に昇進したが、肝炎などを患い８０年九州場所で引退。優勝３回。通算６９５勝５２５敗５６休（幕内５４３勝４１３敗５１休）。引退後は年寄・山科を経て武蔵川を襲名。指導者として、横綱・武蔵丸、大関・武双山、雅山、出島らを育てる。２００２年に理事に就任。０６年から事業部長を務め、０８年９月に第１０代理事長に就任。