今月のDreamia人はキャイ～ンの天野ひろゆきさん。「はなまるマーケット」（TBS）で「リストランテ食べてみ亭」の天才シェフとして創作料理を紹介されていたり（2006年12月閉店）、ご自身のブログでもたびたび自炊料理を紹介するなど、お料理好きとして知られていますが、「リンカーン」の芸人ラーメン王決定戦で初代ラーメン王に輝いた経歴が示すように、料理に対するこだわりと腕前はプロ並み。プライベートでも芸能人のお友達をご自宅に招き、料理を振舞っているというエピソードはよく知られています。

　というわけで、今回はまず、クリナップ新宿ショールームのキッチンで、ご自慢の料理を披露していただく運びとなりました！

思い出の「ツナおろしパスタ」

――今日つくっていただくお料理はなんでしょう？

天野　僕が最初に覚えた料理、ツナおろしパスタですっ！　僕が高校時代にアルバイトした店で、はじめてシェフに習った料理で、店でも定番の人気メニューでした。

――思い出の料理をつくっていただけるんですね。ありがとうございます！

天野　はいっ！　まずパスタを計りましょう。1人分100グラムくらいとして...今日は2人分くらい...いや、やっぱり1人分でいきましょうか。

  慣れないキッチンに少し戸惑いながらも、手際良く作業を進める天野さん。パスタのお湯が沸騰するあいだに、野菜を準備します。
　材料はパプリカ、玉ねぎ、マッシュルーム缶、大根、ツナ、刻みのり、カイワレ、こぶ茶（どう使うの？）、オリーブオイル、しょうゆ、塩こしょう。

天野　いつもはパプリカじゃなくてピーマンなんですけど、彩りを考えて揃えていただいて。せっかくなので使わせていただきましょうね！
　おっと、この包丁もなんか「やりそう」な包丁ですねぇ（笑）。

　センサー式の自動水栓に驚き、最新のコンロに感嘆の声をあげ、アマダナのキッチンスケールに「おっしゃれー！」とコメントを忘れず、作業をしながらも天野さんが常に周りに気を配り、楽しいトークで場を盛り上げてくださるので、取材だということを忘れるくらい、スタッフが一気に笑顔にさせられてしまいます。

天野　なんだか皆さんがうちに遊びに来てるみたいですね。

――お友達を呼んで、よくホームパーティをされるんですよね。

天野　ホームパーティっていうか、一方的に来られて、一方的に食い散らかされてるだけっていう（笑）。僕の誕生日で集まったのに、僕が台所にいる、というね。アハハハ！

――（笑）。このパスタはアルバイト先で教わったということですが、15歳のときにアルバイトをはじめた、という話は本当ですか？

天野　ええ、早くから自立心の強い子だったんです。当時、ミュージシャンの尾崎豊があまりに好きで、影響を受けて卒業式に出なかったり（笑）、「生きるってなんだろう？」とか考えてアルバイトをはじめたんです。
　1人暮らしをすることになったら、料理ができないと困るだろうと思って、食べ物屋さんを選びました。喫茶店とレストランのあいだくらいの店でしたね。

　高校はアルバイト禁止だったんですが、ある日担任の先生が店に現れて、「怒られるのか？」と思ったら普通に注文されて。ハンバーグとチキンソテーのセットだったかな？　それを食べた先生が「天野くん、おいしいから頑張りなさい」って。

いい先生だったなぁ。

――と、お話しながら大根の皮をむかれてますが、本当にお上手ですね。


天野　いやいやいや、照れるなぁ（笑）。（大根をおろしながら）しかし、新鮮ないい野菜ですねぇ、どこのですか？

――スタッフがデパ地下で買ってきました。

天野　デパ地下の野菜は違いますねー。アハハ。
　なんて言ってるうちに、ほぼ準備ができちゃいましたね。あ、まだパスタ茹でてなかった！

授業で寝て、アルバイトに精を出す

　と、ここで沸騰した湯にたっぷりの塩を入れ、パスタを投入。パスタがくっつかないようにはじめのうちだけ菜箸で湯を混ぜます。

天野　こうやって最初だけ混ぜるのも店で教わったんです。高校の3年間、アルバイトをやりましたから、いろいろ覚えましたね。
　しかも、勉強より働くのが楽しくなっちゃって、この店の他に早朝はパン屋さんで働いて、授業に行って、午後は喫茶店という。とにかく自立したかったんです。

――パン屋さんも仕込みから？

天野　えーとね、チョココロネづくりですね。チョコが生地に巻かれた状態で店に届くので、それを発酵させて、表面に卵の黄身を塗って焼くんです。

――えっ？　チョコクリームは後から入れますよ？

天野　うちの店は違うんです！　アハハ。あとはカレーパンを揚げたり。
　で、なぜか1時間半かけて学校に行って、授業で寝て、バイトに精を出すっていう毎日でした。あの頃が人生で一番働いてました（笑）。

――（笑）。大学は東京にいらっしゃったんですよね？

天野　東京に行けると思ったんですけど、違ったんです。…あ、ここ料理のポイントです。

　パスタが茹で上がる3分前くらいから、具材を炒めはじめるのですが、このときにツナ缶の油を使います。ツナの油の量を見ながら、必要ならオリーブオイルを少々追加。ツナの風味が油に移っているので、味にコクが出るそうです。
　そこに、せん切りにした玉ねぎ、パプリカを入れて炒め、なじんだところでマッシュルーム缶（カットしたもの）を加え、塩で味をととのえておきます。

天野　えっと、どこまで話しましたっけ？

――大学が東京だと思ったら…というお話です。

天野　そうそう。指定校推薦で日本大学の国際関係学部に入るんですが、日本大学って東京だと思うじゃないですか。パンフレットにもキャンパスにブロンドの女の子がいる写真があったし、東京だと思い込んでて。
　でも実際にはキャンパスは静岡の三島だったんです、4年間ずっと。国際関係なのに？って感じですよね（笑）。

――そうなんですか!?

天野　で、東京にも遊びに行きたいので、部屋を小田原に借りたんです。三島と東京のあいだだし、小田急線に乗れば東京まで1本だし、って（笑）。
　でも、小田原から三島までのあいだに、熱海、真鶴、湯河原があるんで、たいてい途中下車して学校行かずに温泉行ってましたね。「今日はいっか」って無料の温泉入ってぐだーっとして。で、学校にはだんだん行かなくなりました。

一口コンロでビーフストロガノフ

――小田原にいる頃もよく自炊されて？

天野　はじめての1人暮らしだったんで、はりきって自炊しましたよ。ロフトのあるレオパレスで（笑）。
　一口コンロでしたけれどビーフストロガノフもつくりましたからね。きのこのパイ包み焼きをトースターでつくったり。

――すごい！

天野　おっと、そろそろパスタが茹で上がるかな？　この料理はアルデンテというより、パスタの表示時間どおりしっかり目に茹でたほうがおいしいです。
　ゆで具合をチェックする方法も習ったんですけど、菜箸でパスタを1本とって、箸に自然に巻きつくくらいがちょうどいいって…なんかすでに茹ですぎっぽいかも…（食べてみる）…ン？　ちょうどいいっ！

――ジャストですね、すばらしい！

　湯切りしたパスタを、具と一緒に少し炒めます。フライパンをあおる姿が堂に入っています。
　パスタは塩こしょうで味をととのえ、水で溶いておいたこぶ茶をここで投入。これはいいアイデアです。ざっと和えたらあっという間にできあがり。
　皿にこんもりとパスタを盛り、ツナとたっぷりの大根おろしをトッピング。そこにしょうゆをひとまわし、かいわれと刻みのりを飾ったら…。

天野　はい、思い出のツナおろしパスタ、完成ですっ！

一同　わぁー！（拍手）

――これはおいしそう！　飾り付けも完ぺきで、なんだかモテそうなレシピですね。

天野　モテたいです！　アハハ！
　冗談はさておき、これはあっさりしてるので、食欲のないときでも食べられておすすめですよ。

マネージャーさん　彩りがきれいで、いつもより仕上がりがおしゃれですね。

天野　ね？　カフェにありそうな。
　マッシュルーム缶の代わりにしめじを入れたり、なきゃいけないのはツナと大根おろしぐらいですね。ツナもノンオイルとか油少なめのとかありますけれど、このレシピは普通のタイプがいいですね。
（一口食べて）うまい！　ちょっとパスタを茹ですぎちゃったけど（笑）、これは今でもしょっちゅうつくりますから、味は間違いないです。パスタは表示より1分くらい短く茹でるくらいがいいかもしれないです。

（次回へつづく）

インタビュー＝深澤真紀（タクト・プランニング）
テキスト＝橋中佐和（タクト・プランニング）
写真＝下村しのぶ