コラム    
中田徹
スポーツナビ

川島がサポーターの選ぶ「リールス年間最優秀選手」に
苦しいシーズンの最後につかんだEL出場の挑戦権

2011年5月1日(日)

■苦しい戦いの中で果たした1部残留

セルクル戦は出場機会のなかった川島(中央)。試合前には「リールス年間最優秀選手」の表彰を受けた
セルクル戦は出場機会のなかった川島(中央)。試合前には「リールス年間最優秀選手」の表彰を受けた【写真:Image Globe/アフロ】

 4月30日に行われたリールス対セルクル・ブルージュのキックオフ前、川島永嗣が「リールス年間最優秀選手」の表彰を受けた。これはリールスのサポーターが選んだものだ。「全然予想していなかったんで、びっくりしました。スタジアムに来るまで聞いていなかったです」と、突然の表彰に川島も驚いていた。

 これまで何度も書いてきたが、チームにとっても川島個人にとっても、実に苦しいシーズンだった。当初、サミー会長が掲げていた目標は6位以内に入って「プレーオフ1」に参加すること。しかし、昨年7月31日に行われた開幕戦はSTVVに0−1と敗れ、早々につまずいた。
 内容もスコア以上の完敗だった。STVVは2シーズン前まではリールスと同じく2部リーグで戦っていたチームだけに、リールスにとっては1部リーグでの“現在地”を測る物差し的な存在だったが、全くいいところなく敗れてしまったのだ。

 さらにリールスは負け続け、第2節のスタンダール戦で1−4、第5節のゲンク戦では1−4と大敗を喫した。第6節のゲント戦でようやく引き分け、初勝利は第9節のシャルルロワ戦まで待たねばならなかった。この時、リールスの成績は1勝2分け6敗という悲惨なものだった。

 11月27日には、リールスはスタンダールに0−7という完敗を喫した。スコアだけ見れば、川島の責任も免れないような惨敗だった。しかし、そこはサッカーをしっかり見る文化のあるベルギー。むしろ川島は“0−10”の危機から救ったとして、“採点6”の評価をメディアから受けたのである。
 12月18日のリールス対ゲンク戦は、スペクタクルな内容で1−1の引き分けだったが、まさに「川島対クルトワ」とも言える両チームのGKの競演だった。翌節のアンデルレヒト戦では0−6というまたしてもサッカーのスコアとは思えぬ大敗を喫したが、このころにはチームが不安定でも、川島に対する評価は常に安定していた。

 年が明けると、リールスは今季3人目の監督となるソリエドを招いた。2月に入ってから明らかにサッカーの質が向上したリールスは、ラスト7試合を1勝5分け1敗と粘りを見せ、最終節でとうとう15位から14位へ浮上。ミラクルとも呼べる1部残留を決めたのだ。

 ソリエドが来るまで、毎試合数え切れないほどのシュートを浴びていた川島だったが、今年になると守備陣が安定したおかげで決定機を防ぐ機会が減っていた。こうしたオーガニゼーションの中で、しっかり役割を果たすことも好GKの条件である。こうした苦難のシーズンを過ごした川島だが、年間最優秀選手に選ばれたことによって報われた。

「これだけいろいろ苦しんできた中で、こうやってサポーターに選んでもらえたっていうのは自分にとってうれしいこと。自分自身も、苦しい中でもサポーターのためにプレーしたいという気持ちで1年間やってきた。逆にサポーターから選んでもらって、本当に自分としてはうれしいですね」

■ELの出場権を得るというのは1つの目標

 今、リールスはプレーオフ2グループAを戦っている。4月30日のセルクル戦、川島はベンチ入りメンバーに入ったものの、出場機会はなかった。メンバー表を見ると、ズラリとレギュラー・準レギュラー級選手が控えになっている。
「今日は試合に出なかったですけど、監督もプレーオフに入ってから、選手全員にチャンスをあげたいみたいに言っていた。それで、今日は出ませんでした」

 危ない時間帯もあったが、それでも90分を通じてみれば、リールスの勝ちゲーム。チームは3−0で快勝したが、伸び伸びとしたプレー内容が印象的だった。
「残留が決まっている分、安心感がある中でやっている。ベンチはベンチで盛り上がっていました」

 これでリールスはメヘレンとのアウエーゲームを残して首位に浮上した。このままいけば、グループBの首位と「プレーオフ2」の決勝戦を戦い、勝てばさらに「プレーオフ1」の4位チームと来季のヨーロッパリーグ(EL)出場権を懸けて戦うことになる。つまり、16チーム中、下から3位のリールスにもEL出場の挑戦権が生まれたのだ。

「ELの出場権を得るというのは1つの目標だと思うし、自分がこのチームに移籍してきた時の目標でもあった。そういった意味では、今シーズンに関してはそういう目標をもってやっていければいいなと思ってます」

 川島は常々、「日本人GKとして初の欧州カップ戦出場にチャレンジしたい」と言い続けている。イングランドのクラブからの引き合いもある川島だが(これはクラブ関係者もはっきりと認めている)、もしリールスがELに出場した場合、残留の可能性も大きくなるのか?

「来季、自分がここに残るかどうかというのはまた別の話。ただ今は、自分がこのチームでプレーしている以上、そこの目標に対しては常に追求していきたと思っています。来年は来年で、また別に考えていければいいかなと思います」

<了>

中田徹

1966年生まれ。転勤族だったため、住む先々の土地でサッカーを楽しむことが基本姿勢。メキシコW杯を23試合観戦したことでサッカー観を養い、市井(しせい)の立場から“日常の中のサッカー”を語り続けている。2002年、06年、10年ワールドカップ、ユーロ2004、08をはじめ、オランダリーグのコラムなどをリポートしている

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