食の安全が唱えられるようになり、農業はその技術体系を根幹から見直さなければいけない時期に入ったといえます。
EMの開発者である比嘉照夫教授は、理想的な農業を次のように表現しています。
「安定でかつ健康の維持増進に積極的な役割をもつ食べ物の生産であり、生産者、消費者ともどもに経済的、精神的なメリットがあることであり、さらには、環境を積極的に保全し、永続性があり、自己完結的かつ自己増殖的で、人口増大に対する食の責任を負えること・・・」
EM技術は、20年以上に渡るこれまでの使用実績から、これらの理想を実現しうる可能性があることが確認されてきました。
「食の安全」は、作物が健康に育つことが前提条件であり、人間の観点ではなく、作物にとって健全な栽培環境が整えられることが、出発点になります。
EMは、作物栽培のもっとも基本となる土壌の生態系を豊かにし、土壌エネルギーを植物が利用しやすい形に変えていくことができます。
EMの活用で植物にとって理想的な栽培環境が整えられたとき、植物が本来持つ能力を引き出すことが可能です。
微生物相を根底とする土壌生物性の改善による物理性・化学性の改善のために、EMで発酵処理した有機物の施用がポイントとなる。その際、EMを活用してあらゆる有機資源を利用することにより、ローコストで持続可能な資源循環型農業が可能となります。
※下記の施用方法は、あくまで目安です。作物や作型、その他状況により施用方法は異なりますので個別の計画が必要となります。
【1】有機資源有効利用による土壌生物性改善・根圏発達・病害虫抑制・経費削減効果のシステムが中南米に普及したケース : 廃棄バナナ資源化プロジェクト (アース大学)
出展:「バナナプランテーションにおける廃棄バナナを利用したボカシ肥の生産
及びその多角的評価」(Prof.Masaki Shitani; Earth University)
“Macrofauna Biodiversity in the soil of Organic and Conventional
Banana Plantations in Costa Rica”
(fabian Castillo, Lenin Vera, Masaki Shitani; Earth University)
南米では、1997年よりコスタリカのアース大学 (Earth University) を中心にEMの普及が開始された。同大学で学んだ約20ヶ国の学生が、中南米を中心に母国で農業・畜産などにおいてEM技術の普及を展開している。
廃棄バナナ資源化プロジェクトにおいては、バナナ収穫残渣をEMにより発酵肥料として再利用することにより、作成期間の大幅短縮 (約1/5以下)、有機物の品質改善 (以上表1参照)、有害線虫 (Radopholus sp.,Meloidogye sp.,Pratylencechus sp.) の抑制 (表2参照) と相関性のある健全根量の増加、土壌の改善効果、ブラックシトガ病の抑制の可能性の示唆等の効果が得られ、有機栽培化を実現した。
アース大学での廃棄バナナ資源化プロジェクトにおいてバナナの有機栽培を実現化した本システムは、アース大学の研修生や卒業生会のネットワークにより、 中南米各国にも普及展開した。ドールやチキータといった大手企業にも採用され、コスタリカ、エクアドル、コロンビアなどの国々においてボカシ肥製造所が稼 動するに至っている。
アース大学所有の約300haのバナナのプランテーション農場 | スタンダードフルーツ社 (ドール) のサラピキ農場にあるボカシ製造所。 ここでは、毎週100tのボカシを廃棄バナナから製造している。EM導入後、悪臭・ハエが激減した。 | 廃棄バナナボカシを利用して収穫した有機バナナ。形状・品質とも慣行農法に劣らない。 |
ボカシ | 慣行堆肥 (コンポスト) | |
目的 |
土に栄養 |
植物に栄養 |
製造時間 |
14〜30日 |
90〜180日 |
微生物活性 |
高い |
低い |
有機物態窒素(%) |
38.4 |
12.5 |
有機物(%) |
64.1 |
21.6 |
C/N |
32.3 |
6.7 |
エネルギー |
高い |
高い |
窒素/燐酸/カリ |
1.6/0.2/2.85 |
2.04/0.21/1.17 |
コスト | $0.7/袋・50kg | $6/袋・50kg |