ECCJ Home | Q&A目次 | 電気管理 Q&A | 前号 | 次号


避雷設備の保守と新JIS規格について




 夏の雷の季節が近づきましたので,避雷針等を点検整備したいのですが,その要点を説明してくだ
   さい。
 JIS規格A 4201:1992(旧規格)では,避雷設備は,年1回以上検査を行って規定に適合した状態であ
   ることを確認するように次の3項目が定められています。
   (1)接地抵抗の測定を行い,総合接地抵抗が10Ω以下であることを確認する。ただし,鉄筋コンク
    リート造等の建築物で鉄骨などを利用した構造体接地を採用している場合は,接地抵抗の測定
    はおこなわなくてもよいことになっている。
   (2)突針・むね上げ導体などの受雷部と避雷導線との各接続部の検査を行い,雷撃電流が支障な
    く流れることを確認する。
   (3)地上部の引き下げ導線に断線・溶融その他の損傷が無いことを確認する。接地抵抗は,季節
    変動があり,経年劣化のおそれもありますので,接地極を埋設している場合は必ず測定をして
    下さい。なお,JIS規格A 4201:2003(新規格)では,同様の趣旨で,保守に関して信頼性を保つた
    めに定期的な検査を行うことが基本的条件であると規定されています。
 避雷針について新しいJIS規格に改正されたと聞きましたが,旧規格との相違点を説明して下さ
   い。
 新しいJIS規格A 4201:2003は,名称が従来の「建築物等の避雷設備(避雷針)」から「建築物等の
   雷保護」と変わり内容も大幅に変更されています。新規格では,建築物等を落雷から保護するた
   めの外部雷保護システムと建物の内部に設置したIT機器を落雷時の過電圧から守るための内部
   雷保護システムで構成されています。外部雷保護システムの主な改正点は,次の通りです。
   避雷針の保護範囲については,雷現象の研究成果等に基づいて制定された国際規格IEC 61024-1
   に整合した規定に改正され,従来の保護角法のほかに回転球体法とメッシュ法が規定されていま
   す。また,保護レベルの考えが採り入れられ,4段階に分け保護レベルI〜IVとし,各レベルでの
   保護効率を明確にしています(表-1参照)。なお,各レベルに応じた受雷部の配置については表-2
   のように規定されています。

表1 保護レベルごとの保護効率
表1 保護レベルごとの保護効率
表-2 JIS A 4201に示す保護レベルに応じた受雷部の配置
表-2 JIS A 4201に示す保護レベルに応じた受雷部の配置














 新規格で規定された受雷部の保護範囲の決め方について説明してください。
 保護角法では,従来の規格に比べて保護角が小さくなり,かつ高さが60mを超過した場合は保護
   角法は採用できないことになっています。保護角法の適用方法は,図-1の通りで,保護レベルIV
   の場合は,図-2のような保護角となります。回転球体法を適用した場合の保護範囲は,図-3
   通りです。なお,高さが60mを超過する建物等では,回転球体法とメッシュ法を併用することになり,
   メッシュ法を適用する建物等は,超高層ビルや放送タワーなどに限られます。60m以下の建物にメ
   ッシュ法を適用した例は,皆無と言えますので説明は省略します。

図-1 保護角法
図-1 保護角法
図-2 保護レベルIVの場合の突針高さと保護角
図-2 保護レベルIVの場合の突針高さと保護角

図-3 回転球体法
図-3 回転球体法

 今回のJIS改正と関連法規の適用について説明してください。
 建築基準法関連と火薬類取締法関連の適用対象となる建物等については,関連の省令,告示等
   が改正されていないので,旧JISによることになります。消防法関連の建物・設備については,消防
   庁より新JISを適用するとの指示が出ており,危険物製造所・貯蔵所などには新JISが適用されま
   す。

眞鍋技術士事務所・眞鍋 静夫

<参考文献>
  1) JIS A 4201(2003)及びJIS A 4201(1992)
  2) 「電設技術」誌平成16年4月号特集「雷と電気設備」
 


ECCJ Home | Q&A目次 | 電気管理 Q&A | 前号 | 次号 [ TOP ]

Copyright(C) ECCJ 1996-2010