現在位置:
  1. asahi.com
  2. ニュース
  3. 社会
  4. その他・話題
  5. 記事

カネになる…中国人と組む暴力団――第7部〈犯罪底流〉(1/2ページ)

2009年10月18日7時18分

印刷印刷用画面を開く

このエントリをはてなブックマークに追加 Yahoo!ブックマークに登録 このエントリをdel.icio.usに登録 このエントリをlivedoorクリップに登録 このエントリをBuzzurlに登録

写真:繁華街で雑談する暴力団組員(左)とドラゴンの相談役的存在である中国出身の男性。街の景気や警察の取り締まりについて話していた=8月、東京都内、緒方写す繁華街で雑談する暴力団組員(左)とドラゴンの相談役的存在である中国出身の男性。街の景気や警察の取り締まりについて話していた=8月、東京都内、緒方写す

 殺される、と男(36)は観念した。ある年の秋、午前0時すぎ、閉店間際の東京郊外のエステ店に20人ほどがなだれ込んできた。全員が黒いコートを羽織り、刃渡り約30センチの抜き身を構えている。

 男は地元の暴力団の組員だ。店から毎月数万円を受け取る見返りに、もめ事から守っている。この日は当番で店に詰めていた。

 集団の頭目らしき男が叫んだ。中国語のようだが意味はわからない。男の組が守る別の店で数日前、酔って暴れる中国人をたたき出した。その報復だと思った。

 「あなた、なに」。頭目がぎこちない日本語で問う。「やくざだ。これでお前らを殺す」。丸腰だった男は、そばにあったボールペンを握り締めて答えた。しばらくにらみ合った後、頭目が表情を緩めた。「あなた心が強い。友達になるか」と言い、何もせずに引き揚げた。後に集団の一部が近県で逮捕された。中国・福建省から密入国し、日本各地で強盗を繰り返していたという。

 この街の盛り場は長く男の組が仕切ってきた。傘下の店が中国人に襲われたことはない。「脅威にならぬ」と軽んじてきた中国人との関係が変わるかも知れない。そんな男の予感と頭目の去り際の呼び掛けが、乱入から数年を経て各地で現実になりつつある。

 都内に住む中国人のケン(25)は中国残留日本人孤児の孫だ。9歳のとき、中国・東北部から家族らと来日した。中学を出て残留孤児の子らでつくる地元の暴走族「ドラゴン」に入り、いまは中堅幹部だ。定職はない。

 「山口組や住吉会、稲川会、工藤会などの暴力団に知り合いがいる。彼らとは頼り、頼られる関係」と話す。バイクで暴走中、組員ともめたのがきっかけで、暴力団との交際が始まった。組加入の誘いは断るが、振り込め詐欺や偽装結婚は一緒にやる。「犯罪をしないとカネがもうからないからです」。動機は単純だ。

前ページ

  1. 1
  2. 2

次ページ

PR情報
検索フォーム
キーワード:


朝日新聞購読のご案内