東京新聞のニュースサイトです。ナビゲーションリンクをとばして、ページの本文へ移動します。

トップ > 暮らし・健康 > 暮らし一覧 > 記事

ここから本文

【暮らし】

初期費用の回収 難しく ドロップシッピングの相談急増

2009年11月19日

写真

 個人が仲介業者などと契約し、インターネット上に開いた店舗で商品を販売する「ドロップシッピング(DS)」と呼ばれるネット商法をめぐるトラブルが増えている。「必ずもうかると言われたのに売り上げがなかった」と高額な契約金の返還を求める初の集団訴訟が大阪地裁に起こされ、名古屋市でも近く、集団提訴が予定されている。 (境田未緒)

 愛知県豊田市の男性は六月、インターネットで東京都のDSサービス提供業者に資料を請求。業者から電話で「三カ月で元が取れる」と誘われ、九十二万円を支払ってネットショップを開いた。注文は入ったものの、取り扱いリストにあった商品は在庫切ればかり。売り上げは三カ月で三千円しかなかった。

 DSは、自分のホームページ(HP)やブログのサイト上で商品を販売。注文が入ると、仲介業者やメーカーから注文者に商品が直送される。在庫を持たずにショップが開けるため、ネット副業の一つとして注目を集めている。

 だが高額な初期費用をめぐるトラブルも急増。愛知県弁護士会とNPO法人あいち消費者被害防止ネットワークが十月に開設したDS被害一一〇番には、十七件の相談が寄せられた。

 「月三十万円は稼げる」などと高収入を約束されたのに、注文が入らないといったケースがほとんど。自腹でネット広告を出すなど努力して注文を受けても、半数以上が在庫切れだったという人も。仲介業者に苦情を言うと、当初の約束と違う高額の卸値を提示する業者もあった。

 相談者が支払った初期費用は三十五万〜三百五十万円。高額な人は、HP作成や集客対策の名目で費用が上乗せされていた。相談を受けた牧野一樹弁護士は「ほとんどの人が売り上げゼロ。失業者や家計を支えたい主婦などまじめな人が被害に遭っている」と語る。牧野弁護士らは、ドロップシッピング被害名古屋弁護団(荻原典子団長)を結成。近く初期費用の返還を求め集団提訴する。

 国民生活センターによると近年、ネット副業の相談が急増。自分のサイトに商品広告を出して収入を得るアフィリエイトとDSを合わせ、昨年度は全国の消費生活センターなどに三百七十九件の苦情や相談があった。本年度は九月末までに三百五十六件と昨年度同期の三・六倍。DSとアフィリエイトの相談が半々だった昨年度と異なり、ほとんどDSで占められている。

 DSは、チラシ配りやデータ入力などの内職と同じ「業務提供誘引販売取引」に当たる可能性がある。業者の多くがクーリングオフに応じておらず、同センターは「仲介業者が用意した商品広告を掲載するだけで簡単にもうかることはあり得ない」と忠告。「高額な初期費用が必要と言われた場合、なぜその費用が必要か、本当に費用を回収できるか慎重に考えて」と助言する。

 <ドロップシッピング> 日本語で「直送」を意味する電子商取引。HPやブログに開設したショップで閲覧者が商品を購入すると、仲介業者やメーカーが商品の発送を代行する。ショップ開設者は、仲介業者が提供する家電、化粧品、食品などのリストから売りたい商品を選んで販売価格を決め、HPなどに掲載するのが一般的。業者の卸価格と販売価格の差額が利益になる。無料でショップの開設やブログ作成方法の提供などをしている仲介業者もある。

 

この記事を印刷する