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オープンソース

[米国]
マイクロソフト、オープンソース支援のための財団「CodePlex Foundation」を設立

企業のオープンソース・プロジェクト参加における法的問題解決などを支援

(2009年09月11日)

 米国Microsoftは9月10日、オープンソース・プロジェクトを支援する新財団「CodePlex Foundation」を、同社の出資で設立した。オープンソース・ソフトウェア企業とプロプライエタリ・ソフトウェア企業による協力促進などを目指す。

CodePlex Foundationの暫定総裁を務めるサム・ラムジ(Sam Ramji)氏。Microsoftでオープンソースに関する取り組みを統括してきた

 CodePlex FoundationのWebサイトによると、同財団は、「既存のオープンソース関連の財団や団体を補完し、ソフトウェア会社とオープンソース・コミュニティの両方を含む幅広い参加者が、ベスト・プラクティスや共通理解を確立できる場を提供する」という。

 これまで「CodePlex」は、Microsoftが運営するオープンソース・プロジェクトのホスティング・サイトの名称として使われてきた。今回、Microsoftは新財団に100万ドルを寄付するとともに、「CodePlex」の名前を譲渡しており、新財団は同サイトがこれまでどおりの名称で存続できるように、この名前を同サイトにライセンスする。

 CodePlex Foundationは非営利団体であり、サム・ラムジ(Sam Ramji)氏が暫定総裁を務める。同氏は現在、Microsoftのプラットフォーム戦略担当シニア・ディレクターであり、同社のオープンソースに関する取り組みを統括している。ラムジ氏は9月10日に行われた記者会見で、9月25日付けでMicrosoftを退社し、クラウドコンピューティングを手がけるシリコンバレーの新興企業に転職することを認めた。ただし、今後100日間はCodePlex Foundationにとどまることになっている。

 会見の中でラムジ氏は、新財団の指命は商用ソフトウェア会社によるオープンソース・プロジェクトへの参加を促進することであると述べた。現状では、こうした企業に所属する開発者の参加はもの足りない水準にとどまっているという。

 「成熟が進む技術と、進化を続けるビジネス・モデルを統合する動きが起きている。ソフトウェア業界は転換期を迎えており、多くのソフトウェア会社がオープンソース・コミュニティとの協力のあり方を模索するようになるだろう。われわれは、変革を推進する大きなチャンスだと考えている」(ラムジ氏)

 またラムジ氏は、「既存のオープンソース団体との新財団の違いは何か」という質問に対し、ほとんどの団体は特定のプロジェクトの推進に力を入れているが、新財団は商用ソフトウェア会社の特許技術やそのほかの関心事などを踏まえて、こうしたオープンソース・プロジェクトの活動を補完していくものだと説明している。

 ラムジ氏を支える暫定理事会のメンバーは、Microsoftのビル・ステープルズ(Bill Staples)氏、ステファニー・ボーシュ(Stephanie Boesch)氏、ブリット・ジョンソン(Britt Johnson)氏と、GNOMEやMonoといったオープンソース・プロジェクトの主導者として知られる米国Novellのミゲル・デ・イカザ(Miguel de Icaza)氏、さらにオープンソースCMSを開発する米国DotNetNukeの共同創設者ショーン・ウォーカー(Shaun Walker)氏だ。

 ラムジ氏と暫定理事会は、財団の日常業務を管理する上級理事のほか、常任理事会、諮問機関のメンバーの人選に当たる。現在、新財団の常任幹部は、米国O'Reillyと米国VA Linux(現SourceForge)に以前在籍していた副理事のマーク・ストーン(Mark Stone)氏しかいない。ストーン氏は常任理事に関して、「有名で人望のあるオープンソース・コミュニティ・メンバーが就くことになるだろう」と語っている。

Microsoftからの独立性を確保することが肝要

 米国RedMonkのアナリスト、スティーブン・オグレディ(Stephen O'Grady)氏は、「CodePlex Foundationが開発者からの支持を得るためには、Microsoftからの独立性を保つことが肝心だ」と指摘している。同氏は先例として、IBMの後押しによりスタートしたオープンソース団体Eclipse Foundationの名前を挙げた。Eclipse FoundationはIBMから継続的な支援を受けつつも、運営に関しては厳しい干渉を受けることなく、独立性を保っている。

 「CodePlex FoundationがMicrosoftとは独立した、独自のアイデンティティをいつ、どのようにして確立していくのかが見ものだ」(オグレーディ氏)

 また、ラムジ氏が説明したCodePlex Foundationの役割については、「商用ソフトウェア会社が、自社の開発者にオープンソース・プロジェクトへのコード寄贈を許可しようとすると、法的責任の関係で複雑な問題が絡む。そのため、こうした問題を企業がクリアする手助けを行うというのは有意義なことだ」と評価している。

 ただしオグレーディ氏は、ほかのオープンソース財団は、オープンソースと企業活動の間の利害バランスはうまく調整されていると主張するだろうと付け加えた。「そうしたバランスの確保が、本当にCodePlex Foundationの差別化要素になるのかどうか。現時点では不明だ」(同氏)。

 かつてのMicrosoftは、オープンソース・コミュニティと険悪な関係にあった。だが、ここ数年はラムジ氏が率いるプラットフォーム戦略グループが、オープンソース企業との連携に取り組んできた。

 ラムジ氏は10日、Microsoftは今後もオープンソースへのコミットメントを継続し、プラットフォーム戦略グループは同氏の退社後も活動を続けると語った。同社は同氏の後任を探しているという。またMicrosoftは、現在取り組んでいるApacheとの共同作業など、さまざまなオープンソース・プロジェクトを、資金とコードの寄贈によって引き続き支援していくとしている。

 しかしMicrosoftはこうした活動の一方で、Linuxなどオープンソース・ソフトウェアに含まれる技術について自社の特許を主張し、オープンソース企業に法的な圧力をかける態度もとり続けている。

(Elizabeth Montalbano/IDG News Serviceニューヨーク支局)




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