企業経営に関するトピック解説

2004.10
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株式制度の改正と実務

ここ数年の間の商法改正はめざましく、株式関連の商法改正も平成13年に始まり、実務的に注目すべき改正がなされています。本稿では、株券失効制度と所在不明株主の株式売却制度の創設、および株券不発行制度の改正についてとりあげ、図表を交えてわかりやすく解説しています。


I.はじめに

ここ数年の商法改正にはめざましいものがあり、株式関係についても実務的に注目すべき改正がなされています。本稿では、平成14年の改正による株券失効制度と所在不明株主の株式売却制度の創設、および平成16年の改正による株券不発行制度の導入について取り上げました。

(1)株券失効制度

従来、株券を紛失や盗難などにより喪失した者は、公示催告を申し立て、除権判決を受けた後で新株券の発行を請求していました。しかし、公示催告期間中(最低6ヶ月)に善意の第三者によって株券が取得されると、善意取得者が保護され、株券喪失者の負担した費用が無駄になってしまいました。また、株式を取得しようとする者にとっても、公示催告や除権判決の有無をいちいち確認してから取引を行うことは事実上困難であり、取得した株券が除権判決後に無効とされれば権利者となることはできない等の問題点がありました。

このため株券失効手続を株券の発行会社主体で行うこととし、株券喪失者は、会社に対し株券喪失登録の申請をし、申請後1年間経過後に当該株券を無効にすることとなりました。

(2)所在不明株主の株式売却制度

所在不明株主に対しては、会社の通知等が5年間継続して不到達の場合には、通知をしなくともよいことになっていますが、その株主の配当請求権や議決権は残っているため、株主としての管理は省略できませんでした。平成14年の改正では、株主管理コストの削減を図るため、所在不明株主の有する株式を売却または自己株式として買い受けることができるようになりました。

(3)株券不発行制度

「株式等の取引に係る決済の合理化を図るための社債等の振替に関する法律等の一部を改正する法律案」が平成16年6月2日に国会で成立し、6月9日に公布されました。

このうち「社債等の振替に関する法律」の改正は、この法律体系のなかに株式等も含め、株式等の取引に係る決済の合理化を図ることであり、コマーシャル・ペーパー(CP)、一般社債・国債と続いた有価証券のペーパーレス化を、株式についても可能とするための証券決済制度改革の仕上げと位置付けられるものであり、「社債、株式等の振替に関する法律」と名称が変更されます。「商法」改正の内容は株券不発行を中心とするものです。

この株券不発行制度は、株式公開会社か否かを問わず、すべての株式会社が定款の定めで株券を発行しないことを認める制度ですが、公開会社と非公開会社とでは、その導入目的は大きく異なります。公開会社における導入目的は、株式の取引決済システムの一層の高度化であり、株券の存在を前提とする現行の保管振替制度に代わり、株券が廃止される結果、社債振替制度と類似した新たな株式等の流通制度として「株式振替制度」によることになります。また、公開会社では、ある時点で一斉にその新振替制度を採用することを義務付けられます(この結果、保管振替制度は廃止される予定です)。

それに対し非公開会社では、定款で定めることで株券不発行制度を導入できるものであり、各会社に、有限会社の持分移転と類似した株式移転の方法も認めるというにとどまります。ただ、今回の商法改正において、株券不発行制度を選択しない会社においても、従来とは取扱いが変更されます。すなわち、株式譲渡制限会社では、株式の「原則発行」から「原則発行しない」に変更されますし、株券不所持制度も存続するものの、株主から預かった株券を金融機関に預託するという寄託制度は廃止されます。

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