経済

文字サイズ変更
ブックマーク
Yahoo!ブックマークに登録
はてなブックマークに登録
Buzzurlブックマークに登録
livedoor Clipに登録
この記事を印刷

G20:「2400万人雇用」消える 新興国異議で削除

 【ロンドン斉藤信宏】「数時間前まで盛り込まれていた数字が消えた」--。2日閉幕した主要20カ国・地域(G20)による第2回金融サミット(緊急首脳会議)は、閉幕間際の総括討議で、首脳宣言案の「目玉」として、原案段階で盛り込まれていた雇用目標が消えるという異例の展開となった。

 宣言案から消えたのは、各国による財政拡大目標として掲げられた「09年に1900万人、10年に500万人(計2400万人)の雇用を維持・創出する」との文言。

 「この数字はどう算出したのか」。2日午後の討議で、ある新興国首脳が雇用創出目標の根拠を問いただしたことが、数字見直しのきっかけとなった。先進各国の外務官僚は慌てて資料をめくったが、誰も明確な積算根拠を示せず、議論はしばらく中断。複数の新興国首脳から「根拠のはっきりしない数字を載せるのはいかがなものか」と注文がつき、結局「何百万人もの雇用を維持・創出する」と、数字を省いた表現に落ち着くことになった。

 宣言発表のわずか1時間前には日本外務省の幹部が「09年は1900万人」と記者団に説明したばかり。発表後の記者会見では「非常に珍しいケース」と、外務省幹部らも驚きを隠さなかった。主要国首脳会議(G8サミット)や先進7カ国財務相・中央銀行総裁会議(G7)など参加国の少ない会議では事務レベルでの事前調整が徹底していることもあり、議論が紛糾したとき以外、閉幕間際でのこうした変更はほとんど見られない。

 「参加国が多いといろいろなことが起こる」(外交交渉筋)というが、まさにG20ならではのハプニング。異議申し立ての背景には、日米欧が公的支援で製造業の雇用創出に取り組んだ場合、人件費の安さという新興国の優位性が損なわれるとの懸念がある。先進国主導での首脳会議運営を変えたいとの思惑もあるとみられ、多極化する国際社会を象徴する出来事と言えそうだ。

毎日新聞 2009年4月3日 11時21分(最終更新 4月3日 13時02分)

検索:

経済 アーカイブ一覧

 

ピックアップ



特集企画

おすすめ情報