FERC Logo
FERC Logo

Research Report No.087

どうすればもっと身長を伸ばすことができるのか?
hr
2003/01/19 報告 報告者:山名 研一 、大山 寛平、中野 麗、桜井 良江、松本 京子


現在、日本人の20歳の平均身長は、男性が170.4センチ、女性が158.2センチ。FERC社が行ったアンケート調査では、全体の70%の人が今より身長が高くなりたいと答えており、インターネットセクションにも背を伸ばす方法に関する調査依頼が数多く寄せられている。そこで背を伸ばすための方法のリサーチを試みた。

まず、現在伸び盛りの状態にある子供の身長を伸ばすには方法はあるのだろうか?一般に子供の最終身長は次のような計算によって予測できるとされている。男子の場合は、父親の身長と母親の身長の合計に13を足し、それを2で割ったもの。女子の場合は、父親の身長と母親の身長の合計から13を引き、それを2で割ったものがその子の最終予測身長と言われている。この予測身長だけを見ると、身長はほとんど遺伝で決まってしまうような印象を受ける。しかし、元バレーボール女子日本代表・益子直美さんの両親の身長は、父親が170センチ、母親が164センチ。最終身長の予測式に当てはめると益子さんの身長は160.5センチにしかならないはずだった。だが、益子さんはなんとこの予測身長を14.5センチも上回る175センチにまで成長したのだ。

では、どうすれば最終予測身長を上回ることができるのか?

神戸市立西市民病院で低身長の専門外来を行っている額田成医師によれば、身長は遺伝だけでなく、生まれてからの環境による影響も非常に大きいという。

背を伸ばすポイント1「食事」
額田医師によれば、背が伸びるということは、わかりやすくいうと「骨が伸びる」ことであるという。骨の末端部分には、骨端線と呼ばれる部分がある。この部分は、軟骨細胞が集まってできており、成長ホルモンなどの働きかけによって増殖し、層のように積み重なることによって骨は伸びる。この軟骨細胞の原料となるのは、肉や魚、卵、チーズなどに多く含まれるたんぱく質なのだ。一方、カルシウムは、このたんぱく質から出来た軟骨の層を石灰化し、硬くするためのものである。そして益子さんの食事のデータを見ると、毎日十分なたんぱく質をとっていた。額田医師によれば、益子さんの背が良く伸びたのは、毎日たくさん摂っていたたんぱく質の影響によるところが大きいという。さらに、額田医師がもう1つ指摘するのが、益子さんの食事に含まれていた亜鉛の量である。亜鉛は軟骨細胞の分裂を促す成長ホルモンに関係しており背を伸ばすのに欠かせない物質。亜鉛はピーナッツ、かき牡蠣、レバーなどの他、うなぎの蒲焼、納豆、ゴマなどにも多く含まれているので、背を伸ばすためには、たんぱく質と併せこれらの食品も積極的に摂取していくと良いという。
背を伸ばすポイント2 運動
よくバスケットボールなどのジャンプ系の運動がいいというが、額田医師によれば、実は背を伸ばすのは、ジャンプ系の運動に限らず、体をひねる、そらす、曲げるなど体をまんべんなく動かす全身運動であるという。こういった全身の運動の刺激には、軟骨に栄養を行きわたらせる関節液の循環をよくし、骨を成長しやすくする効果がある。現在、平均的な小学生の外で遊ぶ時間は1日37分にまで落ち込んできているが、益子さんは毎日3時間も外で遊び、運動を十分行っていた。また、運動は、骨に栄養を行きわたらせる他、夜に熟睡を促し、骨の成長に必要な成長ホルモンの分泌を増やす効果もあるという。
背を伸ばすポイント3 睡眠
現在、平均的な子供の睡眠時間は8時間10分。ところが、益子さんは子供の頃、毎日平均10時間から11時間もの睡眠をとっていた。これは普通の子供と比べて2時間以上も長い。軟骨細胞の増殖を促すのが脳下垂体から分泌される成長ホルモンであり、夜、熟睡している時により多く分泌されるという。したがって、夜しっかり寝ている子の方が寝ない子より背は当然伸びやすくなると考えられるのだ。額田医師によれば、背を伸ばすためには小学生に上がるまでは10時間以上、低学年で10時間、高学年・中学生で9時間半程度の睡眠を取るようにしたほうが良いという。
背を伸ばすポイント4 思春期の到来を早めない
人間は10歳から12歳を過ぎると、脳にある下垂体から性腺刺激ホルモンが多量に分泌されるようになる。すると、その影響で精巣や卵巣から性ホルモンが放出され、男子の体には筋肉がつき、女子は胸部や臀部が膨らみはじめ、やがて、精通や初潮が始まる。その後、身長の伸びも止まり、大人の体が完成する。この時期を思春期と呼ぶ。 一般に女子では12歳1ヵ月で初潮が始まり、男子では12歳10ヵ月で精通が始まるといわれているが、益子さんが初潮を迎えたのは平均に比べて2年近くも遅かったという。額田医師によれば、思春期を迎えると、性ホルモンの影響で身長は良く伸びるが、それ以降徐々に停滞していく。これは、性ホルモンに、骨の末端にある軟骨細胞の分裂を止め固めてしまう作用があるためという。したがって額田医師によると、背を伸ばすためには思春期の到来を遅らせて背が伸びる期間を長くすることが効果的と考えられるという。睡眠不足や肥満は、思春期を早める可能性がある。十分な睡眠を取り、運動をし、食べすぎをせずに肥満を回避することによって、思春期の到来を早めず、身長が伸びる期間が長くなれば、最終予測身長よりも背を伸ばすことができると考えられるのだ。

食生活や睡眠、運動など身の回りの環境を整えてやれば、益子さんのように予測身長より高い身長になることも夢ではないのだ。


Exit Next