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細胞分裂 都市の風景

【細胞分裂 都市の風景】

札幌市時計台

2009年01月09日

写真

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■続く成長 縮む歴史

 愛知県の高校を卒業した直後、僕は北海道を旅した。もう30年以上も前のことだ。三浦綾子の小説『塩狩峠』の舞台を訪れようと、札幌に立ち寄ったのだ。

 せっかくだからと観光名所をいくつか回った。その一つに札幌市時計台も入っていたが、僕は時計台の周りをうろうろしながら一人で見つけることができなかった。

 僕の時計台のイメージは写真からで、相当に大きなものだと思い込んでいた。観察力の不足も手伝い、ついに時計台を見つけることができず、通行人を頼ることにした。そして驚いた。聞かれた人は苦笑していた気が今でもする。指さした先は目の前(正確には横)にあった。

 正直、“ちんけ”に思えた。「日本三大がっかり名所」の一つと言われ、妙に納得もいった。

 でも、あの頃の時計台周りは、もっとすっきりしていた気がする。130年前はきっと堂々と街のシンボルだったはずだ。今は相対的にもっと小さくなっている。こうして見ると日本の町づくりは、都市を成長させるほど歴史を軽くしているようだ。

(写真・文 野口隆史)

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