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【土・日曜日に書く】論説副委員長・中静敬一郎 日米同盟と小沢プロブレム

2009.1.31 03:29
このニュースのトピックス米国

 日米両政府の責任者が日米同盟の強化などをうたいあげている。まるでエール交換のようだ。

 ヒラリー・クリントン国務長官は13日の米上院外交委員会の承認公聴会で「日本との同盟関係はアジア太平洋の平和と繁栄維持に不可欠な礎石だ」と述べた。

 麻生太郎首相も28日の施政方針演説で「米国とはオバマ大統領とともに同盟関係をさらに強化します」と語った。

 だが、いずれも同盟関係を具体的にどう強化するかについての言及はほとんどなかった。実質的な中身を詰められないためだ。

 最大の焦点であり、米国が増派を予定しているアフガニスタンには、NATO(北大西洋条約機構)など41カ国が国際治安部隊(ISAF)約5万人を派遣しているが、自衛隊派遣のめどはついていない。日米双方がアフガン対処を避ける理由でもある。

 ≪リスクの共有に弱点≫

 リスクの共有こそ同盟の本質といわれる。だが、日本はリスクとコストを極力担おうとしない。

 アフガンでも自衛隊派遣の前提である「安全区域」を見いだすことは困難だ。武器使用についても国連の標準基準である「任務遂行を妨害する行為を排除する」ことが、政府の憲法解釈により認められていない。憲法第9条で禁止されている「武力行使」と一体化しかねないという理屈だ。国連の警察活動はそれに該当しないのだが、政府は受け入れていない。安全第一主義と非現実な解釈が同盟を空洞化させている。

 この見直しは、政治の機能不全のため進んでいない。

 ≪政治の停滞に危機感≫

 こうした現状に強い危機感を示したのは、今月14日、日本記者クラブでの「サヨナラ」会見に臨んだトーマス・シーファー駐日米国大使だった。「同盟関係を(自民、民主両党という)2つの政党間の政争の具にしてはならない」と警鐘を打ち鳴らし、「政治的な停滞により日本は国際社会で孤立しかねない」と憂慮した。

 状況は一層深刻化の様相を見せている。停滞は拡大しかねない。民主党を中心とした野党連立政権が樹立された場合、日米同盟が変質する可能性があるからだ。

 少し古いが、一昨年11月、当時の福田康夫首相との連立政権樹立が頓挫した際の党内説明で、小沢一郎民主党代表が同盟への見解を示している。

 「国際平和協力に関する自衛隊の海外派遣は、国連安保理もしくは国連総会の決議によって設立、あるいは認められた国連の活動に参加することに限る。したがって、特定の国の軍事作戦についてわが国は支援しない」

 小沢氏はこれを福田氏が確約したと語った。事実関係はいまだに不明だが、小沢氏は「これまでのわが国の無原則な安保政策を根本から転換し、国際平和協力の原則を確立するものであるだけに、私個人はそれだけでも政策協議を開始するに値すると判断した」と述べた。ここに本音がにじむ。

 ただ、詰めるべき点が残っている。台湾有事の場合、中国は拒否権を行使し、国連は機能しない。台湾関係法により米軍が出動したとしても、小沢氏の原則だと自衛隊は協力できなくなる。これでは日米同盟は成り立たない。逆に武力行使を呼び込みかねない。

  一方で小沢氏は昨年10月の衆院代表質問で「米国と対等なパートナーシップを確立し、より強固な日米関係を築く」と述べた。この対等の意味については「米国の言うがままに追随するのでは同盟とはいえません」と語っている。

 ≪反米政権と受け止める≫

 これを裏付けるように、小沢民主党は昨年、在日米軍駐留経費の日本側負担に関する新たな特別協定に反対した。昨夏にまとめた沖縄ビジョンでは、日米地位協定の改定や米軍普天間飛行場の県外・国外移転を主張した。これまでの日米の合意を覆すものだ。

 昨年12月、来日したジョセフ・ナイ元国防次官補などは、民主党幹部が政権を担った場合、給油支援取りやめや地位協定見直しなどに動くと説明したところ、「反米政権と受け止める」と通告した。

 ただ、小沢氏の真意はよくわからない。民主党入りする以前は「日米同盟関係はわが国にとってゆるがせにできない生命線だ」などと言明しているからだ。政権を担えば、豹変(ひょうへん)もあるかもしれない。小沢プロブレムといわれるゆえんだ。政権を競い合う中で麻生太郎首相と小沢氏は日米同盟をどう運営するかを明示すべきだ。

 昨秋実施の政府の外交世論調査で米国に親しみを感じるは73%。多くの日本人が同盟関係をゆるがせにしてはならないと思っている証左だ。かけがえのない日米同盟を機能させることが国益と国民の利益を守ることにつながる。(なかしず・けいいちろう)

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