パンダの食べ物

ここは、パンダの食べ物に関する情報を集めています。
パンダは何を食べてるのでしょうか?


・パンダ家の食卓
・なぜ竹しか食べないの?
・どのくらい食べる?
・竹にはうるさい!
・竹の栄養分
・竹の問題
・「パンダミルク」
・肉も食べる?
・水はがぶ飲み


パンダ家の食卓
 まれに、小動物を食べたりすることもありますが、食べ物の99%は竹や筍です。
 動物園のパンダは、竹の他に、ごはんに卵黄をかけたミルクがゆ、柿、りんご、ふかしイモ、さとうきび、にんじん、パンダだんご(*)なども与えられています。上野動物園のランランとカンカンには、来園当初は、ブドウ、バナナ、モモ、メロン、スイカなども与えられたそうですが、においを嗅ぐだけで食べなかったそうです。(出典:「ジャイアントパンダの飼育」 東京都恩賜上野動物園編)
  
  ※パンダだんごとは
    パンダために開発された蒸かしだんご。上野動物園のリンリンは朝夕1個食べているとのこと。
      <材料(2個分 250g x 2個)>
       ・とうもろこし粉 200g
       ・脱脂大豆粉  100g
       ・きび砂糖    15g
       ・パンダミルク  50g

           (パンダは、他の哺乳動物に比べて乳汁に乳糖の含有量が少ないので、人工哺育や健康管理のために上野動物園が開発した人工乳。)
       ・水        200cc

      出典:上野動物園パンダだんご解説書





なぜ竹しか食べないの?
 パンダは、消化器官からその昔は肉食だったと推測されています。それが何故竹ばかりを食べるようになったのでしょうか?パンダの生息地にはたくさんの竹が生育しており、しかも冬場にも枯れることはありません(開花のときを除く)。他の動物の肉を食べるために野山を駆け回ってエネルギーを消費したり、冬場に獲物がなくて飢えに苦しむよりも、パンダは年中入手に苦労しない竹を食べる生活を選択し、竹を食べるように進化していったのではないか、と考えられています。
 しかし、竹以外全く食べないわけではなく、まれに死んだ動物の肉を食べることもあります。野生のパンダの観察方法のところでも記述していますが、入手できさえすればむしろ好んで食べるのではないかとも思われます。では、野生のパンダはたまには他の動物を襲ってその肉を食べたりするのでしょうか?
 潘文石著「呼喊春天 熊猫虎子与我に、保護された野生のパンダ「虎子」(かなり飢えた状態)の目の前に生きたヤギを放ったらどうなるか、という興味深い記述がありました。虎子は必死で追いかけますが、すばしこいヤギに全く追いつくことができませんでした。ヤギを転ばせた状態で与えると、虎子はヤギの上にのしかかったものの、お尻に噛み付いてばかりで、一般の肉食動物のように喉に噛み付いて仕留めるようなことはできませんでした。遠い昔、肉食生活をしていた頃の習慣が残ってはいるものの、進化の過程で狩猟能力は既に失われていると思われます。




どれくらい食べる?
 大人は、一日に15〜25kgもの竹(4,000〜5,000カロリー)を食べます。これは、パンダの消化器官は肉食動物のそれに近いので、栄養分を20%〜30%しか消化できず、大量に食べる必要があるからです。
 野生のパンダは、冷箭竹の場合、一頭あたり年間17万4,000本の若竹と29万2,000本の成竹、合計46万6,000本を必要としています。パンダ一頭で1kuあたりに生える冷箭竹の0.74%を毎年食べていることになります。竹の自然増加率から考えると、1kuあたり2〜3頭が暮らしていても竹の生育に影響は与えません。




竹にはうるさい!
 中国は四川省のパンダの生息地には、約25種類の竹がありますが、中でも華桔竹、冷箭竹、傘竹、金竹を好んで食べます。華桔竹は茎の高さは平均2.5m、茎の根元の直径は平均8.6mm。冷箭竹は、高さ平均1.4m、直径平均5mmと小ぶりです。
 春は筍を好んで食べ、その他の季節は葉と茎をバリバリ食べます。野生のパンダは、華桔竹の場合、冬は葉を食べ、5月と6月は竹の茎だけを食べます。冷箭竹の場合、11月〜3月には茎も葉も食べ、4月から6月まではほとんど茎だけ食べ、7月から10月まではほとんど葉だけを食べます。
 上野動物園のランランとカンカンには、栃木県の孟宗竹が与えられていました。この他、日本に成育している竹では、ヤダケ、マダケ、ナリヒラダケがパンダに好まれるようです。(出典:「ジャイアントパンダの飼育」 東京都恩賜上野動物園編)




竹の栄養分
(1)パンダエネルギー
 
大人のパンダは1日平均4,200カロリーを必要としていると言われています。そのほとんどを竹から吸収するわけですが、パンダは竹からどのように栄養を吸収しているのでしょうか?パンダの糞を分析し、口に入る前の栄養分の減少度合いを検証することで、さまざまなことが分かっています。
 竹には、たんぱく質、アミノ酸、脂肪、可溶性糖、鉱物質元素などの栄養が含まれています。パンダは、たんぱく質は1日95gとれば十分なのですが、560gを吸収しています。この余分なたんぱく質は、エネルギーに変えられています(2,408カロリー)。しかし、この2,408カロリーに脂肪、可溶性糖のエネルギーを加えても、合計で2,700カロリーとなり、1,500カロリーが不足してしまいます。その謎を解くカギは竹の化学成分にあります。
 竹は、リグニン、セルロース、半セルロースの化学成分から成っていますが、半セルロースだけが口に入る前に比べて35%少なくなることがわかっています。半セルロースは、多糖類の一種であり、1gを4カロリーに変換することができます。パンダは竹から1日470gの半セルロースを吸収しており、よって、1,980カロリーを得ていることになります。既述の2,700カロリーと加え、これで4,780カロリーとなるのです。
 よって、パンダは、竹から栄養を吸収する上で、たんぱく質のエネルギーへの転化と、半セルロースの吸収が絶対に必要なのです。パンダは自分の消化酵素で、半セルロースを消化しています。
パンダエネルギー内訳
たんぱく質→エネルギー 2,408カロリー
脂肪、可溶性糖 約300カロリー
半セルロース→エネルギー 1,980カロリー
合計 4,780カロリー

(2)アミノ酸
 たんぱく質は、生物体を構成する最も重要な物質です。たんぱく質は20種のアミノ酸から構成されており、主要なアミノ酸は動物の代謝自身で合成できますが、8種はほとんどの哺乳類は合成できません。パンダが主食とする竹から十分な8種のアミノ酸は得られるのでしょうか?
 ニワトリの卵に含まれる8種アミノ酸の量を100とすると・・・・
たまご 100
牛肉 69.3
とうもろこし 44.9
木竹の新しい葉 56.1
 8種アミノ酸の量で比較すると、竹の方が、とうもろこしよりも栄養価が高いことがわかります。

※潘文石著「漫長的路」による




竹の問題
 竹は、冬でも枯れることがないので、パンダにとって理想的な食べ物ではありますが、数十年から100年に1回一斉に花を咲かせ、枯れてしまうという成長サイクルがあります。
 かつては、別の場所に移動して違う種類の竹を食べればよかったのですが、近年パンダの生息地が開発などによってせばめられており、竹の開花=パンダの餓死という危機にさらされています。




「パンダミルク」
 動物園などで赤ちゃんパンダを人工哺育する場合、ミルクが不可欠になります。ヒト用、海獣類用、イヌ用、ネコ用、ウマ用などが市販されていますが、上野動物園では、1988年にパンダ専用の「パンダミルク」が開発されました。パンダの母乳を、ヒト、ウシ、ネコ、イヌ、クマと比較したところ、クマに類似していることが分かりました。クマ類の母乳の成分の特徴として、ウシ、イヌ、ネコに比べて乳糖の含有量が非常に少ないことが挙げられます。上野動物園では、これらのデータをもとにパンダミルクを完成させたのです。
 実際には、上野動物園では双子の赤ちゃんは生まれず、人工哺育には使われていませんでしたが、飼育中のフェイフェイらに牛乳に替えて与えたところ体調が劇的によくなったり、臥龍パンダ研究センターでは実際に人工哺育に使われたりと海外でも大活躍をしています。
 中国四川省のパンダ研究センターでは、赤ちゃんパンダ(生後半年ほど)の1回の食事として、人間用の粉末ミルク50g、犬猫用の粉末ミルク50gを250ccのお湯で溶かして与えているそうです。



肉も食べる?
 昔の本能が残っているのか、肉が好きなパンダもいるようです。
 1991年に大涼山から臥龍の研究センターに送られてきたメスのパンダは、野生時に21頭の家畜のヤギを食い殺し、一度に3頭も食い殺したこともありました。センターに送られてきたそのパンダは体から強烈な羊のにおいがし、竹、まんじゅう、牛乳には全く興味を示しませんでした。センターでは仕方なく肉を与えざるを得ず、羊4頭分の肉を与えた後に徐々に竹など他のパンダと同じ食事に慣れていったそうです。

※陳猛 張和民著「情趣大熊猫」中国林業出版社 2004年




水はがぶ飲み
 当然ながらパンダも水を飲みます。野生では水辺でごくごくと水を飲み、その場で寝てしまうこともあるとか。そんな光景を「水で酔っ払っている」などとも言われています。
 犬や猫は舌で水を舐め取るようにして飲みますが、パンダの場合は水の中に口を突っ込んでがぶがぶと飲みます。






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